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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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エルミナ視点 耐えられない

牢屋は、

いつもと同じ匂いだった。


石。

鉄。

少し湿った空気。


それなのに、

今日は息がしづらい。


(……嫌だ)


声にすると、

壊れてしまいそうで、

言えなかった。



アキトさんは、

何も言わない。


床を見ている。


いつもなら、

冗談を言うか、

ため息をつくのに。


それが、

一番つらかった。


(分かってる顔を

 しないでください)



隔離。


その言葉が、

頭の中で反響する。


一人。


誰もいない場所。


(牢屋より

 ひどいじゃないですか)



私は、

衛兵見習い。


守る側。


分かっている。


街を守る。

人を守る。


(でも……)


その「人」に、

アキトさんも

入っている。



(私、失敗ばっかりなのに)


魔法は失敗する。

街は壊す。

報告書は増える。


それでも。


アキトさんは、

怒らなかった。


「大丈夫ですよ」

って言ってくれた。


(……それ、

 私の台詞なのに)



ラーデンさんが、

何か言おうとして、

やめた。


それが、

逆に怖かった。


(みんな、

 分かってる)


分かってるから、

苦しい。



(私がもっと

 ちゃんとしていれば)


(魔法が上手なら)


(壊さなければ)


全部、

今さらだ。



アキトさんが、

ぽつりと言った。


「……考えます」


その一言が、

胸に刺さった。


(考えなくて

 いいです)


(行かないで、

 って言ってください)


でも、

言えなかった。



私は、

衛兵見習いだから。


だから、

泣けない。


泣いたら、

否定してしまう。


街も。

隊長も。

正しさも。


(……でも)


握った拳が、

震えていた。



(耐えられない)


(このまま、

 何もできないのが)


声は、

出なかった。


ただ、

目を閉じた。


今日も牢屋は……守る側の心が、一番壊れやすい場所だった。

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