隊長が盗み聞きしていた夜
牢屋前の廊下。
夜。
灯りは落ち、
石床に、
隊長の靴音だけが残っていた。
報告書を抱えたまま、
彼は立ち止まる。
……中から、
声がする。
エルミナ
「じゃあ次は、
絶対壊れない案です!」
アキト
「その前に
反省しろ」
ラーデン
「儂は
もう諦めとる」
小さく、
笑い声。
隊長は、
動けなかった。
エルミナ
「アキトさん、
隔離って……
嫌ですよね?」
一瞬、
静かになる。
隊長の指が、
無意識に強くなる。
アキト
「……そりゃ、
牢屋の方が
マシだな」
ラーデン
「贅沢な基準じゃ」
エルミナ
「ですよね!」
明るい声。
「だから、
私が一緒にいます!」
その言葉に、
隊長は目を閉じた。
ラーデン
「小娘、
お前は衛兵じゃ」
エルミナ
「はい!」
「守るのが仕事じゃ」
「はい!」
「だがな」
少し、
間が空く。
「守れんものも
ある」
エルミナ
「……あります」
声が、
小さくなる。
隊長は、
胸の奥が
重くなるのを感じた。
アキト
「俺、
何か悪いことした?」
誰も、
すぐには答えなかった。
隊長は、
拳を握る。
「……してない」
答えたのは、
エルミナだった。
「だから……」
続きは、
聞こえない。
隊長は、
一歩下がった。
廊下の影。
隊長は、
壁にもたれる。
「……守りたい、か」
書類を、
胸に抱く。
「だからこそ」
声に、
決意が混じる。
「離すしか
ない」
その頃、
牢屋の中。
エルミナ
「じゃあ次は
防音案です!」
アキト
「話戻ったな」
ラーデン
「地獄じゃ」
誰も、
廊下の影にいる男を
知らない。
今日も牢屋は……笑い声の向こうで、決断が下された。




