再会
その日の夕方。
牢屋の通路で、
エルミナは三歩進んでは立ち止まっていた。
「……まだですか」
看守
「さっきも聞いた」
「でも……」
胸の奥が、
むずむずする。
静かに待つ。
それが“仕事”だと、
頭では分かっている。
「……無理です!」
走った。
看守
「おい!」
止まらない。
魔力観測用倉庫。
扉の前で、
エルミナは一度深呼吸をした。
「静かに……」
自分に言い聞かせて、
扉を開ける。
バン!
「アキトさ……」
中で、
アキトが驚いて振り向いた。
「エルミナ!?」
「静かに来るつもりでした!」
隊長
「……来るなと言ったはずだ」
「すみません!」
即謝罪。
でも、
止まらない。
「でも!
でもですね!」
エルミナは、
一歩踏み出す。
「牢屋が、
変なんです!」
アキト
「え」
「静かすぎて、
落ち着かなくて!」
隊長
「それはお前の問題だ」
「はい!
でも耐えられません!」
ラーデンの声が、
エルミナの頭に浮かぶ。
待つのも仕事。
「……でも、
待てませんでした」
アキトは、
少し困ったように笑った。
「……ごめんなさい」
「違います!」
エルミナは、
即否定する。
「アキトさんがいないのが、
ダメなんです!」
空気が、
一瞬止まる。
隊長が、
目を細めた。
「……理由は」
「うるさくないからです!」
「逆だろ」
「逆なんです!」
エルミナは、
胸に手を当てる。
「アキトさんがいると、
うるさいです!」
「悪口?」
「でも、
安心します!」
アキトは、
言葉を探した。
「……俺、
そんな役割なんですか」
「はい!」
即答。
隊長は、
静かに息を吐いた。
「……一度だけだ」
「え?」
「再会は認める」
エルミナ
「本当ですか!」
「ただし」
隊長は、
指を立てる。
「戻るかどうかは、
状況を見て決める」
エルミナは、
力いっぱい頷いた。
「はい!」
その瞬間。
ガタン
倉庫の魔力計が、
小さく揺れた。
隊長
「……」
アキト
「俺、
何もしてません」
「分かっている」
隊長は、
二人を見る。
うるさい一人と、
困った顔の一人。
「……やはり」
小さく呟いた。
「隔離は、
完全な解決じゃない」
エルミナは、
アキトの袖を掴んだ。
「帰りましょう」
「……いいんですか」
「静かにしますから!」
「信用できない」
三人分の足音が、
倉庫を出ていく。
うるさくて、
少しだけ安心する音だった。
今日も牢屋は……うるさい人が揃って、やっと落ち着いた。




