久々のシャバ・ぶらぶら
街路に朝日が差し込み、三人は牢屋の門を出た瞬間、眩しさに目を細めた。
アキト
「……外の空気、うまっ。
牢屋の朝より酸素が多い気がする……」
エルミナは腕を大きく広げて深呼吸した。
「ひゃぁ~~!!
アキトさん! シャバの空気ですよシャバ!!
なんていうか……自由!!
私いま羽生えてません!?」
ラーデンはくるりと周囲を見渡す。
「外に出ただけで羽が生えるやつがおるか……
だがまあ、久々の散歩は悪くないのう」
アキトは肩の力を抜いた。
「……三日間だけだけどな。
騒音で追い出されるなんて思わなかった」
エルミナ
「でもでもアキトさん、今日くらいは楽しみましょう!
ほら、あそこの雑貨市とか!」
ラーデンは杖で地面をコツコツ叩きつつ言う。
「アキトよ、久々じゃろ。
外の世界にはの、牢屋には無いものがある。
例えば」
アキト「自由?」
ラーデン「いや、“買い食い”じゃ」
エルミナ
「わかります! ラーデンさん!
屋台の揚げパン食べたいです揚げパン!!」
アキト「パンの話題で暴走するのやめろ……
パンツの亡霊が刺激される……」
エルミナ「ひっ!?
アキトさん言わないでぇぇ!」
周囲の通行人が三人を振り返る。
「あ、パンツ伝説の人たちだ」「出所したのか」など小声が飛んでくる。
アキトは耳を塞ぎながら歩く。
「……なんで俺は“パンツと騒音の男”扱いなんだ……」
ラーデンはひげを揺らして笑う。
「諦めろ。
名声というものは、一度ついたら取れん」
エルミナはアキトの腕をぐいっと引っ張った。
「ほらアキトさん! とりあえず市場ぶらぶらしましょう!
静かに! 静かに歩けば隊長も文句言いません!」
アキト
「静かに歩くって何……?」
エルミナ
「歩き声が静かならもう勝ちです!」
アキト
「……歩き声?」
ラーデン
「まあまあ、わしは茶屋の匂いがする方へ行くぞ」
こうして三人の、
“事件を起こす前提のぶらぶらシャバ散歩”がはじまった。
街の人々はまだ知らない。
〈これから三日間で、もっと苦情が増える〉ことを。




