うるさいから仮出所
夜明け前。
牢屋の扉がガチャッと勢いよく開いた。
そこに立っていたのは
顔の疲労が極限に達した ガルド隊長。
「……おい。三人とも。起きろ」
アキトが布団から半分落ちた姿で起きる。
「え、隊長? 早いですね……?」
エルミナは涙目で震えている。
「アキトさん……パンツ霊が……パンツ霊が……(記憶残留)」
ラーデンは寝ぼけながら髭を撫でた。
「わしら、何も悪いことしとらんぞ。声は出しておったが」
隊長がバァンッと壁を殴る。
「黙れ!!!
昨夜のてんやわんやで、
街の苦情が“牢屋史上最多”の62件だ!!」
アキト「え、俺そんなにやらかした……?」
エルミナ「私です! すみません! でもパンツが勝手に……!」
隊長は鼻の下を押さえて深呼吸した。
「というわけで」
バサッ、と三枚の紙を叩きつける。
「お前ら三名、ただいまより“強制仮出所”とする!」
アキト「理由は……?」
隊長
「理由欄に書いてあるだろ」
アキト、読み上げる。
「……騒音迷惑……?」
エルミナ
「隊長! “騒音迷惑”って、人間に言う言葉じゃないですよ!?」
隊長は頭を抱えた。
「人間を騒音扱いしたくてしてるんじゃない。
この牢屋は市から“静音規制”を受けたんだ!!
つまり……
お前らがいると静音できない!」
ラーデンはひげを撫でて頷く。
「なるほど。迷惑の根源扱いか」
エルミナ「わ、私の悲鳴だけは除外していただけ……」
隊長「一番の原因はお前だ!!!」
隊長は鍵を開けながら叫んだ。
「頼む……三日でいい……
三日だけでいいから、外で静かに暮らしてくれ……!
このままだと俺の胃が破裂する……!」
アキトは肩をすくめる。
「……俺ら、騒音で追放されるってマジか」
ラーデン
「平和なのか厄災なのか、判断に困るのう」
エルミナは拳を握る。
「大丈夫です! 今日は絶対失敗しません!
静かさ世界一を目指します! 静まり返ります!!」
アキト
「その宣言が一番不穏なんだよ……」
こうして三人は、
騒音扱いで牢屋から追い出されるという前代未聞の仮出所となった。
今日から牢屋は……静かになった?




