エルミナのパンツ除霊・大失敗
夜の牢屋。
蝋燭が一本だけ揺れている。
エルミナは両手を腰に当て、得意げに胸を張った。
「アキトさん! 今日はついにやります! パンツ除霊!!」
「…………」
アキトは疲れ切った顔で天井を見ている。
ラーデンが木椅子で茶をすすりながら言った。
「やらないでほしいのぉ……」
しかしエルミナは聞いていない。
「アキトさんのパンツに取り憑く“夜鳴きパンツ霊”
もう許せません! 毎晩うるさくて、私が先に寝られません!」
「いや、俺はもっと寝られてないけど!?」
エルミナはパンツを神棚のように掲げ、
どこで覚えたのか謎の呪文を叫び始めた。
「パンッ! ツンッ! パラサラパーンッ!!」
ラーデンが目を細める。
「わし、今ので霊が逆に元気になった気がするんじゃが」
蝋燭の火がバッと揺れ、冷気が走る。
「ひぃっ! アキトさんアキトさんアキトさん!!
あのパンツ、動きませんでした!? 見ました! 絶対動いた!!」
「お前が振ってるからだよ!」
「ひいぃぃっ動くパンツこわいっ!!
でも大丈夫ですアキトさん!
もし襲われても私が守りますから! パンツから!!」
「守る方向おかしいよね!?俺を守って!?」
その瞬間
パンツが、ふわっ……と揺れた。
エルミナは絶叫した。
「ひやぁあああああああああああああああ!!!
パンツ霊、実在!!!」
アキトとラーデンは同時に叫ぶ。
「お前の声のほうがホラーだわ!!」
結果、パンツ霊は存在せず、
エルミナの大騒ぎだけが牢屋に響いた。
ラーデンは満足そうに言った。
「領主より怖いのは、そなたじゃな」
エルミナは泣き崩れた。
「アキトさん〜〜もうパンツ除霊やりません〜〜!」
アキトはパンツを拾いながらため息。
「……まず、お前の頭の中から除霊したいわ」
今日も牢屋は……パンツより、エルミナの悲鳴がよく飛ぶのだった。




