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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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領主様、牢屋の朝食を改革する

 翌朝。


 牢屋の窓から、やる気のない朝日が差し込む。

 アキトは寝返りの勢いで布団から半脱落した状態で目を覚ました。


「……背中が冷たい……石の味がする……」


「アキトさん! 生きてますか!? 朝ですよ!」


 エルミナが元気よく駆け寄る――が、その勢いで鉄格子に肩をぶつけた。


「いっっったぁ!?!? 格子、硬いぃ!」


「お前さん、朝から知能落ちとるじゃろ」

と、ラーデンが言う。

 彼はすでに座って瞑想していた。朝だけ無駄に神々しい。


 そしてその隣には

 領主様が、普通に囚人みたいに胡座をかいて座っていた。


「おはよう。牢屋泊まり、意外と快適だったよ」


「いやいやいやいや!!」

 アキトは慌てて起きる。

「領主様、帰ったほうが良いですよ!? なんでまだいるんですか!?」


「朝食が楽しみでね」


「牢屋の朝食でその台詞聞いたの初めてだよ!?」


 しかし、領主様は目を輝かせていた。


「昨日の騒動で思ったが……この牢屋、改善の余地が多すぎる。特に朝食だ」


 ラーデンの眉がぴくりと跳ねる。


「……ほぉ、お主も言うか。

 わしはずっと言っとったんじゃ。“牢屋メシは魂の刑罰”とな」


「そうだろう?」

と、領主様は頷く。


 看守が恐る恐る鉄格子越しに朝食を差し出した。

 内容:味のない粥、謎の茶色い固形物、温度不明のスープ。


 領主様は一見して言った。


「これは……食べ物ではないな」


「食べ物じゃないんですかこれ!?」

とエルミナ。


「前から食べ物じゃなかったよ」

とアキト。


 ラーデンが腕を組み、誇らしげに言う。


「ふん。わしはもう知っとる。これは“粥のふりをした粥もどきじゃ”。

 沸騰しとらんのに出来上がる魔の食べ物じゃ」


「本当にそれ……なんなんですか」

アキトは涙目。


 そこで領主様は立ち上がり


「改善する。」


 と宣言した。


「へっ……?」

三人の声が重なる。


 領主様は看守たちに指示を飛ばし、あっという間に厨房を改造し始めた。

 牢屋なのに、もう領主様の“改革フェス”が始まっている。


「鍋は銅製に替えろ。火はもっと強く。水は昨日汲んだ井戸の上層を使え。

 あと牢屋の朝には、温かいものが必要だ」


「おぉ……温かい……聞いただけで腹が鳴った……」

とアキト。


「アキトさん、鳴るどころか喋ってます!!」

とエルミナ。


 しばらくして

 湯気とともに香りが漂ってきた。


「できたぞ」


 領主様が自ら運んできたのは、

 ・ちゃんと煮立った粥

 ・野菜の甘みが感じられるスープ

 ・焼きたての黒パン(急遽焼かせた)

 ・ぶどうジュース(なぜかサービス)


「うおおおおおおおおおお!!!」

 アキトの魂の叫び。


「こ、これは……わしの青春時代に食った“戦地用完全栄養食”……!」

とラーデン。


「領主様すごい! すごすぎてなんかもう逆に怖い!!」

とエルミナ。


 アキトは一口食べて

 涙がじわっとこぼれた。


「……あったけぇ……

 牢屋なのに……あったけぇ……」


「アキトさん!? 粥に感動して泣いてる!?!?」


「朝から泣く男を見るのも久しぶりだ」

と領主様は嬉しそうだ。


 そして三人が朝食に感動している間、

 領主様はさらりと言った。


「では、昼食も改善するか」


「まだ泊まるんですか!?!?」

三人の悲鳴が牢屋に響いた。


 今日の牢屋は……粥より先に、領主様が熱かった。


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