表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/149

エルミナの「領主様やらかし事件」

 牢屋視察の翌日。

 エルミナは緊張していた。


(今日は領主様がまた来るかもしれない。

 絶対に! ぜーーーーったいに失礼はしちゃだめ!!)


 両手をぎゅっと握る。


 アキトは隣でのんびりしている。

 ラーデンは鍋の味見をしている。


(落ち着いて、私。今日は完璧な見習い衛兵として……!)


 そう思った瞬間


 廊下の向こうから再びあの気品ある足音が近づいてきた。


 カツ、カツ、カツ。


「来た……! 本当に来た!!」


 動揺のあまり、エルミナは反射的に敬礼した

 が、その勢いが強すぎた。


ゴンッ!!


「いったぁああああああ!!」


 頭を鉄格子にぶつけた。


 領主様が入ってきた瞬間の光景はコレである。


 ・エルミナ:頭抱えて床で転がる

 ・アキト:驚いて椅子から落ちる

 ・ラーデン:鍋の蓋を空中キャッチ中


 領主様は静かに言った。


「……これは、何の儀式だ?」


「ち、違います!!!これは儀式じゃなくて、ただの私の……私の……!!」


「ドジ?」

とアキトが小声で言う。


「アキトさぁぁぁぁん!?!?」


 気を取り直して姿勢を整えたエルミナ。

 しかし緊張が限界に達していた。


「領主様、本日はご視察ありがとうございます!!

 しっ、しかし、あの、その、あの、領主様は今日も……」


 言葉が滑った。


「……今日も 牢屋に入り浸り で……!!」


 牢屋に入り浸り。


 牢屋に入り浸り。


 牢屋に入り浸り。


 三回くらい響いた。


 アキトが絶望した顔をする。

 看守が土下座を始める。

 ラーデンが「言うたな……」と呟く。


 領主様はピクリとも動かず、ただ目を細めた。


「……ほう?」


「い、いえ違うんです!!私はその、えっと、あの、領主様が牢屋を……その……」


エルミナの口が勝手に動いた。


「……気に入りすぎて心配です!!」


「 牢屋を気に入りすぎて?」


「ひぃぃぃぃぃ!!!」


 極限までテンパったエルミナは、

 “魔法少女見習いらしく魔法で誤魔化す”という

 最悪の選択をしてしまう。


「こ、ここここここで一つ……!

 魔法少女見習いの華麗な魔法をご覧ください!!」


アキト「やめろエルミナァァァ!!」


ラーデン「まだ鍋も煮えとらんぞ!!」


 止める暇もなく

 エルミナは杖を振った。


「ふぁいあ☆きゃんどる!!」


 ドゴォォォォン!!!


 爆発音が鳴り響いた。

 爆発したのは、彼女の杖だけだった。


 領主様のマントが少し焦げる。


(死んだ……)


 エルミナの脳内で鐘が鳴った。


 しかし領主様は、

 なぜかフッと笑った。


「……ふむ。面白い娘だ。実に飽きん」


「えっ!?飽き……何が……?」


「よい。お前たち、引き続きここを好きに使え。

 わしはまた来る」


 そして優雅に去っていく領主様。


 看守は泣いた。


「なんで……なんでこの牢屋、偉い人が気に入り始めてるんだ……!」


エルミナ(泣きながら)

「今日も牢屋は、恥の記録が増えましたぁぁぁ!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ