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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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魔力検査係、二日目 「今日は“動揺禁止”だそうです」

 翌朝。

 牢屋には、昨日の爆発の名残で、壁の一部がほんのりスモーク色になっていた。

 看守は無言でモップを滑らせながらつぶやく。


「……アキト、お前が働き始めてからのほうが牢屋が荒れるのは気のせいか?」


「働いてるのに怒られるってどういうこと!?」


 そんなアキトの抗議を背に、エルミナが元気に手を振る。


「アキトさん、今日も研究所の人来るって!」


「昨日の爆発であきらめたかと思ってたわ!」


 牢屋の扉が開き、

 昨日と同じ白衣の研究員・バロス博士が現れる。


「二日目だよアキト君!研究所はやる気満々だ!」

「(俺がやる気を出した覚えはない)」


 博士は今日の装置を指さす。

 昨日より一回り大きく、耐久性が増して……増して……増して?

 耐爆仕様のプレートが三重に貼られている。


「昨日の爆発で、研究所の予算が二ヶ月分吹っ飛んだよ!」

「なんでそんな明るく言えるんですか!?」


「安心しろ、君を責めてはいない!」

 博士が親指を立てる。


「研究は常に犠牲を伴うからね!」

「犠牲っ!?」


 横でラーデンじいさんが感心していた。

「さすが研究者じゃな。犠牲の意味がずれておる」


「さて今日の課題は“動揺禁止”だ!」


 博士が胸を張った。

 エルミナがノートを開きつつ説明を補足する。


「アキトさんって、驚いたり照れたりすると魔力が“どばーっ”って出るみたいな?」

「そんな効果音つけないで!?」

「だから今日は、何があっても動揺しちゃダメなの」

「何があっても……?」


 嫌な予感しかしない。


 アキトは昨日より頑丈な装置の中に入る。

 がっしり閉められた扉の向こうで、博士がカウントダウンを始めた。


「では“動揺耐久試験”、開始!」


 ドンッ!


 装置の外で、何か重い物が倒れた音。


「博士!! また台が転びました!!」

「大丈夫だ!続行だ!」


(……おい、外で何してる!?俺の心臓のほうが試験されてるのか!?)


 アキトは深呼吸する。


(落ち着け。今日は爆発しない。昨日より成長した……はず)


 しかし。


「アキトさん~!がんばってね……!」


 外からエルミナの声が聞こえる。


(……やばい、昨日もこれで爆発したんだよな)


 加えて、

 パンツの残響がまた囁いた。


(……ご主人……今日も……やらかせ……)


「出たな!? 幻覚パンツ!!」


 ブンッ!

 魔力が揺れる音がした。


「装置内部の数値が急上昇!!」

「これは……昨日の二倍!?」


(落ち着け俺!落ち着け!!)


 アキトは装置の中で必死に目を閉じた。


(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け)


「アキトさん、後で一緒におやつ食べよ……?」

エルミナが照れながら言う。


「無理だァァァァァ!!!!」


 ボンッ!!!!!


 牢屋の天井が“小さく揺れた”。


「……アキトさん、今日は昨日より三秒長かったよ!」

「三秒!?俺の努力ってその程度だったの!?」


 博士はノートに興奮気味に記録を書き込む。


「素晴らしい!精神的動揺と魔力漏出の関連性が明確になった!」

「なんで俺の精神が研究対象になってるの!?」


 ラーデンはにこやかにアキトの頭をぽんぽん叩く。


「まあまあ、昨日より確実に成長しとるぞ。

 ……爆発の大きさが昨日より小さかったからのう」


「爆発基準で成長測るのやめてくれ!!」


 そして牢屋の記録にはこう残る。


 《魔力検査係》二日目:成功(?)

 測定機の破損:中破

 アキトの精神負荷:大

 エルミナの応援テンション:最高

 ラーデン:今日も元気


 アキトは夜、牢屋の天井を見上げてつぶやいた。


「……働くってなんだろうな」


 その耳元で、パンツの残響がまたささやく。


(……ご主人……明日も楽しみ……)


「楽しみじゃねえ!」


 今日も牢屋は通常営業だった。

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