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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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看守を味方につける大作戦

昼食後の牢屋。

鉄格子の向こうで、湯気の出ていない“ぬるいバケツスープ”と

“石より硬いパン”が片づけられようとしていた。


アキトがうんざりした顔でつぶやく。


「……今日もこれなんだな」


「パンの衝撃で手がしびれました……!」

エルミナは涙目。


ラーデンだけが腕を組み、

何か企んでいる顔をしている。


「ふむ。そろそろ“改革”の時じゃな」


「改革って、また変なこと考えてるだろ」

アキトが警戒する。


「変なこととは失礼な。儂はただ

 看守を味方につけて、メシを良くさせるだけじゃ」


「いや、それ完全に駆け引きですよね!?」

エルミナのツッコミが飛ぶ。


そこへ、タイミングよく足音。


「おーい、見回りだぞー。お前ら元気か?」


看守ガロス。

顔は怖いが、中身は案外ちょろい。


ラーデンがすっと前に出る。

ニヤリと笑い、声を潜めて、


「のぉ、ガロスよ。ちと耳を貸せ」


「なんだじいさん。まーた妙な頼みか?」


「頼みなどせん。ただ事実を伝えるだけじゃ。

 近頃、この牢の評判が街で出とる」


アキトとエルミナ(※何それ聞いてない)


ガロス「は?評判?」


「うむ。『囚人は石パンで鍛えられ、

 牢屋のスープで胃が強くなるらしい』とな」


「いやそれ絶対悪い意味ですよね!?」

アキトが即ツッコミ。


ラーデンは続ける。


「なぁガロスよ。評判を上げたくはないか?

 “ここの看守は食事改善にも気を配る名看守”

 ……などとな?」


ガロスの眉がピクリと動く。


「……そ、それは悪くない響きだな」


エルミナ(※ちょろい……)


「ふむ。では簡単じゃ。

 パンを焼く前に水で湿らせる、たったそれだけで

 “反逆パン”は“食べられるパン”になる」


アキト「名前ひどっ」


ガロスは腕を組み、

少し悩んだあと、まるでこっそり悪事を頼まれたように囁く。


「……お前ら、誰にも言うなよ。

 明日から、パン……ちょっと柔らかくしとくから」


エルミナ「ほ、本当ですか!?」


「ただし!俺の評価に繋がると思ったら、

 お前らが勝手に言い触らしたことにするからな!」


「構わんとも。儂らは沈黙のプロじゃ」


 アキト「プロじゃねぇだろ」


 看守が去ったあと、三人は顔を見合わせた。


「ねぇアキトさん、私たち……もしかしてまた問題起こしました?」

「いや、今回は……多分いい方向に転がった気がする……」


 ラーデンだけが満足げにあご髭をなでながら言う。


「これで成功じゃな。

 明日のパンは……歯が折れんぞ」


エルミナ「わ、私……泣いてもいいですか?」


アキト「泣くほどのライン低くない?」


こうして今日も、牢屋はなぜか前向きに混沌だった。




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