牢屋ランチいじり 『今日も“茶色の何か”牢屋メシの安定感、異常』
昼。
牢屋の通路に、重くて乾いた音が響いた。
ガン、ガン、ガン。
「はーい、昼ごはんですよー」
雑な声とともに、木皿が鉄格子の下から突っ込まれる。
アキトは皿を覗き込んだ。
そこには
昨日と同じ“茶色い何か”が鎮座していた。
「……ん?これ、昨日のやつじゃないよな?」
エルミナも皿をのぞき込み、震える声でつぶやいた。
「ア、アキトさん……これ、今日のメニューは……?」
「茶色だ。」
「昨日も茶色でしたよね……?」
「おとといも茶色だったな。」
「先週も茶色でしたよね……」
「茶色屋か?」
沈黙。
そして
ラーデンの皿も茶色だった。
じじいはまったく動じていない。
「ふむ。今日も“茶色の精霊”が宿っておるな」
「そんな精霊いねえよ!!」
「エルミナ、これ何に分類されてるか分かる?」
「わ、わかりません……茶色……?」
「分類が色レベルで終わっとる!」
アキトはスプーン(木の棒)でそっとつついた。
ぷるぷる震えただけで動かない。
「今日の茶色、耐久高くね?」
「昨日のより硬いですね……」
「昨日のは“押すと移動した茶色”だったが、
今日は“攻撃すると反撃しそうな茶色”だ。」
「物騒な茶色やめろ!!」
ラーデンはひょいと摘まんで口へ運ぶ。
「ほう……今日のは“木の皮と土くれの中間”だな」
「食レポ雑いな!?っていうか木か土じゃねえか!!」
だがラーデンは頷きながら言う。
「これでも昔はもっとひどかった。
“茶色と思ったら黒焦げの灰だった”回もあった。」
「もはや食い物じゃねえよ!?どんな時代だよ!?」
エルミナはそっと茶色を見つめ、ぽつりと呟いた。
「……せめて緑、食べたいですね……」
「わかる。緑恋しい。」
「赤も……黄色も……」
「牢屋に色を求め始めたら末期だぞ……」
沈黙が落ちる。
そして、アキトは決意した。
「……改善プロジェクト、やるか。」
エルミナがぱっと顔を上げる。
「やりましょう! 今日の茶色は……倒しましょう!」
「倒すものなの!?ねえそれ食べ物だよな!?」
ラーデンが静かに笑う。
「よかろう。儂も協力しよう。
今日の“茶色”は少し強敵だ。覚悟せい。」
「言い方やめろ!!」
三人は団結して、茶色に向き合った。
牢屋の日常は今日も、
小さな戦いでいっぱいである。




