同じ献立は罪だと思うんだが?
鉄格子の向こう、いつもの昼餉が置かれた瞬間、
ラーデンは深いため息をついた。
石皿に乗るのは
・薄いスープ
・固めの黒パン
・謎の茶色い豆
昨日と同じ。おとといとも同じ。
もはや週刊どころか“日刊・牢屋めし”だ。
「……おい。アキトよ。これはもはや“嫌がらせ”の域ではないか?」
アキトは肩をすくめる。
「いや、俺たち囚人側だし。むしろよく頑張って出してくれてる方なんじゃ?」
エルミナはパンをつつきながら小首をかしげる。
「でも、毎日同じものって、さすがに栄養が偏ると思いますよ?
というか、飽きますよね……?」
ラーデンは勢いよく鉄格子を掴んだ。
「看守どもに告ぐのじゃ!
お前らは三日連続で同じメシを食えるのかァ!!」
廊下の奥から、看守のひとりが面倒くさそうに現れる。
「文句言うな。牢屋なんてそんなもんだろ。はいはい、食え。」
ラーデンはパンを指でつまみ、ぷらんと揺らした。
「これはパンじゃない……石畳の欠片だ。」
アキト「いや、そこまでは言ってないだろ……」
エルミナは豆をひと粒つまんで、
ふんわり微笑みながら言った。
「ラーデンさん、改善しましょう。
“叱るより、導く”のが成功への近道です!」
「導く……? 」
エルミナはにっこり笑った。
「レシピを書きます」
アキトとラーデン「レシピ!?」
エルミナは牢屋の隅から、
こっそり作っていた 炭と布切れのメモ帳 を取り出す。
スラスラと書き込み始める。
『牢屋でも作れる簡単アレンジ3品』
1.パンをちぎってスープに入れると“野戦シチュー風”
2.豆をつぶして鉄板で焼くと“豆ハンバーグ風”
3.スープに豆とパン全部入れて煮ると“牢屋カレー(擬似)”
アキト「カレー……とは?」
エルミナ「“気持ちはカレー”という意味です!」
ラーデン「つまりただのごった煮では?」
エルミナ「愛情を込めればカレーになります!」
看守(廊下からぼそっと)
「いや、ならねぇよ……」
ラーデンは肩をすくめつつ、
自分もスープにパンを浸してかじる。
「……ほう。確かにちょっとだけマシだ。」
エルミナは胸を張る。
「ふふん! ではこれを、改善プロジェクトとして」
アキト「採用?」
ラーデン「採用だな。
しかし……」
ラーデンはニヤリと笑った。
「次は本気で味付けに挑戦する。
脱獄より難しいぞ、この任務……」
エルミナ「やります!!」
アキト「巻き込まれた……」
牢屋の昼メシを巡る、戦いは続く。




