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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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ラーデンじいさんの牢屋グルメ講座

 昼下がりの牢屋。

 今日も牢屋メシの匂いというより“色”が空気を漂っている。


「今日のランチは……なんだこの、紫に点滅してる物体」


「アキトさん、今日のは昨日より元気そうですね!」


「料理に“元気そう”って言葉使うな!!」


 そこへ、隣の牢屋で腕を組む大賢者ラーデンが、すっと立ち上がる。


「よし、そろそろ始めるかの。今日は」


 彼は堂々と宣言した。


 牢屋グルメ講座、第一回じゃ!


「なんで講座始めたんだよ!」


「需要があると思ってな」


「誰のだよ!!?」


「わしのだが?」


「自己需要かよ!!!」


 ラーデンは自信満々に、牢屋メシの皿を指さした。


「まずは“色を見る”のじゃ」


「いや、まず味とか匂いじゃないの?」


「料理は見た目が九割じゃ。ほれ、アキト。この紫色……悪くないじゃろ?」


「悪魔の血じゃないならいいけど!!」


 ラーデンは杖でちょん、と表面をつついた。

 紫の物体はぷるんと跳ねて、壁まで飛んでいった。


「アキトさん、今日のは元気ですね!」


「だから元気基準やめろ!!」


「うむ。良い弾力じゃ。生きておる証拠じゃの」


「食い物に命宿ってんのやべえって!!」


 続いてラーデンは、謎の袋を取り出した。


「次に、“風味を引き出すスパイス”を振る」


「おい、どっから持ってきたんだその袋!!?」


「賢者の基本装備じゃよ。牢屋に入る時も肌身離さぬ」


「持ち込み検査ってなんなんだこの世界!!」


 ラーデンは袋を振り、中身の粉をひとつまみ。

 紫の物体にかけると


 ぼふっ。


 白煙が上がり、皿が光った。


「あっ! なんか普通のシチューに見える!」

 エルミナの目が輝く。


「おお……美味しそうだ……」


「じゃろ? では味見してみると良い」


 アキトは恐る恐るスプーンを口に運ぶ。


 ……三秒後。


「ぎゃあああああ!!! 甘い! 辛い! 熱い! 冷たい! 何味だこれぇぇぇ!!?」


「四属性味覚調和スパイスじゃ」


「調和してねえよ!!! 大乱闘だよ!!!」


 ラーデンは涼しい顔で結論を告げる。


「ふむ、今日の講座はこのあたりでよいじゃろ」


「よくねぇよ! 人の舌が死んだよ!!?」


「次回は“牢屋石床で作る即席パン”を教える予定じゃ」


「絶対やめろ!! 食中毒しか未来がねえ!!」


「アキトさん……あの、私、受講したいです!」


「エルミナ!? 君だけはマジでやめて?!」


「大丈夫です! 私も料理魔法で手伝います!」


「一番やばい宣言キターーー!!」


 こうして今日も、

牢屋の中で世界最悪のグルメ講座が開催された。


 なお、講座は受講者ゼロのまま

なぜか正式に“衛兵本部へ報告書提出”が義務化された。


「なんで制度になってんだよおお!!」


 牢屋の日常は今日も平和(?)である。

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