エルミナ、記念写真が“写ってない”原因を追求して、また事件を起こす⁈
白紙になった記念写真を見つめながら、
エルミナは腕を組んで唸っていた。
「……これは絶対、不可解な魔力現象だと思うの」
「不可解なのはお前のカメラだよ」
アステルが即返し。
「ワシの網膜にはちゃんと刻まれたがのう……」
ラーデンが涙目のまま言った。
「ピースしとるお主らの姿が、まだ残像で見えるわい……」
「じじいの視力を犠牲にしないと写らない写真とか嫌だよ!?」
エルミナは紙と羽ペンを取り出し、
“写真が写らない原因リスト” を書き始めた。
1.魔力不足
2.魔力過剰
3.魔力の方向が間違った
4.部屋の気が悪い
5.アステルの顔が反射した
6.ラーデンの気配が強すぎた
7.パンツの亡霊の仕業
「最後のだけ絶対違うよね!?」
「いや、ここ最近のお主らを見ておると……ワンチャンあるぞい」
「ラーデンじじいが言うと説得力出るからやめて!」
「今度は魔力の“角度”が問題だったと思うの!」
エルミナは胸を張り、魔力カメラを斜め45度に傾けた。
「それ、なんで傾けた?」
「“フィーリング”!」
「一番信用ならん理由きた……!」
エルミナが魔力ボタンを押す。
ピカッ——
ドゴォォォォン!
カメラの光線が牢屋の天井に直撃し、
砂ぼこりがぱらぱらと降ってきた。
「……え、天井抜ける?」
アステルが固まる。
「素晴らしいのう。出口ができたぞい」
ラーデンはなぜか満足げ。
「脱獄する気満々だね!? しかもこれ、気付かれたら罰点100だよ!!」
しかし写真は——またも白紙。
「もしかして被写体が悪いのかも……ラーデン、ちょっと立って?」
「ワシか!? いや、ワシはもう高齢じゃし、写真写りが」
「はい撮るよ!」
「人の話を聞かんか!!」
ピシャァァアッ!!
数秒後。
「……じじいが、光に包まれて消えかけてた……」
アステルが震えた声で言う。
「ヒュゥ……久しぶりに魂までスケルトンになった気がするわい……」
ラーデンが座り込む。
「写った?」
エルミナは期待の目。
写真は
白紙(じじいが苦しんだだけ)。
……これ、もしかして……」
エルミナがカメラの裏側をゆっくりめくった。
すると
アステルとラーデンが悲鳴を上げた。
「おいエルミナ……そこ……」
「まさかとは思うが……」
「フィルム……入ってない……?」
しーん。
エルミナは真顔で言った。
「……実験データが足りなかったね!」
「それ以前の問題だあああああああ!!!!」
「ワシの網膜返せぇぇぇ!!!」
エルミナは急いで魔力フィルムをセットした。
「これで完璧! よーし、記念写真その2いってみよー!」
「ちょっと待——」
ピカァァァン!!
今度はしっかり写った。
写ったのだが
三人が光に驚きながら
変なポーズで転げ落ちてる
めちゃくちゃ間抜けな写真
「……これ、絶対後に残したくないやつ」
「ワシの顔が……縦に三倍に伸びておる……」
エルミナだけが目を輝かせていた。
「すごい! 最高傑作だよ!」
「やめて! その感性で褒められるの一番こわい!!」
今日も牢屋は、平和である?




