脱獄計画、始動!でもエルミナだけ遠足気分
昼下がりの牢屋。
アキトは両手を組んで真剣に言った。
「……よし。脱獄するぞ」
隣で寝転んでいた大賢者ラーデンが、
ひょいと片眉を上げる。
「ほほぅ。ついにその気になったか。
わしも付き合うぞ。ここは若者の香りが薄いでな」
「理由が最低なんだよじじい!!」
アキトが怒鳴る一方、
なぜかエルミナは目をキラキラさせていた。
「わぁ〜、脱獄! 初めてです!
アキトさん、これって遠足みたいなものですか?」
「違う!!!!」
牢屋全体にアキトの声が響く。
「ていうかお前、衛兵見習いだろ!?
脱獄を手伝うってどういう了見だよ!」
「えっ? だってアキトさんは悪くないし……」
「いや、それは嬉しいけど……」
「それに、もし困ったら私が魔法で」
「やめろ!!!」
アキトとラーデンが声を揃えた。
「エルミナの魔法で扉壊すと、
牢獄ごと吹き飛ぶじゃろ」
「俺たち全員、真上に強制打ち上げされかねないだろ」
エルミナは少しだけしょんぼり。
「うぅ……じゃあ何すればいいですか……?」
「逆に何もしないでくれたら助かる」
「何もしないの、得意です!」
「ポジティブ!!?」
そんな中、ラーデンが髭をいじりながら言う。
「さてと。脱獄といえば、まず“穴掘り”じゃな」
「古典だな」
「わしが若いころはのぅ……夜這いに行くために何度も」
「なんでそっちの理由で穴掘ってたんだよ!!」
そこへエルミナが元気に手を挙げる。
「はいっ! はいっ! 穴掘りなら私、できます!」
「やめて。絶対やめて」
「なんでですか!?」
「お前が掘ったら地面に謎の魔法陣とか出るんだよ!!」
エルミナは“むぅ”と唇を尖らせて黙り込み、
ラーデンが話を続けた。
「アキトよ。まずは計画じゃ」
「そうだな……」
二人は牢屋の中で向かい合い、
真剣な顔で脱獄ルートを描き始めた。
が、エルミナは――。
「えへへ……脱獄って、やっぱり遠足っぽいですね……
お弁当、どうしよう……黒パンだけじゃ足りないかも……」
完全に遠足モードだった。
「……エルミナ」
「はい?」
「頼むから、俺の人生の一大イベントを“レクリエーション”扱いするのやめてくれ」
「えっ?」
エルミナはぽかんと首をかしげ、
その背後でラーデンが一言。
「まあよいではないか。若い娘の笑顔は、脱獄の活力になる」
「じじいは黙れ!!」
こうして
アキトの本気、ラーデンの適当、エルミナの遠足気分
が入り混じったカオスな“脱獄計画”が、静かに幕を開けた。
続く?。




