屋敷が観光ルートに組み込まれそうになる
朝。
アキトは屋敷の門の前で、見覚えのない立て札を見つめていた。
【候補地⑦:牢屋通勤貴族の屋敷】
【※現在調整中】
「……ちょっと待って?」
門の横では、観光協会らしき人たちが地図を広げている。
赤い線が引かれ、しっかりと街→牢屋→アキト屋敷という順路が描かれていた。
「アキトさん!すごいです!」
エルミナが目を輝かせる。
「もう“街の名所”扱いですよ!牢屋と自宅を行き来する貴族なんて前代未聞です!」
「喜ぶところじゃないよ!?」
「ほう。ここが例の“住みながら牢屋に通う男の館”か」
「言い方!」
観光協会員が丁寧に説明する。
「こちらの屋敷では、朝に貴族が牢屋へ出勤する様子が見られる予定でして」
「予定って何!?」
さらに別の職員がメモを読み上げる。
「中庭では賢者がくつろぎ、屋内では魔法少女見習いが記録帳を書く姿が確認されています」
「完全に生活展示じゃないか!」
そのとき、どこからともなく声がした。
『ご主人の屋敷……いい場所だと思います』
アキトは天を仰ぐ。
「なんで君まで物件評価してるの!?」
観光協会は満足そうに頷いた。
「では“準公式ルート”として、まずは様子見で」
「様子見で人を見世物にしないでください!!」
エルミナはなぜか真面目に頷いている。
「アキトさん、見学時間は朝がいいですよね?」
「もう参加前提!?」
その瞬間、遠くで隊長の悲鳴が聞こえた気がした。
「今日も屋敷は、住む場所じゃなく“見る場所”になりかけている。」




