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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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牢屋通勤貴族と噂される

朝だった。


屋敷の窓から差し込む光は、やけに上品だった。

ふかふかのベッド、広い天井、高そうなカーテン。


なのに。


「……なんで俺、これから牢屋に出勤するんだろう」


アキトは真顔で呟いた。


領主から「魔力管理のため」という名目で屋敷を与えられた。

立派な門、庭付き、使用人……はいないが、とにかく“貴族っぽい”。


しかし今日の予定表には、はっきり書かれている。


【本日の業務】

・魔力管理計画 継続

・定位置:牢屋


「出勤先が牢屋って、どういう生活……」


玄関を出ると、エルミナが当然のように隣に立っていた。


「おはようございます、アキトさん!通勤ですね!」

「その言い方やめてくれない?」


さらに後ろから、ラーデンが欠伸をしながら出てくる。


「では行くかの。わしは今日は昼寝担当じゃ」

「担当制なの!?」


三人並んで歩き始めた瞬間


ひそひそ。


視線。


あからさまな指差し。


「……ねえ見た?」

「屋敷から出てきたよ」

「でも向かってる方向、牢屋じゃない?」


「え、貴族……?」

「いや、あれ噂の……」

「牢屋通勤の人だ!」


アキトは足を止めた。

「もう名前変わってるよね!?俺!」


エルミナがメモを取りながら頷く。

「はい!“牢屋通勤貴族”って呼ばれてます!」

「なんで誇らしげなの!?」


途中、パン屋の前で声をかけられる。


「おはようございます、今日も牢屋ですか?」

「はい……」

「大変ですねえ。屋敷持ちなのに」

「その“なのに”が重いんですけど!」


反対側から別の住民。


「貴族なのに牢屋勤務って、何かの修行?」

「修行ならもう十分やってるよ!」


ラーデンが満足そうに頷く。

「うむ、身分と職場が一致せん人生。味わい深い」

「味わわせないでください!」


牢屋が見えてきた頃には、もう完全に観光の視線だった。


「ほら、あの人」

「朝は屋敷から、昼は牢屋」

「夜は……どこ行くの?」


アキトは小さく呟く。

「夜は普通に寝たいだけです……」


エルミナが元気よく宣言する。

「さあアキトさん!今日も管理計画、がんばりましょう!」

「俺、いつのまに貴族扱いなの⁈……」


牢屋の扉が開く。


ガチャリ。


いつもの場所。

いつもの匂い。

いつもの空気。


アキトは、なぜか少しだけ安心した。


「……帰ってきた感あるの、なんでだろ」


ラーデンがにやりと笑う。

「ここが職場じゃからな」


「今日も牢屋は、貴族の通勤先としては、あまりにも落ち着きすぎていた。」

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