パンツ命名
ガラスケース。
簡素な台座。
そして
呪われたパンツ(元)。
「まあ……」
王女は目を輝かせた。
「本当に“あのパンツ”なのですね!」
王女が一歩近づく。
隊長が一瞬で反応した。
「殿下! そちらは――!」
「“パンツ展示(非公式)”。
なるほど……これが、噂の……」
王女はケースの前で、じっと中を見つめた。
アキトの背中を、嫌な汗が伝う。
(やめて。
それ、触れたらろくなことにならないから)
しかし王女は、ふっと微笑んだ。
「……可哀想ね」
「は?」
「ずっと“パンツ”としか呼ばれていないのでしょう?」
隊長が顔を上げる。
「殿下、その発想は」
「名前が必要だわ」
即断だった。
エルミナが、なぜか感動している。
「す、素敵です!
物にも心があるっていう考え方!」
「ないからね?」
アキトが即ツッコミを入れる。
だが王女は真剣だった。
「この子は、街を守り、
ご主人を支え、
そして今もなお話題を生み続けている……」
ラーデンが静かに補足する。
「本人の意思とは無関係にな」
「それでも!」
王女は立ち上がり、宣言した。
「今日からあなたの名前は
『パンティア』よ」
沈黙。
次の瞬間。
『……おや。
ずいぶん可愛らしい名を付けてくれるではないか』
聞こえた。
アキトだけに。
(喋るな! 今は喋るな!!)
隊長は何も聞こえていない。
だが、嫌な予感だけは確実に察知していた。
「……殿下」
「なに?」
「どうか、
“これ以上の公式化”は」
「大丈夫よ。
これはただの“愛称”だもの」
そう言って、王女は満足そうに牢屋を後にした。
残された三人と一人(+一枚)。
エルミナが小さく言う。
「……名前、付いちゃいましたね」
「付けなくてよかったものまでな」
ラーデンは笑い、
アキトは頭を抱えた。
(これ、
絶対あとで広がるやつだ……)
ガラスケースの中で、
パンツは誇らしげに見えなくもなかった。
今日も牢屋は……王女の命名で、パンツが国宝一歩手前。




