表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/149

パンツよ永遠にーそして物語は妙な方向へ転がり出す

 パンツ亡霊騒動から数日。

 街はようやく日常を取り戻していた。


 ……はずだった。


「アキトさん! これ見てください!」


「……なんで街の掲示板に、俺とパンツの似顔絵が貼ってあるんだ?」


「“パンツの英雄”として称えられてます!」


「称えられたくねぇ称号No.1だよ!!」


 どうやら亡霊パンツを“光の守護精霊”と勘違いした人が多く、

 街では軽いブームが起きつつあった。


 パンツの……ブームである。


 地獄か?


「アキトさんだ! パンツの加護が宿る男!」


「あなたのパンツはまだ浮くのですか?」


「浮かねぇよ!!!」


 道を歩くだけでこれである。


 子供たちの間では、

 “パンツさまごっこ”なるものが流行りはじめ


「みてみてー! パンツさまー!」


「ぶわぁぁぁっ!!?」


 ただの布を振り回す子供の群れに、

 アキトは涙目になった。


「……俺はいつから異世界のパンツ神になったんだ」


「アキトさん、人気ですよ!」


「喜べるかぁぁ!!」



 訓練場に戻ると、エルミナがうつむいていた。


「アキト……

 本当にごめんなさい。全部、わたしの魔法のせいで……」


「いや……まあ、だいたいそうだな」


「う゛っ……!」


「でも、仕方ないだろ。お前、頑張ってたもんな」


「アキト……」


「それに、パンツの亡霊……

 本当に俺たちを守ってたのかもしれないし」


「えっ?」


「ほら、一度も俺たちに直接攻撃してこなかっただろ?」


「……たしかに」


「もしかしたら……

 “なにかに備えてた”のかもしれない」


 その言葉に、エルミナが小さく身を震わせた。


「な、なにかって……?」


「知らん。知らんけど……

 あの感じ、単なる亡霊っていうより……

 “意志”みたいなの、あったろ?」


「……」


 エルミナはゆっくりうなずく。


「じゃあ……パンツさんは、

 わたしたちを……どこかへ導こうとしてた……?」


「導くパンツってなんだよ。

 全然ありがたくないからな?」


 ふいにエルミナが気づいたように声を上げた。


「そういえばアキト、これ……」


「ん?」


「亡霊が消えたあと、足元に落ちてたの。

 ただの布切れに見えるけど……」


 そう言って差し出されたのは、

 指先ほどの小さな布片。


 しかし。


「……うっすら光ってね?」


「やっぱり見えるわよね!?」


 微弱だが確かに魔力反応があった。


「これ……第三形態が残した……?」


「たぶん……“核”みたいなものかもしれないわ」


「核!? パンツに核つけるな!!」


 アキトは叫ぶが——

 その布片は、まるで心臓の鼓動のようにかすかに震えていた。


 エルミナがぽつりと呟く。


「……まだ終わってない、って感じがする」


「おいやめろ。フラグ建てるな」


 街の空は青く、風は穏やか。


 しかしアキトの心には、妙なざわつきが残っていた。


 亡霊パンツの“意志”。

 残された布片。

 繰り返される不可解な魔力反応。


 ……いや、考えすぎか?


「アキトさん、次の訓練どうしましょう?」


「まずパンツから離れよう!!

 パンツと関係ないやつにしよう!!!」


「そ、そうね……」


 二人は笑いながら歩き出した。


 その後ろで、エルミナのポケットの中。


 小さな布片が、ひとりでに震えていた。


 まるで——呼吸をしているように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ