会議後、牢屋でまったり
鉄格子の向こうから、夕方の光が斜めに差し込んでいた。
牢屋は今日も、いつも通りだ。
アキトは毛布を肩まで引き上げ、壁にもたれて座っていた。
「……で、結局」
向かいのベンチで、エルミナが記録帳を膝に乗せながら首を傾げる。
「監修って、何するんでしたっけ?」
「知らない」
即答だった。
「えっ、アキトさんが“公式監修者”なんですよね?」
「そうらしい」
「それって、すごく偉いのでは?」
「たぶん」
アキトは欠伸を噛み殺しながら言った。
「でもさっきの会議で、
『細かいことは後日』って言われて、
『今日はもう解散』ってなって、
俺そのまま連れて帰られただけだし」
エルミナは記録帳をぱらぱらめくる。
「えーっと……
“公式監修者は発言一回で会議を炎上させ、その後牢屋に戻る”……」
「書かなくていい」
隣で、ラーデンが胡座をかいて茶を啜っていた。
「まあまあ。歴史的には重要な一歩じゃな」
「どこがだよ」
「“関与しないことで影響を与えた男”」
「やめろ」
ラーデンはにやりと笑う。
「それにしても静かじゃのう。外では会議だの監修だの、責任の所在だの、 胃痛だのが飛び交っておるはずじゃが」
その言葉に呼応するように、
遠くの役所の方角から、かすかな悲鳴が聞こえた。
「……今の」
「風じゃな」
「風ですね!」
エルミナが元気よく言い切った。
アキトは天井を見上げる。
「まあ、いいや。
今日はもう働いた気がするし」
「働いてませんよ?」
「精神的にだよ」
毛布を引き直し、目を閉じる。
「明日になったら、
たぶん誰かが説明しに来るだろ」
「来なかったら?」
「来ないなら来ないでいい」
「ふぉっふぉっふぉっ、ぶれないなお主は」
牢屋は静かだった。
異様なほど、平和だった。
ただしその夜、
隊長の執務室では
書類が一枚、また一枚と増えていったらしいが。
アキトは、まだ知らない。
今日も牢屋は……外がどれだけ燃えていても、異様に平和だった。




