表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/149

ラーデンが歴史書を書き始める

『これは後世に残すべきだ』


牢屋は、珍しく静かだった。


観光客もいない。

展示係もいない。

パンツの残響も、今日はやけに黙っている。


アキトは、干しっぱなしの毛布を眺めながら、ぽつりと呟いた。


「……なんか、嵐の前って、こんな感じだよな」


「ほっほ。それは正しい感覚じゃ」


その声に、嫌な予感がして振り返る。


ラーデンが、机代わりの木箱に腰掛け、

分厚い本を開いていた。


「……それ、何?」


「歴史書じゃ」


「やめろ」


即答だった。


ラーデンは気にせず、羽ペンをくるくる回す。


「題名はな

 『パンツ事変と牢屋文明の勃興』」


「やめろって言ってるだろ!」


エルミナが目を輝かせて近寄ってくる。


「わぁ!ラーデンさん、それ公的なやつですか!?

 私の記録帳も参考資料に」


「善意は資料価値が高いからのう」


「やめて!善意を歴史に残さないで!」


ラーデンは、すでに書き始めていた。


第一章

「ご主人がいないのに展示会が成立した日」


「ちょっと待て!

 なんで俺、“不在”前提なんだよ!」


「歴史とはそういうものじゃ。

 本人の意思は考慮されん」


「最悪の学問だな!?」


ラーデンは、淡々と語る。


「人はのう、

 “なぜか売れたもの”を物語にしたがる」


「やめろ!

 それ以上はパンツが主役になる!」


その瞬間


「フフ……ワタクシ、もう主役ですけど?」


空気のどこからか、聞き慣れた声。


アキトは天井を見た。


「……出てくるな」


「ご主人。

 この歴史書、監修が甘いですよ?」


「関わるな!」


ラーデンが感心したように頷く。


「ほう。

 資料が自分で口を出すとは……これは新章じゃな」


「増やすな!!」


エルミナが真剣な顔で言う。


「でもアキトさん、

 これ、未来の人が読むんですよね?」


「読まなくていい!」


「“善意が世界を動かした記録”って、

 すごく大事だと思います!」


「それ、俺の人生を踏み台にしてるから!」


ラーデンはペンを走らせながら、静かに締めくくった。


「安心せい。

 ちゃんと最後にこう書く」


結び

「なお、本人は最後まで状況を理解していなかった」


アキトは、床に倒れ込んだ。


「……やめてくれ。

 せめて、まだ生きてる間は」


ラーデンは、にやりと笑った。


「だからこそ、今書くのじゃ」


牢屋の外で、

どこかの観光客がシャッターを切る音がした。


今日も牢屋は……まだ書かれていない未来まで、勝手に歴史にされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ