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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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アキト、展示解説を聞かされる

 牢屋の扉が、今日はやけに丁寧に開いた。


「アキト。時間だ」


 隊長の声がする。

 その声色だけで、俺は察した。


(あ、これ、俺なんも知らないやつだ)


 連れて行かれた先は

 牢屋の外、だが安心できない場所。


 見学通路。


 柵。

 説明札。

 人。


 ……人。


「……なんで人がいるんですか?」


「静かに」


 隊長は低い声で言った。


 通路の向こう側、観光客らしき人たちが、こちらを見ている。

 笑顔。メモ。スケッチ。


 俺は反射的に背筋を伸ばした。


「え、えっと……これ、裁判ですか?」


「違う」


「釈放?」


「違う」


「じゃあ何ですか」


 隊長は一度、深呼吸をした。


「展示解説だ」


「……は?」



 解説、始まる


「こちらが、“問題児アキト”の使用区画です」


 隊長の声が、やけに通る。


 俺の目の前には、

 自分が使ってた牢屋がある。


 しかも綺麗。

 説明板付き。


 〈日常展示:寝相被害区域〉

 〈備考:本人自覚なし〉


「ちょっと待ってください」


「質問は後だ」


「いや、今のは質問させてください!」


 だが隊長は止まらない。


「この壁の傷は、魔力漏出によるものと推測されています」


 壁を見る。

 見覚えしかない。


(あれ俺がぶつかったやつだ)


「こちらは、エルミナ見習いの記録による再現図です」


 再現図?


 見る。


 俺が寝ながら転がって、

 布団を蹴り飛ばして、

 エルミナが泣きながら止めてる絵。


「いやこれ!」


「静かに」


 観光客が「おお……」って顔をしてる。


(感動するところじゃないだろ!?)



  最後の展示


 隊長が一番奥を指した。


「そして、こちらが」


 ガラスケース。


 中には何もない。


 ……いや。


「……何も、ないですよね?」


「ええ」


「じゃあなんで、こんな厳重に」


 隊長は、苦い顔で言った。


「元・呪いのパンツ展示区画です」


 俺は天井を仰いだ。


「……俺、関係者ですよね?」


「主役だ」


「説明、受けてなかったんですけど」


「だから今している」


 観光客の一人が、感動したように呟く。


「……ご主人、不在でも成立している……」


 やめろ。

 誰だそれ言ったの。


 その瞬間


(……ご主人……)


 聞き覚えのある声が、頭の奥で囁いた気がした。


 俺は何も言わなかった。

 言えなかった。



 解説終了後


「以上で、展示解説は終わりです」


 拍手が起きた。


 俺は、ただ一言、隊長に聞いた。


「……俺、いつ牢屋に戻れます?」


 隊長は、真顔で答えた。


「戻ってからが、本番だ」


「やめてください」


 俺は確信した。


 俺の知らないところで、この街は一線を越えている。


「今日も牢屋は……俺の人生を、解説付きで展示している。」

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