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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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責任の所在

その日、隊長は呼び出された。


場所は領主館の会議室。

重厚な机。重厚な椅子。

そして、重厚な沈黙。


机の上には、並べられた書類。


・牢屋公式見学コース報告書

・仮雇用中問題児管理記録

・非公式展示物公式化経緯

・パンツ関連売上推移グラフ


最後の一枚を見た瞬間、隊長の胃が音を立てた。


「……では」


領主が、静かに言った。


「この“牢屋展示会”および“関連グッズ”についてだが」


隊長は背筋を正した。


「はい。すべて把握しております」


「まず確認したい」


領主は淡々と続ける。


「これは、誰の責任だ?」


空気が、凍った。


隊長の脳内では、

これまでの光景が高速で再生される。


・うるさすぎて仮出所

・戻ってきたら観光化

・パンツ展示(非公式)

・なぜか売れる

・なぜか国外に話が飛ぶ

・なぜかパンツだけファンが付く


(なぜだ……)


(なぜ“パンツ”だけ独立している……)


領主は書類を一枚めくる。


「展示会は好評だ。売上も出ている」


隊長の胃がきゅっと縮む。


「だが」


ぱたり。


「責任者が不明だ」


その瞬間。


「それはですね!」


会議室の扉が勢いよく開いた。


エルミナだった。


「え、エルミナ!?」


隊長が止める間もなく、

エルミナは元気よく敬礼する。


「見習い衛兵エルミナです!

 牢屋展示はですね、最初はアキトさんが」


「いや違う!」


「違いました! ラーデンさんが」


「言うな!」


後ろから、いつの間にか紛れ込んでいたラーデンが、

にこやかに手を振った。


「いやいや、ワシは“味付け”をしただけじゃ」


「味付けで展示会が成立するな!」


隊長は机に手をついた。


「失礼します!」


全員の視線が隊長に集まる。


「責任は」


一瞬、間。


「……管理体制の不備です」


領主は少し考え、頷いた。


「つまり?」


「私です」


胃が、死んだ。


だが。


領主は、ふっと小さく笑った。


「安心しろ。処罰の話ではない」


隊長は、ゆっくり顔を上げる。


「では……?」


「“正式に担当部署を作れ”という話だ」


隊長の胃が、二度死んだ。


「牢屋管理・観光・問題児仮雇用統合担当」


書類が、差し出される。


「君に任せる」


その夜。


隊長は執務室で、

新しい報告書の表紙を見つめていた。


タイトル。


『牢屋観光事業 兼 問題児管理 兼 パンツ関連案件』


そこに、メモ書きが一行。


(※パンツ本人の発言は参考程度にすること)


遠くの牢屋から、

アキトの声が聞こえる。


「なんか最近、外が賑やかだな……」


エルミナの声。


「人気者ですね、アキトさん!」


ラーデンの笑い声。


「はっはっは、歴史は牢屋から始まるのう」


隊長は、静かにペンを取った。


「……胃薬、経費で落ちるか?」


 今日も牢屋は……静かだが、隊長の机だけがうるさい。

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