パンツ監修で「なぜか売れる」
完成した公式グッズ第一弾は、
隊長の想定をあらゆる方向で裏切っていた。
「……売れている?」
執務室で、隊長は震える指で報告書をめくった。
売上表。
在庫推移。
購入者コメント。
どれを見ても、右肩上がり。
「……なぜだ……」
原因は一つしかなかった。
パンツ監修。
事の発端は、アキト不在の最終監修会議だった。
「アキト本人がいないなら、残響の意見だけでも……」
「いや、それはダメだろ」
「でも、黙ってても聞こえてくるんです……」
そう言いながら、
エルミナは空を見つめ、メモを取っていた。
「“素材はもう少し誇りを持て”……」
「“縫い目は魂のライン”……」
「“タグの位置は羞恥と覚悟の境界”……」
隊長は頭を抱えた。
「やめろ! 書くな! それ以上パンツの思想を形にするな!!」
しかし
完成したサンプルは、妙に完成度が高かった。
販売初日。
牢屋見学コースの出口に、
ひっそりと設置された公式物販台。
隊長は遠くから、
「どうせ売れない……」
そう思いながら様子を見ていた。
──数分後。
「え、これ……履き心地、良くない?」
「思想が感じられる」
「語りたくなるパンツって初めて……」
次々に商品が消えていく。
「……なぜだ……」
隊長は膝をついた。
特に売れたのは、
『元・呪われたパンツ監修モデル(思想入り)』
説明文にはこう書いてあった。
※本商品はかつて呪われていましたが、
現在は誇りと覚悟だけが残っています。
購入者レビュー
・「履いた瞬間、背筋が伸びた」
・「夜、語りかけられる気がする(良い意味で)」
・「ご主人が誰なのか気になる」
隊長の胃が悲鳴を上げた。
その頃、牢屋。
アキトは何も知らず、
パンをかじりながら言った。
「なんか外、騒がしくないですか?」
ラーデンはニヤニヤしながら答える。
「お前の“遺産”が売れとるらしいぞ」
「……は?」
その瞬間。
耳元で、聞き覚えのある声。
『ご主人。私は社会に出ました』
「やめろ」
『売上は順調です』
「やめてくれ」
エルミナは満面の笑みで言った。
「すごいですねアキトさん!
パンツだけ、完全に独り立ちしてます!」
「それ独立って言わないから!!」
執務室では。
隊長が震える手で、
新たな企画書を叩き落としていた。
「“第二弾・思想強化モデル”却下!!」
「“パンツ単独展示会”却下!!」
「“ご主人不在でも成立する世界観”却下!!」
しかし、最下段に赤字でこう書かれていた。
《売上好調につき、継続検討》
隊長は天を仰いだ。
「……なぜ……
なぜパンツだけが……!」
牢屋では、
アキトが壁を見つめて呟く。
「……俺、働いてないのに」
「パンツの方が社会貢献してる……」
ラーデンが肩を叩いた。
「安心せい。
そのうち“パンツの元ご主人”として呼ばれる」
「嫌すぎる未来を予言しないでください!!」
遠くで、
観光客の歓声が聞こえた。
パンツ売り場から。
今日も牢屋は……主がいなくても、パンツだけが一人歩きしていた。




