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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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観光客の噂拡散回

牢屋発・最悪の口コミ


その日、街の中央広場はいつもより騒がしかった。


理由は簡単だ。


「ねえ聞いた? あの牢屋、見る価値あるって」

「え、処刑とか?」

「違う違う、“生きた問題児”がいるらしい」

「しかも魔法が勝手に暴発するって!」


完全に間違ってはいないが、

限界まで誇張されていた。



牢屋の前。


「……人、多くないですか?」


エルミナが首を傾げる。

見学用の簡易ロープの外に、観光客が列を作っていた。


「本日三回目の案内でーす!」

「写真は“問題児”の半身まででお願いしまーす!」


看守の声がやたら慣れている。


「いやいやいや!?」

アキトが鉄格子を掴んで叫ぶ。

「俺、展示物じゃないから!」


「静かに、アキトさん」

エルミナが小声で言った。

「今、“檻越しにツッコミを入れる珍獣”として評価が高いので」


「評価すな!」



観光客A

「見て、あれが噂の人?」

観光客B

「寝相が悪くて街に被害出したって聞いた」

観光客C

「パンツの幽霊と会話するらしいよ」


「三つ目は盛られてますからね!?」

アキトが即否定する。


すると


「……ご主人」


夜用パンツの残響が、

なぜか観光客にも聞こえる声量で囁いた。


「「「うわぁ……本物だ……」」」


一斉に引かれる。


エルミナは即座に記録帳を開いた。


「※本日、観光客の前で囁き発生。

 評価:怖いけど面白い。

 あと声がエコーしてた」


「書くな! 評価項目!」



そこへ、杖を突いたラーデンがにやにやしながら現れる。


「いやぁ、わしが若い頃もな」

「牢屋は観光資源になると言ったもんじゃ」


「言ってない! 誰も言ってない!」


「パンフも作るか?」

「“問題児アキトと愉快な牢屋仲間たち”」


「タイトルが完全に詐欺!」



その頃、隊長の執務室。


「……なぜ」

「牢屋の来訪者数が、先月比三倍に……?」


報告書を見た隊長は、

静かに頭を机に打ちつけた。


「……観光地ではない……」

「……断じて……」


遠くから聞こえる観光客の笑い声が、

今日も彼の胃を削っていく。



鉄格子の向こう。


アキトは深く息を吐いた。


「……なあエルミナ」

「俺、仮雇用だよな?」


「はい!」


「なんで働くより人に見られてる時間の方が長いんだ?」


エルミナは少し考えてから、

満面の笑みで答えた。


「人気者だからです!」


「最悪の理由だよ!!」


 今日も牢屋は“閉じた場所”のはずなのに、一番街に開かれていた。

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