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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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全裸で異世界落ちした

 あれ、おかしい。

 さっきまで、俺は風呂に入っていたはずだ。


 胸がぎゅっと苦しくなって、視界が白くなって……

 その次に気づいた瞬間、俺は


「きゃぁああああああああああ!!」


 女性の絶叫で目が覚めた。


 見れば、知らない石畳の道。

 知らない街。

 知らない少女。


 そして。


 知らない全裸の俺。


「……いや、ちょっと待て! これは違う!」


 俺は全力で隠しながら立ち上がるが、

 少女は真っ赤になって警笛を吹き鳴らした。


「で、出た! 変態っ!!」


「違う! 俺も被害者なんだって!」


 言い訳もむなしく、近くの衛兵たちが

 「変態を捕まえろーー!!」と全力ダッシュ。


 逃げようとした瞬間、

 足元の石に引っかかって豪快に転倒した。

 もう恥ずかしさで死にたい。


 結果、俺はそのまま連行された。


 牢屋、暗い、寒い、そして全裸


「はい、変態一名。しばらく反省ね〜」


「反省するのはそっちの判断だろぉおお……!」


 抗議もむなしく、鉄格子は閉まる。


 せめて布でも……と思っていたら、隣の牢から

 白髪のおじいさんが声をかけてきた。


「おお、新入りか。初日で全裸投獄とは珍しいのう」


「いや、珍しいとかどうでも……寒いんですけど」


「ワシは三日目じゃ。安心せい、ここの牢屋は住めば都じゃ」


「住む気はないです!」


 ツッコミも空しく、

 石床の冷気でお尻がキンキンに冷える。


 そこへ、あの少女がやってきた。


「その……ごめんなさい。

 まさか転がってる人が全裸とは思わなくて……」


 うん、それは普通そうだよな。


「誤解は解けますか……?」


「うーん……」


 少女は俺を見て、じっ……と観察し、

 なぜか頬をふくらませた。


「……やっぱり変態では?」


「おい! なんでだよ!」


「だって全裸でしたし」


「それは俺の意思じゃない!」


「でも全裸でしたし」


「だからそれ俺の意思じゃないんだってば!!」


 会話がループして埒が明かない。


 そこへ、白髪の老人が口を挟んできた。


「娘さんや、その若者は異世界落ちじゃ」


「え、異世界……?」


 少女は目を丸くする。


「ほら見てみ、こやつの魂が波うっとる。

 異世界から転がってきた者にしか見られん反応じゃ」


「……本当だ。

 あれ、じゃあ……本当に変態じゃないんだ……?」


「やっとわかってくれた!」


「でも全裸だったのは事実ですよね?」


「その話はもういいだろ!!」


 街の平和を乱す“事件”発生


 ようやく誤解が解け……かけたその時。

 外で小さな爆発音がした。


 ドンッ!!


「わ、わぁ!? 今の何!?」


「またか……」


 少女が眉をひそめる。


「“パン工房の失敗爆発”です。

 うちの街、めちゃくちゃ平和すぎて事件がないんですけど……

 パン職人のおじいさんだけが毎日爆発させるんです」


「なんだその平和すぎる事件……」


「これでも街では“要警戒案件”なんですよ!」


 そこへ衛兵が駆け込んでくる。


「エルミナ! またパンが暴走して空飛んでるぞ!」


「な、なんでパンが飛ぶのよ!」


「昨日の魔法学校の子らが

 “パン飛ばし魔法”を研究してて……」


「だからなんでパン飛ばすのぉ!?」


 俺は鉄格子に顔を押しつけながら聞いていた。


「なあ……俺の誤解、晴れるよな?」


「え? とりあえず保護責任者が必要だから

 あなた、この街で私が監視します」


「監視!?」


「全裸で転がってたので危険人物として……」


「結局変態扱いじゃねえか!!」


「いえ、“保護観察つき変態”です」


「悪化してるぅ!!」


 こうして俺は、異世界に来て最初の一日で


 全裸転移


 変態誤認逮捕

 

 パン爆発の余波

 

 少女に監視つき生活を宣告される


という、散々なスタートを切った。


 だが老人がぽつりと言う。


「まあ、悪いことばかりではないぞ。

 この街は退屈なくらい平和じゃ。

 お主が来てから……やたら賑やかになったがの」


「それ全部俺のせいじゃないよな!?」


 エルミナはくすっと笑う。


「まあ、にぎやかな方が楽しいから。

 よろしくね、“全裸さん”」


「だからその呼び方やめろぉぉぉ!」


 こうして。

 俺の異世界での“誤解され続ける街暮らし”が、

 今日から始まったのだった。


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