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春に結ぶ  作者: とりころーる
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3.予測不能な自己紹介タイム


担任の先生が教室に入ってきて、ざわめいていた教室内が一瞬にして静まり返る。先生は軽く自己紹介を済ませると、すぐにこう告げた。凛とした、はっきりとした声が響く。


「さて、みなさん。これから一人ずつ前に出て、簡単に自己紹介をしてもらいます。名前と、それから…そうですね、高校で頑張りたいこと、なんかを話してくれるかしら。じゃあ、一番前の席から順にお願いね」


小春は、結愛が隣にいることにすでに冷や汗をかいていたが、この自己紹介タイムがさらなる恐怖となることを予感した。前から順番に自己紹介が進んでいく。みんな少し緊張しながらも、部活動への意気込みや、友達をたくさん作りたいといった抱負を語っていく。


そして、ついに小春の番が回ってきた。


「桜庭、小春です。えっと…高校では、色々なことに挑戦して、楽しい一年にしたいです。よろしくお願いします」


精一杯笑顔を作ったつもりだったが、声はやはりか細くなってしまう。それでもなんとか無事に終え、ホッと息をついた次の瞬間だった。


「はい、次、向坂」


先生の声に、結愛は勢いよく立ち上がった。その顔は、まるで舞台役者のように輝いている。小春は嫌な予感がして、思わず身構えた。


「はいっ! 向坂結愛です!」


結愛の朗々とした声が教室に響き渡る。クラスメイトたちの注目が、一点に集まる。


「高校で頑張りたいことは…えっとぉ…」


結愛はわざとらしく、チラリと小春の方を見た。その視線に、小春の背筋が凍りつく。


「桜庭小春ちゃんと、絶対に両思いになることです! そして、ゆくゆくは結婚すること!」


結愛は満面の笑みでそう言い放った。教室中が、一瞬の静寂の後、どよめきに包まれる。「えーっ!」「何それ!」「いきなり!?」といった声が飛び交い、好奇の視線が一斉に小春に突き刺さる。


小春は、顔から火が出るどころか、全身が燃え尽きてしまいそうだった。頭の中は真っ白になり、クラスメイトたちの視線が痛いほど突き刺さる。隣を見ると、結愛は「えへへ」と可愛らしく笑っている。


(この人、なんでこんなこと…!? 私の高校生活、始まる前から終わった…!)


小春は、もうどうにでもなれという気持ちで、ガクリと机に突っ伏すしかなかった。


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