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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第97話 凛’sメンタリズム

「……い、いやっ、告白とかされたことないって」



 ……つい嘘をついてしまった。

 

 俺が本当の事を言って嫌な思いをするのは天羽さんだ。本人がいないところで軽々しく「告白されたんだ」なんて言うわけにはいかない。

 それに、あの後天羽さんとは普通に友達として過ごせているのに、宇月さんに知られて変に遠慮されたり気を遣われたりするのは嫌だ。



「ほんとに?」


「う、うん……」



 彼女の大きな瞳がこちらを覗いてくる。

 嘘をついた事に後ろめたさを感じ、俺は話をそらすために質問を投げかけた。



「そ、そういう宇月さんは? どうせ何回も告白された事あるんでしょ?」


「……ううん。私は、そんなにないよ」



 適当に返事をした彼女は、何かに突っかかっているような表情に見える。

 根拠はないが、この柔らかい表情は作られたものじゃないだろうか。……もしかしたら俺の回答を疑っていて、まだ頭が会話に追い付いていないのかもしれない。

 

 かける言葉を探していると、凛が横から口を出した。



「じゃあ明澄ちゃん、告白したことはあるの~?」


「ううん、一回もないよ」


「そうなんだぁ。だってさ、お兄」


「なんで俺に……? ていうか、宇月さんが告白したことないって事ぐらい、俺も知ってるよ」


「おぉ?ふぅ~ん?」



 言われなくても分かる。凛の視線から、「さすが、リサーチ済みなんじゃん」という台詞が読み取れる。

 でも別にリサーチしたわけではない。気にならないこともないが、たまたま宇月さんが自分で言ってただけだし。

  

 正面の宇月さんは俺たちの無言のやり取りには気付いていないらしく、目の前のチーズケーキを包丁で切り分け始めていた。

 

 

「……か、会話の流れで知っただけだけど」


「へぇ~? でも明澄ちゃん、絶対モテるよね~。こんだけ可愛かったら皆ほっとかないと思うな~」


「……まぁ、宇月さんって選ぶより選ばれる側の人間だから」


「……松村くん。なんかそれ、突き放されてるみたいでヤダ。私だって選びたいもん」



 そう言って宇月さんは、切り分け終えたチーズケーキを手際よく自分の皿に乗せた。一番小ぶりのやつだ。

 そして俺の皿には巨大なピースを乗せ、少し頬を膨らませながら渡してくる。



「罰として、松村くんは私が選んだ一番大きいやつです。おデブまっしぐらの刑だからね」


「それは大変だ……」



 口ではそう言ってみたが、こんなのご褒美でしかない。

 

 その後宇月さんは標準サイズに切ったケーキも凛に渡し、ちゃんと3人分のケーキが食卓に並んだ。再び皆でいただきますと手を合わせる。


 しっとり濃厚なチーズケーキに、俺も凛も「美味しい美味しい」と舌鼓を打ちながら食べ進める。



「ほんとに美味しいねこれ。でも急に持ってきてくれたからビックリしたよ」


「へへ、ありがと。結構時間経っちゃったけどさ、前にチーズケーキ作ってあげるって言ったでしょ? ちゃんと約束を果たそうと思って」


「そ、そういうことね」



 そんな約束したっけな……。

 言われてみれば、うっすらと記憶があるようなないような。いつ約束したんだっけ……。



「あー、その顔。松村くん覚えてないでしょ?」


「いやぁ……覚えてる、よ?」


「ほんとかなぁー?」


「う、うん、まあ」

 


 そう答えている間に思い出そうと必死に追憶していると、俺たちの様子を見ていた凛が横槍を入れてくる。


 

「あはっ、お兄これ覚えてないやつだね~」


「えぇ、やっぱり? 凛ちゃんなんで分かるの?」


「明澄ちゃんには特別に教えてあげるね? お兄ってさ、嘘つく時に首の後ろ触る癖があるんだよ~」


「へぇ~、そうなんだ」


「……え、そうなの俺……?」

 


 ……そんなの自分も初めて知った。

 自分では気付かない癖。今ここで知れて良かったと思う反面、つい先ほど告白の件で嘘をついてしまったため、あの時に癖が出ていなかったか不安になる。


 そんな俺の不安に気付いているのか、宇月さんは何も言わずまたこちらをじっと見つめていた。



「ねぇ松村くん、嘘は良くないよ?」


「う、うん……。ごめん」



 彼女は怒っている様子ではない。その眼差しの奥から感じるのは、僅かな悲しみか疎外感か。

 そんな瞳を直視できず、嘘をついてしまった罪悪感が沸々とこみ上げる。

 

 

「……ほんとはチーズケーキの約束、忘れてたんでしょ?」



 しかし、結局彼女が質問してきたのは告白の件ではなかった。……そっちの嘘は、特に気付いてなかったのだろうか。



「ごめん、ほんとは忘れてた。でも今思い出したよ。遠足の時だよね?」


「そうだよ。……まぁ、思い出したんなら、許してあげる」


「う、うん、よかった。作ってくれて嬉しいよ。ありがとう」


「うんっ」




 

 そうしてチーズケーキを食べ終えると、宇月さんは明日の準備があるからと早めに家へ帰っていった。



 俺は就寝前、ベッドで目を瞑りながら考える。 

 親友である宇月さんが告白の事を知らなかったということは、天羽さんはその事を誰にも話していないのだろう。誰かに言ったって、恥ずかしい思いをするだけだもんな……。

 

 明日からはいよいよ島でのアルバイトだ。

 俺も天羽さんの尊厳を守るため、周りの友人達には気付かれないように注意しよう……。

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