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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第66話 クマハラって何ですか

『天羽さんの好きな人なら、本人に訊けばいいんじゃない?』  


『いや、それはちょっと訊きづらくて……』


『女子はみんな恋バナ大好きって、前に江口さんが言ってたけど?』


『そうだけどっ、それはそれ、これはこれなんだよ』


『そうなんだ』



 仲が良すぎて逆に訊きづらいとか、そんな感じか。

 誠一郎は委員長の話、普通にしてくれるけど。男女の違いってやつなのだろうか。


『赤山テルマ君?だっけ?友梨乃に何度も告白してるのって』


『そうだよ。この前朝に話しかけてきた人』


『だよね、あの勢いだけはよく覚えてるよ』


『大体あんな感じだからね』


『……その、赤山君はさ、どうしてそんなに何度も告白できるのかな?』


 この前、天羽さんも同じような事を言っていた。

 ……が、彼女はやはり寝ているらしく、未だに反応はない。

 

『なんでだろうね。でも、それだけ勇気があるのはすごいと思う』

 

『うん。私も、告白ってしたことないからさ、どれだけ勇気がいるのかなんて想像できないな』


『そうだね。……てか"私も"って。……俺も一緒にされてる?』


『……えっ……松村くん、告白したことあるの?』


『フフ』

 

 ……もちろんしたことはない。


『……ね、ねぇ、ちゃんと答えてよ!』


 宇月さんは囁き声のまま、大きな声をあげている。


『秘密にしておくよ』


『秘密にしてたらもったいないよ!』


 ……もったいないってなんだ。秘密は秘密だからロマンがあるっていうのに。


『……じゃあ私の秘密も1つ教えるからさ、いいでしょ?』


『え?……まぁ、宇月さんがいいならいいけど』


『言ったね?』


 彼女は遠くに聞こえるぐらいの音で深呼吸し始めた。

 

 まずい……。そんなに言いづらいことだったら俺の秘密と釣り合わない。告白なんてしたことないし……。

 引き留めようかと思ったところで、彼女は自分の秘密をさらけ出してしまった。


『……私、この前までクマさんのパンツ履いてました……』


『…………今何て言った?』


『だ、だめっ、もう言わないっ』


『電波悪くてさ』


『そ、それでもだめっ』


 ……思ってたのとは違う方向だ。

 でも、かなり恥ずかしい秘密じゃん……。 


『はい次、松村くんの番ね』


『ごめん俺、告白したこととかない』

 

 答えないのもっと怒られそうなので、間髪いれずに潔く白状した。

 

『……ちょ、ちょっと!……えっ、私っ……なんのためにっ……』


『ごめん、まさかクマさんと交換になると思わなくて』


『……やっぱり聞こえてたんじゃん!』


『ごめんって。許して。今度クマさんの靴下でも買ってあげるから』


『や、やめてっ……クマハラはやめてっ』


 クマハラってなんだ……?

  


 深夜テンションだからなのか、テスト最終日前の高揚感からなのか、俺たちは小さな声で取り留めのない話を続けた。


 しかし2人で話し続け、もう夜も遅い時間。目を瞑っていて時間すら確認していないが、さすがに強い眠気が襲ってきている。


 

『……松村くん、ベッドで横になってる?』


『うん、ずっとそうだよ』


『そなんだ、私もだよ』


『そっか』


『……松村くん、もう電気消してる?』


『……うん、少し前に消したよ』


『……私も。もう真っ暗』


『……そっか。……俺は目も瞑ってるよ』


『……へへ。私も。……いつでも眠れそう』


 宇月さんの声は次第に小さくなってきている。

 それに応える自分の声量も、喉の奥から出ている漏れた息ぐらい小さなものになっていた。


『……松村くん、まだ起きてる?』


『うん』


『……私も』


『知ってるよ』


『……へへ』


『……もう寝ていいよ?』


『……ううん、まだ、がんばる』


『なんで?』


『……だって』


『……だって?』


『……寝たら……切っちゃうでしょ……?』


『……通話を?』


『……うん』

 

『……じゃあ、切らないから』


『ほんと……?』


『……うん』


『……じゃあ、このまま寝るね』


『うん』


『……起きたらさ』


『……うん』


『……先におはよう言った方が、勝ちね』


『……勝負?』


『……そう』

  

『……負けられないね』


『……私も、負けない』


『……うん』


 最後にその言葉を聞いた後、俺もすぐに夢の世界へ入った。

 


 ギリギリまで夜更かししていたのに、身体は起きる時間を覚えているのだろう。朝日で明るくなった自分の部屋で、目覚ましが鳴るより早い時間に目が覚めた。


 2人におはようを言おうとスマホを手に取る。しかし画面を見ると、数時間前の夜中にグループ通話は切れてしまっていた。


 誰かが身体で押してしまったのか。

 ……もし自分のいびきや寝言を聞かれたりしたら恥ずかしかったし、通話が終わっていたことに少しだけホッと息をつく。


 とりあえずメッセージでおはようと送ろうとすると、2人が既にグループチャットで話していた。


『おはよ~!私いつの間にか寝ちゃってた』


『おはよっ。友梨乃、一番早く寝てたもんね。あと通話も切れちゃってたみたい』


『私も切ってないんだけどな。誰かの手が当たっちゃったのかな?』


『そうかも。きっと松村くんが寂しくてスマホを抱きしめてたんだよ』


 勝手に想像されていたので、すぐにメッセージを入れる。


『そこは普通ぬいぐるみでしょ。クマちゃんとかの』


『……クマハラっ!!』

   

『あっ蒼汰くんおはよ~』


『おはよう』


『松村くんおはよ! 朝イチでクマハラは効いたよ』


『クマハラってなんなの』


『ていうか勝負!友梨乃が勝っちゃった』


『勝負?私も参加してたの?』


『そう!早起きした人が勝ちだったの』


『じゃあ一番だ! まぁ、一番早く寝たからだけどね』


『てことは俺が最下位か。夜更かししたせいでクマがひどいんだけど』


『……あ!! クマハラっ!!』



 いよいよ今日はテスト最終日。

 早めに登校の準備をし、冴えた頭で朝食の席に着いた。

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