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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第58話 目から補給もできる栄養もあるんだね

「はぁ~~、楽しかったねっ」


「うん、遠足といい、最近公園も悪くないなって思ったよ」


「そうだね。……私も、やっぱり好きだなって、思った」


 一緒にバス停の方へ歩きながら、天羽さんはこちらを向いて微笑んだ。


「バスの時間がなかったら、もっと遊びたかったんだけどなぁ」


「あはは。天羽さん、まだブランコ乗りたかった?」


「うん、だってまだ1周できてないでしょ?」


「それは……ま、また今度挑戦しよう」


「えー?言ったからね?」


 少しだけ日が落ちてきていて、空の向こう側はオレンジ色に染まりつつある。

 バス停で少し待つと、自分たちが乗る予定のバスは時刻表通りに迎えにきた。


 行きと同じように後方の2人掛けの席に座る。窓側に座った天羽さんは、喋るわけでも眠るわけでもなく、静かに外の方を見ていた。

 

 しばらく乗っていると、降りるバス停のアナウンスが鳴った。俺もさすがに乗車したバス停は分かっていたため、前にあったボタンに手を伸ばす。すると天羽さんも同じタイミングで同じボタンの方へ手を伸ばし、2人の手がチョンと触れた。


「あっ……。えへへ」


 照れ笑いしていると、前方で横向きの席に座っていたおばあさんと目が合った。どうやら一部始終を見ていたらしく、ウフフと口に手を添えて微笑んでいる。


「ご、ごめんねっ」


「いやこっちこそ」

 

 おばあさんがニコニコしているせいでこっちが恥ずかしい。俺と天羽さんは目をそらし、バスが止まるまでの少しの間、会話することなく座り続けた。


 バスから降りると、天羽さんは周りを見渡して自分の家の方角を確認。そしてスカートをふわりとなびかせてこちらに振り返った。


「今日はありがとっ」


 ようやく見慣れてきた可愛い私服姿。

 今日の天羽さんは、バスに乗るのも店に向かうのもスムーズにエスコートしてくれた。自分も行ったことがないと言っていたから、おそらく下調べまでしてくれたのだろう。でもそんな素振りは一切見せず、最後まで楽しませてくれたことには、本当に感謝しかない。


「俺の方こそありがとう。おかげで勉強は捗ったし、いい息抜きもできたよ」

 

「よかったっ。……あと、これ、今日のお礼ね」


 天羽さんが渡してきたのは、カフェでもらったクッキーの袋。

 そういえば食べている様子はなかったっけ。ここまで取っておいていたんだな。


「貰ったもので悪いんだけど、帰りに渡そうと思って取っておいたの」


「そっか、ありがと。夜の勉強のお供にするよ」 

  

「うんっ」


「……蒼汰くん。本番のデートも頑張ってね」


「頑張るも何も、遊びに行くだけだから」


「ううん、それでも、私は応援してる」


 応援されるような事を言った覚えはないし、応援されるような事をするつもりもなかった。でも、天羽さんが目を見て微笑んでくるので、なんとなくコクりと頷いた。

   

「それじゃあ、また学校でね」


「うん、また」

 

 ここから自分の家と天羽さんの家は反対方向。笑顔で手を振る天羽さんに手を振り返して、そのまま解散。

 こうして楽しかったデート……の練習は終わった。

 

 家に帰って夕飯を食べ、お風呂に入る。いつでも勉強できるような状態になって部屋に行こうとしたところで、凛がまたドライヤーを持ってきた。


「あ、お兄。さてはその顔は忘れてたね~?」 


「おお、ちょうど今思い出したよ」

  

「そりゃあ、これ見たら思い出すでしょ~」


 いつものように俺がソファに座り、凛が膝の間に座る。ドライヤーのスイッチを入れようとすると、凛が振り返って目を大きく見開いた。


「こ、この匂いっ!……お兄、もしかして今日、例の女の子と会ってたの?」


「え、ええ……。まぁ、そうだけど」


「まさか休日に女の子と出掛けるなんて………!」


「まぁね。俺もデートぐらいはね」

 

 明らかに驚いた凛は、台所の方を向いて大きく息を吸った。


「おかあっ………んぅっ!」


 俺は咄嗟に片手で凛の口を塞いだ。

 今、絶対に母を呼ぼうとした。そんなことされたらたまったもんじゃない。凛と一緒になって"お祝いだ"とか言って騒ぎ出すに決まっている。

 

「わわった、わわったわら、もういわないわら」


 口を抑えていた手をポンポンと叩かれたので、手を離す。


「せっかくのお祝いなのに~」


「やっぱりお祝する気だったんだ。……デートっていうのは冗談で、今日はただ一緒に勉強してただけだから」


「ふぅん?」


 凛が納得してないんだけど?と言いたげにこちらを見つめている。するとここで机の上に置いてあったスマホの通知が鳴った。


「あっ、なんかきたよ~」


 鳴ったのは俺のスマホ。自分で届かないため取ってもらうよう頼むと、手に取って画面を見た凛がムフっと声を漏らした。


「ほらっ、デートだってさ」


 凛が渡してきたスマホには、ロック画面にメッセージの通知が表示されていた。

 

『今日はありがとう!"デート"、楽しかったよ!』


 天羽さん、なんて間が悪いんだ。


 俺はスマホをそっと自分の横に置き、見なかったことにしてドライヤーのスイッチをいれた。

 髪を乾かしている間、何度か凛がニヤニヤと話しかけてきたが、風の音であまり聞こえないフリをし、適当にいなして今日のルーティンを終えた。


  

 天羽さんに返信したあと、自分の部屋に入って勉強を始める。

 1時間ほど勉強すると小腹が空いてきたので、天羽さんからもらったクッキーを食べることにした。


 クッキーを見ると思い出す。カップルだと思われてたんだっけ。俺が相手でもそう見えてしまうんだな。

 今はボディガード中だからいいけど、テストが終わったら気を付けないと。天羽さんの人気を落とすわけにはいかない。


 そんなことを考えながらクッキーの袋を手に取ると、裏にメッセージが書かれていることに気付いた。


 "Thank You♡"


 ……ま、またハートマーク。

 2回目なはずなのに、俺は不覚にもまたドキッとさせられてしまった。


 でも、よく見るとクマさんのイラストが書いてない。

 

 なんだ、店員さんが書いたんだな……。 


 それが分かって安心したような、でも少しガッカリしたような。そんな気分だった。 

書き溜めに追い付いてきたので、週2回投稿に更新頻度を落とします。

読んでくださった方は忘れないでいただけると嬉しいです…!

またブックマークや評価をいただけると大変励みになりますので、ポチっとしてもらえると嬉しさ100倍です!よろしくお願いします!

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