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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第50話 たぶん商店街のくじ引きで当たったやつだよ

『第二問。料理の中で、アルコールを飛ばすという工程がよくありますが、アルコールの沸点は何℃でしょう?』


『90℃!……ブブーッ』


 仙台君が先手を打つが、外してしまう。

 不正解の音が鳴るとすぐに宇月さんが答えた。


『約78℃!……ピンポンピンポーン!』

 

『宇月さん、今度は正解です!さすがお料理部……じゃなくて、さすが女の子ですね!』


 お料理部って言われちゃったよ。

 でも宇月さん、料理が得意なのはやっぱり本当だったのか。

  

『では、第三問。学校のプールは、冬の時期でも水が抜かれていません。なぜでしょう?』


『魚を飼うため!……ブブーッ』


『防火水槽にするため!……ピンポンピンポーン!』


『あぁ、惜しいっ!』


 宇月さんが小さい声で"惜しい"と言ったのを、マイクはしっかり拾っていた。

 ……いや惜しくはないでしょ。


 その後もお昼の放送のクイズは何問か続いた。

 結果は仙台君の勝ち。

 宇月さんは意外にも、教科書に載ってそうな知識問題は結構正解していた。他は1つも当たらなかったが。


 クイズが終わると、お昼の放送はエンディングへ。

 最後には宇月さんも慣れてきたのか、きちんと生徒相談部の宣伝をして役目を終えた。(それはきちんと台本通りに)

 

 放送終了までに弁当を食べ終えていた俺は、放送室まで宇月さんを迎えに行くことにした。


 


「宇月さん、お疲れ」


「松村君……。女子アナって……すごいね」


 彼女は力尽きて机に突っ伏していた。


「よくやってくれたよ、ありがとう」


「え、それって……?」


「うん。教室、すごく盛り上がってた」


 自分のクラスだけではない。廊下からは他のクラスの笑い声が聞こえていたし、確実に今日の放送は聴いている人が多かった。

 いろいろ言いたいこともあったが、結果として成功であることに間違いない。

 

 宇月さんはさっきまでの脱力感が嘘のように起き上がり、そばにいた放送部の2人と一緒に万歳して喜んだ。


「やったやった!成功だね!よかったね仙台君!」


「宇月氏や松村氏のおかげですっ!これから必ず、もっともっと盛り上げていきますよ!」


 3人は笑顔でハイタッチをしている。

 あまり役には立たなかったが、初めての依頼を無事こなせた達成感から、見ている俺まで嬉しくなった。



 その日の放課後、相談部の部室に放送部の2人がやってきた。今日の放送のお礼を言いたいとのことだった。


「相談部の2人、ありがとうね」


 部室に入って早々に、俺たちに向かって広島先輩が小さく頭を下げた。

 俺と宇月さんが「いえいえそんな」と謙遜していると、仙台君が真剣な顔で広島先輩を見つめる。

  

「先輩、それで、今後の活動は……」


「……あぁ。これからも、お昼の放送は続けていくよ。俺も教室に戻ったらいろんな人に声をかけられてね。みんな良かったよ、面白かったよって言ってくれたんだ。……だから仙台。大変かもしれないけど、これからも期待してる」


 仙台君は噛み締めるように両手でガッツポーズをした。


「これから先輩の引退まで、忙しくなりますねっ」


 彼はそう答えると、とても嬉しそうに広島先輩を見た。

 

 俺も宇月さんの方を見る。彼女はこちらに顔をあわせると、ニコっと可愛らしい笑顔を見せた。


  

「あぁ、そういえば……!」


 なにかを思い出した仙台君が、自分のズボンのポケットに手を突っ込む。


「これ、貰い物なので、お礼としては少し物足りないのですが……。頑張ってもらったので。良かったら受け取ってください」


 仙台君が宇月さんに渡したのは、水族館のチケット2枚。

 ……なんかベタだな。


「えっ、ほんとにいいのっ?」


「もちろんですともっ。今回はお世話になったので、その感謝の気持ちです」


「……じゃ、じゃあ、いただいちゃおっかな。へへ」


 宇月さんは照れながらそれを受け取った。


 広島先輩と仙台君は用が済んだのか、これからの作戦会議をすると言って部室を後にした。

 部室を去る直前まで"ありがとう"と何回も言われたせいで、俺は少しむず痒い気持ちになって。宇月さんも同じだったのか、2人きりになった後もしばらくお互いボーッと空気を見つめていた。

 


「……あっ。松村くん」


 宇月さんが先に我に返る。

 

「ん?」


「あのさ……水族館って、好き?」


 そう質問しながら、手に持っていたチケットをじっと見つめている。

 

「まぁ、好きな方、かな」


「……そか。じゃあ……これ」


 彼女は上目遣いで静かにチケットを一枚差し出してきた。

 俺は少しばかりそれを眺める。

 ……そして、せっかくなので有り難くいただくことにした。


「ありがと。楽しんでくるよ」


「…………ね、ねえ! 普通は一緒に行こって言うとこでしょ!」


「え?もしかして大事な2択間違えた?」


「……もう」


「ごめんごめん。でも期末テスト近いし。それが終わったら、付き合ってくれる?」


「うんっ。……仕方ないから、付き合ってあげますっ」


 呆れながら笑った宇月さんは、大事そうに自分のチケットを両手で持って見せた。


 

 

「おじゃましま~す」


 ここで突然、部室の扉が開いた。

 俺たちは音に驚き、慌てて自分たちのチケットをしまい込む。

 

 廊下から顔を出したのは天羽さんだ。バタバタしている俺たちの様子を見て、不思議そうな顔をしている。


「どうしたの?2人ともそんなに慌てて」


「あ、天羽さん。……な、なんでもないよ」


「うんうん、なんでもないなんでもない」

   

「ふーん?なんか様子が変な気がするけど」


「……ゆ、友梨乃にはまだ早いよっ。おお、オトナの話だよっ」


 宇月さん、それだと(むし)ろいかがわしい感じになってますが………。


「そ、それは、お邪魔しちゃったかな?」


「そんなことないから、どうぞ入って入って」


 俺が椅子を用意すると、彼女は遠慮がちに座った。


「そういえば明澄、今日のお昼の放送、やばかったね……。面白かったよ。ふふふっ」


 口に手を当てて笑う天羽さんに対し、宇月さんは思い出した恥ずかしさから顔を赤くしている。 


「わ、私はメモの通りやっただけだからっ……!」


 ……まぁ、メモの通りやってたのはある意味本当だけど。 

 

「えー?面白かったんだから、誤魔化さなくてもいいのに」


 天羽さんはまだクスクスと笑っている。

 早く話題を変えたい宇月さんは、すぐに適当な話題にすり替えた。


「そそ、そんなことよりさ、友梨乃、今日はどうしたの?」 


「え?あぁ、それはね。実はちょっと相談があって……」


「おおっ、早速次の依頼だねっ。どうしたの?」


 宇月さんが問いかけると、さっきまで笑っていた天羽さんは急に大人しくなって、チラリとこちらを見ながら恥ずかしそうにこう呟いた。


「……ご、ごめん。とりあえず、明澄にだけ話してもいいかな……?」


 ……お、オトナの話でしょうか……?

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