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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第47話 私、マイクを握ると性格が変わるタイプ…かもしれないしっ

「突然来ちゃってごめんね? 放送部の椅子を修理してたら、生徒会の鈴さんがきて。急だったけど、お邪魔することにしたんだよ」 


「いえいえ、そんな」


「本当は俺1人で来ようかなとも思ってたんだけど……」


 そう言いながら、広島先輩は隣に座っていた仙台君の方を見る。

 仙台君はメガネをかけた大人しい男子生徒。それが俺の第一印象だ。まだここに来てから声すら聞いていない。


「先輩、何を言ってるのですかっ。僕を置き去りにしようものなら、この高校、いや、福井県を更地にしてでも先輩を見つけ出すまで暴れまわりますよっ」



 ……あれ、大人しいと思っていたけど。 

 今まで黙っていたのが嘘のように、なかなか強烈なことを言ってらっしゃる。


「ま、まぁ、こんな感じだからさ。やる気はあるんだけどね」


「当然です!僕は1人でも放送部を守り抜きますからっ」


 落ち着いて物事を進める広島先輩と、若干空回りしている仙台君。よく言えば、2人で上手くバランスが取れているのかもしれない。

  

「もしかして、広島先輩は引退した後の事を考えてるんですか?」


「そうなんだよ。お昼の放送を聴いてる人が少ななかったのは、俺としてもかなりショックではあったんだけど……。仙台が1人になってからはもっと大変になるだろうし。こんな状況なら放送をやめるか、少なくとも頻度を減らすべきだと思ってるんだ」 


「それで生徒会に……?」


 広島先輩は黙って頷いた。

 先輩の面倒見がいいだけではなく、仙台君の性格からして1人にするのは心配なのだろう。初めて会った俺でもその点はなんとなく共感できる。


「先輩は心配しすぎなんですっ」


 不満気な顔の仙台君が声をあげる。

 

「……仙台君は1人になっても今の放送、続けたいの?」


「それはもちろんです。自分は先輩が繋いできた伝統を終わらせたくないのです」


 どうやら熱い気持ちの持ち主なようだ。

 この件にどっちが正しいということはない。先輩と仙台君、どちらの意見も理解できる。


「仙台、俺が抜けたら1人になるんだぞ? 今まで頑張ってきてくれたのは感謝してる。でも後継者が来るかも分からないし、そもそも1人でも部として認めてもらえるかすら分からないんだ。そんな中、今までのように毎日お昼の時間を費やすのは、仙台のためになるのかどうか……」


「そういうことですか。……でも先輩。今回僕ら生徒相談部の提案にのってくれたということは、引退するまでに少し試す気があるってことなんですよね?」


「まぁ、一応そうだね。もしお昼の放送にある程度人気が出たのなら、やる意味はあるってことだし。そうなれば仙台が頑張る甲斐もある……とは思ってる」


 

 先輩の言葉を聞いて、これまで黙っていた宇月さんがガタンと音を立てて立ち上がった。

 彼女は自分の胸元で両手をグーにしてこちらを見る。

 

「じゃあ、成功すれば全部解決ってことだね!」


「そういうこと、だね」

  

 俺と宇月さんが顔を合わせていると、仙台君はメガネをクイッと上げて広島先輩の顔を覗き込んだ。


「そういうことですから先輩!ぜひ、協力をお願いしましょう!」


 広島先輩は仙台君の強い気迫に押され、若干のけ反りながら答えた。

 

「わ、わかったよ……。まぁ引退までは少しだけ時間があるし。相談部の2人、お願いしてもいいかな?」


「もちろんですっ」

 

 宇月さんが元気よく答えたのを見て、早速仙台君は本題に入った。

 

「ではっ、ご協力いただけるということで……!今回ご提案いただいた中で、自分がいいなと思ったものを挙げさせていただきますっ」


「おぉ~っ、どぞどぞっ」


 張り切って話し初めた仙台君に向き合い、宇月さんは座って自分のメモを取り出す。

 

「まずは、ゲストを入れる件ですね。将来的に僕が1人になることを考慮しても、ゲスト制はかなり有効かと思うのです」

 

「でしょでしょ?色んな人が来ると、もっと楽しくなるよね?」

 

「それは俺も結構アリだと思ってはいたんだ。ただ1つ問題なのが……」


「……来てくれる人がいるかどうか……ですか?」


「そう、松村君の言う通り。いきなり募集して、放送に出たい人なんているのかってところが、気になってる」


 広島先輩がこう弱気になっているのも仕方がない。何せ放送を聴いている人自体が少ないのだから。

  

「たしかに、最初がハードル高いですもんね……」

 

「松村くん!!」


 ペンを持った宇月さんが勢いよく手を挙げた。 


「最初は私か松村くんが出ればいいんじゃないかなっ!」


 そうきたか。

 俺はそんなに目立ちたくない。

 ……いや、誰も聴いてないのなら別にいいか?……いやいや、聴いてもらうのが目的なのにそれはダメか。

 話が上手くない俺が出ても効果がないだろうし、ここは上手く宇月さんがやるように誘導したいところだ。


「宇月氏、それはグレートなアイデアじゃないですかっ。新設したばかりで生徒相談部の存在は知られていないですし、アピールするチャンスにもなって一石二鳥ということですねっ」


「でしょ!私結構冴えてるかもっ!」


 仙台君の勢いが相まって、宇月さんがノリに乗っている。乗りすぎている。……これは俺にとってもチャンスじゃないか……!

 

「じゃあ、宇月さんやってみたら?」


「ええっ、私??」


「宇月さんの方が知り合い多いし、聴いてくれる人も増えると思うよ?それに、ちょっとやってみたいでしょ?」 


「たしかにやってみたい!でも緊張しちゃうからなぁ。いやー、でもマイクで喋ってみたいかも!……んー、でも、初めての人に話すのと変わらないしなぁ」


 揺れ動く宇月さん。


「宇月さん、思い立ったらやってみないと!才能あるかもしれないんだから。……マイクと言えば女子アナだよ?MCだよ?」

 

「そ、それは……!……やっぱり、私、やる!!」


 それまで揺れていた彼女は、魅力的なワードにコロッと傾き、勢いよく立ち上がる。

 胸の前で力強く両手を握っている彼女を見て、俺は深く安堵の息を漏らした。……よかった、やらされなくて。


「よしっ、その息だよ宇月さん!緊張ぐらい、台本とかメモとか用意すれば大丈夫!俺も手伝うし、頑張ろう!……生徒相談部の未来は君にかかってる!」


 安心した俺は、これまでにないぐらい張り切って、彼女を鼓舞するのだった。

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