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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第26話 望まない三角形の中で

「頑張って走ったからね。後はこっちに来ないことを祈ろう」


 1分くらいの時間、俺と江口さんは追ってきていた警察がいなくなるまで遊具の影に隠れ続けた。


「……そろそろ確認しようか?」

 

「うん、私もみてみるね」


 二人で遊具から顔を出して確認する。

 近くに警察の姿は無いようだ。


「いない……。逃げ切れたみたいだね」

 

「ふぅ〜よかったぁ〜」

 

「動けないからここに隠れてたけど、あっちの方が安全そうだし移動しよう」

 

「うん、賛成〜」


 俺は江口さんと一緒に人がいない茂みの裏へ移った。


「ここなら安全そうだね。しばらく休憩しようよ」

 

「休憩?ありがとう……!」


 "休憩"という言葉に喜びが溢れてしまった俺を見て、江口さんは不思議そうな顔をしている。

 さっきまで宇月さんに"本気"とか"全力"とか言われてたから、"休憩"という甘い言葉に身体が勝手に反応してしまったのだ。


「ねぇ、そういえばさ。理由聞くのもおかしいかもしれないけど、松村君達はなんで鈴さんと仲良くなりたいの?」

 

「それは……」


 誠一郎のお願いの事、あまり詳しく話すわけにはいかないな。


「誠一郎が委員長と同じ中学出身だって聞いてね。……俺、友達の友達はみんな友達!うぇいって感じだから」

 

「ふふ、後半が嘘なのは私でも分かったよ。……ごめんね、変な詮索して」

 

「いや、全然。江口さんは鈴さんと仲良かったの?」

 

「私も同じ中学だったんだよ?中学の頃は、結構話す仲だったかな」


 なるほど、江口さんも誠一郎と似たような感じなのか。

 


「そうなんだ。でも、教室にいる委員長って、あんまり誰とも話してないような気がする」

 

「うん……。私が話しかけても、少しよそよそしいというか……段々話しかけづらくなっちゃってね」


 江口さんはそう話すと、何かを思い出したのか、悲しさと寂しさが入り混じったような笑顔を見せた。

 

 これ以上話を掘り下げるのは良くないか……?

 でも、誠一郎含め、みんな委員長と仲良くしたいと思っている。何かのヒントになるのなら、委員長の事をもっと知っておきたい。


「……そうなんだ。……もしよければ、何があったか話してくれないかな?」

 

「……鈴さんのこと?」

 

「うん。中学の時、何かあったんだろうなって」

 

「……お見通しなんだね。……分かった、話すよ。もともと同じ中学の人は知ってる人も多いし。……それに、鈴さんはいい子なんだって、松村くんにも分かってほしいから」

 

「ありがとう」


 そして江口さんは悲しそうな表情のまま話し始めた。


「……二年前、私や鈴さんが中学二年生の時だね。鈴さんって大人しい性格ではあったんだけど、人並みにお喋りも楽しむ子だったんだよ。あの時は私もよく話してたし、辺見君とも仲良かったと思うな」

 

「うん、たしかに誠一郎もそう言ってたよ」

 

「そうなの。……でね、鈴さん、その時に親友って言えるほど仲良しだった女の子がいたんだよ。二人は何するときも一緒だったし、いつも笑い合ってるから本当に微笑ましかったな」


 委員長に親友がいるという話は聞いたことがない。

 俺が情報弱者だというのは自覚しているのだが、宇月さん達もそんな事は言っていなかった。


「それでね、鈴さんがその親友の子から恋愛相談を受けてたらしいの。もちろん、鈴さん優しいから親身になってあげてたみたいで。その子が恋してる相手は、鈴さんと同じ生徒会の先輩だったし、なおさら鈴さんも力になってあげようと頑張ってたんだよ」

 

「委員長、生徒会に入ってたんだ。なんか分かるかも」

 

「だよね。昔から責任感ある子だったから、立候補してその時は秘書になってたよ。ちなみに例の先輩はイケメン生徒会長ってわけ」

 

「イケメン生徒会長への恋ね……」

 

「で、鈴さんは生徒会長に積極的に話しかけて、親友と会長が会うキッカケを作ってあげてたんだ。親友に生徒会の手伝いを頼んだり、先輩がいる勉強会をセッティングしたり。本気で応援してたのは、私の目から見ても明らかだったよ」

 

「なるほどね」

 

「そうやって鈴さんのサポートと本人の努力もあったんだけど、残念ながら親友の恋は叶わなかった」


 江口さんはあまり感情には出さず話し続ける。

 

「いざ告白しようって時まで、鈴さんはいつも通り背中を押してあげてたみたい。……でも、ある日からその子と鈴さんが一緒にいる事はパッタリと無くなっちゃって」

 

「どうして?」

 

「……親友が生徒会長に告白する前に、生徒会長から告白されちゃったの。……鈴さんが」


 ……そういうことか。

 江口さんは俺と目を合わせると、悲しそうに眉尻を下げた。


「鈴さん、『自分はそんなつもりなかったから』って断ったんだって」

 

 よくある話……と片付けてしまうと簡単だが、同じようなことがあれば誰だってギクシャクしてしまう。親友の恋を応援するはずが、一番邪魔していたのは自分だったということだ。委員長がそれで自分を責めてしまうのは、根がとても優しい人間である証拠なのだろう。


「鈴さんが生徒会長をフッてから、親友の子と何があったのかは分からないんだけど……。その子、すぐに家の事情で転校する事になっちゃって」

 

「そうだったんだね。じゃあ委員長が今みたいに控え目になったのもその頃から?」

 

「うん。その頃からみんなとも距離を取るようになってね。顔を隠すように前髪も伸ばして、今みたいに……」

 

「……そっか」

 

「きっと、よかれと思って行動してたのに、自分のせいで親友も先輩も傷つけて。人と関わらない方がみんなのためだって思ってるんじゃないかな」


 ……人を避ければトラブルを避けられるってことか。

  

「いろいろあったんだね。話してくれてありがとう」

 

「ううん。私も、鈴さんが悩んでるのなら何か力になりたいんだけど、今さら何て声をかけていいのか分からなくて。……でも、松村君たちが鈴さんと仲良くなりたいって言ってるの聞いて、すごく嬉しかったよ」


 委員長と仲良くなりたいのはもちろん本音だ。

 それに、誠一郎の依頼の件で委員長に接触することになったが、なんとなく彼が顔を見たいと言っている理由が分かった気がする。


「俺には普通のクラスメイトとして接することしかできないけどね。早く委員長と友達になりたいって、心からそう思うよ」

 

「ありがとっ。……あ、もう気づいてるかもしれないけど、鈴さんって顔も可愛いから、松村君惚れちゃうかもねっ。……でも、浮気はだめだよ?」

 

「浮気?縁がない言葉なんだけど……」

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