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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第22話 次に会うのは牢屋の外でお願いします

 俺と宇月さんは周囲に注意を向けつつ、誠一郎と天羽さんが隠れている低木の後ろに小走りで戻った。


「いやぁ〜危なかったよ」

 

「危なかったっていうか、捕まってたけどね……。もぅ、蒼汰くんに感謝しなよ?」

 

「う、うん。松村くん、ありがとねっ」


 天羽さんに促されると、宇月さんは照れ笑いしながら俺にお礼を言った。


「じゃあやっと揃ったことだし、そろそろ作戦始めようか」

 

「I・S・M作戦だね!」

 

「別に言い直さなくていいぞ」


 

 作戦は簡単だ。一緒に行動して、委員長をただひたすら走らせるだけ。

 公園に来る途中、俺が委員長と同じグループの女子生徒に頼んでおいたのは、ケイドロが始まったら早目にこちらのグループと合流するという事だけだ。

 

 本当は最初から両グループで一緒に行動しておきたいところだったのだが……。陸上部と勝負したがる宇月さんを説得するのに手こずってしまい、俺たちはギリギリまで隠れる事ができなかった。そのため残念ながら今は委員長たちがどこにいるか分からない。


 

「まずは委員長たちを探さないとだよね」

 

「うん、なるべく早く合流しておきたいよね。俺は見てなかったんだけど、誰か委員長たちが逃げた先を見てたりする?」

 

「いや、俺も分からないな。……てか、みんな宇月を説得するのに必死だったから見てないんじゃないか?」

 

「それは困ったわね……」


 誰のせいだよ…………。顎に指を当てて真剣な顔をしている宇月さんを見て、おそらく3人全員がそう思っただろう。


「じゃあ、目立たないよう二手に別れて探そうか」


 とにかく、いつまでもここでじっとしているわけにはいかない。

 3人共提案には賛成してくれたので、グーとパーでグループ分けする例のアレをやることにした。

 そしてグループ分けの結果、俺と誠一郎、宇月さんと天羽さんという組み合わせで決まった。

 

「私は友梨乃とだっ!綺麗に男女で別れたねっ」

 

「ほんとだねっ。……ねぇ明澄、もう陸上部と勝負したいとか言わないでね?頼むよ?」

 

「え?あっはは〜」


 ……"うん"とは言わないんだ。


 

「よし蒼汰、俺たちは動きまくって探すぞ!」

 

「えぇ……警察に見つからないようコッソリだよ」


 誠一郎、体力を持て余しているのだろうか、既に声が大きすぎる。


「それじゃ、松村くんペン見くん、できたらまた後で合流しようね」


 宇月さんはそう言い残すと天羽さんの手を引き、周りを確認しながら小走りで去っていった。


「俺らは向こうから探していこうぜ」

 

「うん、そうしよう」


 俺達は二人が向かった方向とは反対方向に駆け出した。

 委員長たち、早く見つかるといいな……。

 何せこの公園はそこそこの広さがある。隠れ場所を一つずつ探していくのは、俺の体力的に無理があるからなぁ……。


「蒼汰、待てっ」


 二人で隠れながら移動していると、突然誠一郎がピタリと動きを止めた。

 視線は少し遠くを見ているようだが、俺が飛び出さないように手で抑止してくれている。

  


「あそこにサツがいる」

 

「その呼び方……ヤンキーじゃん」

 

「お巡りさんがいる」

 

「よしそれでいこう」


 誠一郎の視線の先には、教科書のように綺麗なフォームでクラスメイトを追いかけている爆速陸上部員の姿があった。


「あれは逃げ切れるか分からないな」

 

「誠一郎でもそう感じるんだね。……ていうかあのサングラスのせいでどこか見覚えのある光景になってるような」


 陸上部……もといお巡りさん達は、全員が佐藤先生から支給された黒いサングラスをかけている。

 警察側の人間が一目で分かるようにという配慮だそうだが……サングラスの人が追いかけてくる、そんなテレビ番組があったような気がする。


「あぁ残念、捕まっちまったな」 

 

「え、なんかあの子、莫大な賞金を失ったぐらいの勢いで嘆き悲しんでるけど……」

 

「このゲームに賭けてたんだろうな」


 ……いや何を?

 

「あの警察に気付かれると嫌だし、俺たちは少し遠回りしよっか」

 

「そうだな」


 未だ両手を地面につけて絶望している生徒を、視界の端の方で捉えながら、俺たちは更に牢屋から離れた方向へ移動していった。


「ねぇ。ところで誠一郎、中学の時は委員長と仲良かったの?」

 

「まあ、あの頃は結構話す仲だったな」

 

「そうなんだ。委員長、喋るのはあんまり好きじゃないんだと思ってたから、ちょっと意外かも」

 

「今のあいつはそう見えるだろうなぁ。あれでも数年前まではよく笑うやつだったんだぞ?……まぁ恥ずかしがり屋なのは変わってないけどよ」


 懐かしみながら委員長の事を話す誠一郎は、少し嬉しそうで、それでもどこか寂しそうな表情をしていた。 


「誠一郎、やっぱり委員長のこ……」

 

「うっ!蒼汰!静かにっ!」


 茂みから顔を出して周囲の様子を伺っていた誠一郎が、突然顔を引っ込めて焦りだした。


「お、お巡りさんがこっちの方に歩いてきてる。やばい、もしかしたら俺が顔を出してたのがバレたかもしれない……」

 

「そっか。じゃあここにいたら二人とも確保されちゃうね」

 

「お、お前、何が『そっか』だよ。無になるんだ。俺たちは木だ、木になりきるんだ」


 そう言うと誠一郎は、枝を模しているのか少しだけ両腕を上げ、半目になって固まってしまった。

 

 茂みの隙間から様子を伺ってみると、警察はまだこちらへ向かって歩いてきていた。

  

「さすがにそれは無理があるよ」

 

「くっっ」


 彼の頬に沿って一粒の汗が流れ落ちる。するとここで覚悟を決めたのか、真剣な顔で俺に目を合わせてきた。

 

「ここは俺が囮になる」

 

「そんな……」

 

「お巡りさんはまだ歩いてこっちに向かってる。きっと完全に俺の存在に気づいたわけではないんだ。……それに俺が飛び出せば、食いついてこっちを追いかけてくるはずだろ?」

 

「その隙に逃げろってことね……。分かったよ。でも捕まらないでよ?まだISM作戦、全然進んでないんだから」

 

「おうよっ!」


 気持ちよく返事をすると、この勇敢な泥棒は勢いよく茂みから飛び出し、見事警察を引きつけながら走り去っていった。

 

 飛び出した時点ではまだ警察との距離はあったし、誠一郎なら逃げ切って後で合流できるかもしれない。

 それに最悪捕まったとしても助けに行くという手段もあるし……こっちはやるべきことをやろう。


 俺は隠れていた茂みから出て捜索を再開する。

 

 少しの間歩いていると、遠くで塀に隠れている数人組が見えてきた。

 ……隠れているということは、ケイドロをしているB組の生徒だろうか?

 歩いて近づいていくと、その中の女子生徒らしき一人がこちらに気付き手を振っている。

 おいでおいでしてきたので、素直な俺はそちらに向かうことにした。

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