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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第21話 奔走中

 宇月さんが合流した後、3人で話しながらとてもとても長い距離を歩いた。

 彼女が追いついた時点でもうすぐ着くだろうと予想していたのだが、その考えは甘かったようだ。


「ふぅ〜、やっと着いたね!」

 

「うん、ほんとに遠かったよね。なんだか蒼汰くんの顔を見ると、私はまだ元気かもって思えてくるよ」

 

「こ、この顔は……これ以上体力を使うわけにはいかないと身体が認識したとき、松村くんは無意識に菩薩モードに変わって省エネルギーの極み的な存在になるんだわ……!」

 

「え、蒼汰くんってそんな最新家電みたいな機能ついてたの?」

 

「そうそう……って、ちょっと松村くん、いつまでその菩薩顔してるの?もう着いたんだから戻ってきて〜!」


 

 …………ハッッ!!


 宇月さんに激しく肩を揺らされ、いつの間にかどこかへ飛んでいっていた意識が戻ってきた。


「ここは……?」

 

「安心して。公園だよ、もう着いたんだよ」

 

「……そうか。俺はまた生き延びてしまったのか」

 

「おい、お前ら、茶番はいいからまずは俺を呼びに来いよなー」


 誠一郎が俺たち3人に気が付いて近付いてきた。列の後ろにいた生徒も次々と到着しているようだ。


「そういえば辺見くん、バスケ部のスカウトはどうだったの?」

 

「おう、それなら1人見学に来てくれるやつを見つけたぜっ。違うクラスの知らないやつだったけど」

 

「すごいね誠一郎、初対面でも話しかけられるなんて、さすがコミュ力の塊だよ。ね、宇月さん?」

 

「う、うん、そだね〜」


 宇月さんはスーッと俺から目を逸らした。


「あっ、ねぇ、あっち!クラスの皆集まってるんじゃない?」


 宇月さんが、目を逸らした先を指差している。そこにはちょうどB組の生徒達が集まっている様子が見えた。

 佐藤先生のもとに集合しているようだ。

 

「おっ、じゃあ俺達も行こうぜっ」


 

 誠一郎に連れられ、俺たち4人はクラスの皆が集合している場所に合流した。

 すると佐藤先生がこちらに気付いたようで、B組全体に対して少しだけ大きな声で話し始めた。


「おっ、辺見のグループも来たみたいだし、これでたぶん全員集まったな。到着したら集まるようにってすっかり言い忘れてたけど、みんな優秀じゃないか!……てことで、これからの動きについて話すぞ〜」


 このあっさりした感じ、佐藤先生は相変わらずだな。


「事前に4人グループを作るように指示したと思うが、そのグループを使って今からケイドロをやろうと思う。それ終わったら昼食で、午後はまた別のレクレーションだ」


 クラスメイトたちがザワザワし始めた。きっとこの歳になってケイドロをするなんて誰も予想していなかったからだろう。

 

 そこから先生はケイドロのルールを説明し始めた。

 今クラスで集まっている電灯のふもとを牢屋とする事、1グループだけが警察で、残りのグループは泥棒側である事。ルールは大体普通のケイドロと同じようだ。

 ただ、泥棒は牢屋に捕まった人にタッチすれば助けられるが、助けられるのは自分のグループメンバーだけという決まりらしい。

 つまり4人のグループメンバー全員が捕まったら脱落……復活はないというわけだ。

 

「昼ごはんの時間になったら笛が鳴るから、それまで誰か1人でも逃げ切ったグループが勝ちだ。もちろん、時間までに全員捕まえたら警察側の勝ちだぞ。……ということで、警察側やりたいグループはいるか?」


 すると、先生の問いかけにすぐに反応したグループが1つだけあった。

 手を挙げていた4人組を見て、誠一郎が絶望したような声をあげる。

 

「げっ、あいつらかよ……」

 

「あの4人に何かあるの?」

 

「あいつら全員陸上部なんだよ。走るの早いに決まってるだろ?」

 

「……あはは。見つかったら終わりじゃん」

 

 あの陸上部たちは公園での遊びを練習代わりにでもする気なのか。

 自分の体力を考えると相手をするのは難しい。……というか、たぶん体力の問題ではない。

  

「……心配しないで!」


 俺たちの不安を察して、宇月さんが自信気な様子で励ましてきた。

 

「なんといっても今回はグループ戦。いつもは敵同士だった私と松村くんが同じグループなんだから、絶対大丈夫だよ」

 

「明澄と蒼汰くんはいつも敵同士だったんだね」

 

「……き、昨日の敵は今日の友って言うしねっ」

 

「今までは友達じゃなかったんだ」

 

「……と、とにかくっ、私たちならだいじょーぶ。松村くんが捕まったら必ず私が助けてあげるからね……!」


 

 

 ……そして約15分後。ケイドロが始まって少しの事だ。俺と誠一郎と天羽さんの三人は、身を隠しながら遠目に牢屋がある方を見ていた。


「いの一番に捕まっちゃったね」

 

「あれはあいつが悪い」

 

「うん、たしかに宇月さんが悪い」


 俺たち三人の視線の先……そう、牢屋の中には、今にも泣きそうな顔で三角座りしている宇月さんが一人ポツンと取り残されていた。


「明澄のこと助けに行った方が良いかな?」

 

「いや、牢屋で反省する時間も必要だろ」

 

「うん、それは俺も同意」


 宇月さんがこんなに早く捕まってしまった理由、それは隠れなかったからである。……この遊び、普通は初手で隠れないという選択肢は浮かばないと思うのだが……。

 彼女は「陸上部と走るの勝負したい!」といって最初から隠れなかった。それが宇月さんという生き物なのだ。

 

「……まぁでも、今見張りの陸上部いないし、助けるチャンスではあるよね」


 牢屋に見張りがいないなんて、宇月さん1人では人質としての価値も無いということかな……。


 

「仕方ないから行ってくるよ」

 

 俺は周りを見渡しながら牢屋の方へ向かった。

 念のため警戒しながら歩いていたが、本当に警察らしき人影はない。

 電灯のふもとには、木の枝で囲って作られた大きな牢屋に宇月さんが寂しそうに座っているだけだった。


「あっ松村くん!信じてたよ!」

 

「宇月さんが俺を助けるんじゃなかったっけ?」


 俺は座っていた宇月さんに手を差し伸べた。

 

「え、えへ。そこは持ちつ持たれつということで……」

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