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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第20話 後ろから目隠ししてくる人って大体見当がつく

 俺と天羽さんは歩くスピードを緩め、少しずつ列の後ろの方へ後退していった。


「天羽さんはさ、委員長が誰と仲良いのか知ってる?」


「ううん、知らないの。私も何度か話しかけた事はあるんだけどね、委員長って基本1人でいるし、人を避けているような感じだから……」

 

「んー、そうかぁ」


 今回の作戦、委員長の顔を見るどころか、コミュニケーションをとること自体が難易度高そうだな。


「でもね、恥ずかしがり屋なだけで、きっといい子だと思う!」

 

「そうだね。俺も話したことはないけど、誠一郎が認めてるんだからきっといい子だよ」


 2人で委員長の事を話しながら歩いていると、ちょうど近くにいた女子2人組が話しかけてきた。


「あ、友梨乃ちゃん、その髪型めっちゃ可愛いね!」

 

「え?えへへ。ありがとっ」


 天羽さんの髪を褒めた女子生徒2人組は、同じ1-Bのクラスメイトだ。名前は覚えていないが、どちらも顔を見たことがある。


「ね、松村くんも可愛いって思うでしょ?」

 

「……え?あぁ、うん。よく似合ってると思うよ」


 ……なんでみんな俺に感想を言わせるんだ。

 本人を前にして恥ずかしいからやめて欲しい。

 

「ねぇねぇ、友梨乃ちゃんたちさ、もしかして鈴さんの話してた?」

 

「あっ、聞こえちゃってた?実は委員長がどこのグループなのか気になってたの」

 

「鈴さんなら、私と同じグループだよ?」


 女子2人組の片方が手を挙げた。

 おぉ、欲しかった情報が自ら飛び込んできたではないか。これも天羽さんのおかげか。

 

「……ん、でも委員長は一緒じゃないんだね」

 

「うん、そうなの。私たちも一緒に行こうって誘ったんだけどね。委員長としてクラスの後ろにいないといけないからって、最後尾にいるんだよ。付き合うよって言っても、気にせず先に進んでてくださいって言われちゃってね」

 

「そうなんだね……」


 心配そうな顔をしている天羽さんと顔を合わせる。

 彼女が気にかけているように、俺も委員長の行動は少し気になるところだ。色々と遠慮するのは本人の優しさなのだろうが、遠足の時ぐらいはもう少し楽しんでも良いのではないか?


「じゃあさ、私たち委員長と仲良くなりたいって思ってるから、公園に着いたら少し手伝ってもらえないかな?」

 

「うん、いいよ!何すれば良い?」


 天羽さんがナイスな提案をしてくれた。同じグループの生徒が協力してくれるのは心強い。

 ……が、この小さな助手はなぜどうぞと言いたげにこちらを見上げているんだ?まさか作戦内容はこっち任せなの?


「……えっと、じゃあ内容は俺から。さっき先生に確認したんだけど、午前中はチーム対抗のケイドロをするらしいんだ。で、その時に…………」


 俺は今考えた作戦を伝えた。作戦というほどのものでもないけど、ケイドロが始まってからのお互いの立ち回りと、こちらのメンバーについて。

 女子生徒は説明を聞くと、協力する事を快くOKしてくれた。


「ありがとう。じゃあ、本番は頼むよ」


 これで今できることはやり終えたな。

 後は公園に着いてから……宇月さん風に言うと、頑張るって感じで頑張るだけだ。

 女子生徒たちにお礼を言って別れると、俺はひと仕事終えた気分になって大きく背伸びをした。


「お疲れ、蒼汰くんっ」

 

「天羽さん、色々とありがとう。良い助手だったよ」

 

「えへ、そうかな?私はなんだかドキドキしちゃったよ」


 そう言って、天羽さんもちょっとだけ腕を伸ばして背伸びをした。


「……いつの間にか結構な距離歩いてるし、少し疲れてきたよね」

 

「そうだよね。私、今向かってる公園ってどこにあるのか知らないから、残りの距離も分からないんだよね〜」



 2人で気の抜けた会話をしていると、突然、後ろから忍び寄ってきた何者かの手によって天羽さんの目が隠された。


「まぁ〜だまだ遠足は始まったば〜かりだよぉ〜ん」

 

「……もうっ、明澄、そんな変な声出しても分かるんだかからね?」

 

「えぇ?こんなすぐにバレる!?」

 

「他にいないでしょ?」

  

 目隠ししてきた犯人は、もちろん宇月さんだ。

 宇月さんは自ら目隠しの手を外すと、振り返った天羽さんに爽やかな笑顔を見せた。


「ただいまっ」

 

「うん、おかえりっ」


 登校の時もあんなに走っていたのに、相変わらず元気だなぁ。


「宇月さんのことだからすぐ追いつくと思ってたけど、意外と遅かったんじゃない?」

 

「チッチッチ。松村くん、私がただ早足で歩いてきただけだと思ったでしょ?違うんだよ、実は私も頑張って情報収集してたんだよ」


 彼女は人差し指を立てながら自信満々といった顔をしている。


「おぉ!じゃあ明澄、何してきたの?」

 

「えっとねー、委員長の後を付けてきたんだよ」

 

「……ストーカーじゃん」


 天羽さんの言う通り!それはストーカーだ。


「ペ、ペン見くんと一緒にしないでっ!」


 よし、後で誠一郎に伝えておこう。

 

 まぁたしかに、さっき聞いた話では委員長はB組の後ろにいるらしいし、ここに来るまでに絶対通るはずだ。接触するチャンスはあるだろう。


「で、どんな情報を掴んできたの?」

 

「それはねぇ……委員長、私より少し背が低いぐらいだった!」

 

「うん、たしかにそれぐらいの身長かもね。……他には?」

 

「あとはー、今日は半袖長ズボンだったね」

 

「うん、たしかにさっき見たときそうだったね。……他は?」

 

「メガネかけてたね」

 

「だろうね」

 

「……以上ですっ」


 ……視覚情報だけじゃん。


「な、ふ、2人ともそんな顔しないでよぉ。委員長ずっと1人で歩いてたから、誰とも話してなかったんだもん」

 

「それなら、後を付けなくても宇月さんが話しかければよかったんじゃない?」

 

「そ、それは……。私まだほとんど話したことないし……」


 そうだった。こう見えて宇月さんは少しだけ人見知りするタイプだった。


「……宇月さん、やっぱりただのストーカーじゃん」

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