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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第13話 食わず嫌いの対義語って何だろう

 宇月さんに頼まれたジュースは自販機でも全部揃うと思うが、一応購買に行ってみるか。

 

 この学校は放課後でも購買が空いているらしい。

 コーヒー牛乳の件もあるし、行ってみれば何か珍しい飲み物が売っているかもしれない。


 購買へ着くと、そこにかつてコーヒー牛乳争奪のために闘った戦場は無かった。寧ろ客など1人もおらず閑散としている。

 人気商品のコーヒー牛乳が売り切れているというだけで、こんなにも人がいないものなのか。

 俺は購買のおじさんと目を合わせた後、冷蔵庫の陳列棚を覗き込んだ。

 まずは天羽さんのオレンジジュース……。さすがに売っているな、決まりだ。

 そして誠一郎は……前にレモンティーを飲んでいたのを見たことがあるし、それでいいだろう。

 

「おじさん、とりあえずコレとコレお願いします」


 俺はオレンジジュースとレモンティーをおじさんの前に置いた。


「あいよっ」


 おじさんが渋めの良い声で返事をする。

 後は自分と宇月さんの分だが……宇月さんはたしか炭酸とだけ言っていたはずだ。


「あの、自販機に売ってないものとかありますか?」

 

「おう坊主!いい質問だな!それなら、この辺りに並べてあるものはほとんどが自販機にないものだぞ!」


 おじさんはやっと仕事が来たかというように嬉しそうに返事をした。

 この時間、たぶんお客さんがいなくて暇だったんだろう。


「この学校の生徒たちは人気のコーヒー牛乳ばかり目当てにしているが……他にも珍しい商品がいっぱいあるんだぞ。何せ、全部ワシが仕入れてるからな!」

 

「それは気になりますね」


 おじさんはハッハッハと高らかに笑った。

 これまで昼休みに来た時はおじさんも忙しそうだったため全く分からなかったが、こうして1対1で話してみると意外とフレンドリーな人らしい。


「ちなみに、炭酸で何かおすすめってありますか?」

 

「おう、それならなぁ……このパッチリサイダーと、スパークリングそば茶だな!」


 パッチリサイダー……なんだか目が覚めそうな名前だな。気になる。

 スパークリングそば茶は……なにそれ。これはこれで気になる。


「んー、じゃあ1つずつください」

 

「まいどっ!」


 おじさんは俺からお金を受け取ると、元気よく返事をした。

 気になったから両方買ってしまったが、さすがにサイダーは変な味しないだろうし……俺は残った方を飲めばいいか。

 

「……しかしやるなぁ坊主。このスパークリングそば茶を買ってくれたのは坊主が初めてだぞ」

 

「え、それなのにおすすめしたんですか」


 これがビジネスってやつか……。大人は侮れない。


「ハッハッハ。まぁワシも味が気になってな。飲んだら感想聞かせてくれよ!」

 

「いや、おじさんいつでも飲めるんだから……客を実験台にしないでくださいよ……」

 

「不味かったら嫌だろ??」


 よし、どれだけ不味くても美味しかったと言っておこう。


「ところで坊主よ。ワシのことはおじさんではなく、じーさんと呼んでくれ」

 

「あ、はい。……って、何か違いあります?」

 

「おじさんって言われると年齢を感じるだろ?それに、あんまり良いイメージもない。本当は元治郎(がんじろう)って名前を呼んでもらってもいいが……イニシャルでGさんの方がイケてると思わないか?」


 じーさんって、Gさんだったのか。……いや、活字じゃないと分からないぞこれは……。

 

「まぁ、そうですね。なんとなく分かります」

 

「坊主、理解が早いな!……じゃあ味の感想、待ってるからな!」


 おじさん……ではなくGさんは左の口角をあげながら、ようやくお釣りを渡してくれた。 



 俺が4本のドリンクが入った袋を手にぶら下げながら教室へ戻ると、既に宇月さんの席には3人の姿があった。


「えー?明澄、それいっちゃうの??」

 

「いけるいける……ほら、ほら、ほら!」

 

「ちょ、宇月、揺れてるって」

 

「あっ、おっ……セ、セーフ……!」


 3人は俺と宇月さんの机をくっつけた所を囲うように集まっている。なにやら盛り上がっているようだ。


「あ、松村くんありがと!おつかいご苦労さまですっ」

 

「どういたしまして。……で、なにしてるの?」

 

「ジェンガだよジェンガ」

 

「あぁ、ジェンガね。そんなの、この教室にあったんだ?」


 机を覗き込むと、木でできたジェンガのタワーがそびえ立っていた。

 既に複数箇所に穴が空いていて、タワーは気持ち傾いてしまっているように見える。

 

「いやいや、今日のために家から持ってきたんだよ。友梨乃がどうしてもやりたいって顔してたから」


「私そんな顔してない」


 天羽さんが呆れた顔で反応する。……なんというか、丁度持ち運びたくないぐらいの重さ・大きさしてるよなコレ……。さすが宇月さんだ。

  

「蒼汰、それここに置いたらどうだ?」

 

「うん、そうするよ」


 誠一郎に声をかけられ、俺はジェンガの邪魔にならないよう、近くの空いていた机にゆっくりと飲み物を置いた。

 

「わざわざ俺達のために買いに行ってたんだってな?ありがとな!」

 

「ありがとね、蒼汰くん」

 

「それくらい気にしないで。えっと……誠一郎はこのレモンティーで、天羽さんはオレンジジュースね。宇月さんは……」

 

 俺は残った2本……つまり、パッチリサイダーとスパークリングそば茶を見つめた後、宇月さんの方を向いた。


「んー。宇月さん、今日は体育あったから短い靴下だよね?」

 

「え?なんで?そだよ」

 

「じゃあ今日は何の柄?」

 

「それはね〜。……じゃーんっ!ソースカツ丼柄だよ」

 

「……うん、よし、驚かないぞ……」


 そば柄だったらスパークリングそば茶を渡そうと思ったが、ソースカツ丼柄だったとは……。

 

「じゃあ宇月さんはこれで」

 

「え、選び方気になるんだけど…」


 宇月さんは不思議そうな顔をしてドリンクを受け取った。


「お、パッチリサイダー?初めて見たよ、ありがとっ。ジェンガのお供にぴったりだよ」

 

「よかったよかった」

 

 何がぴったりなんだ……?

 まぁとりあえずこれでおつかいは終了だ。


「ささ、松村くん、ここ空けておいたから座って座って」

 

 宇月さんが空いていた椅子をトントンと叩く。


「次、松村くんの番ね!そろそろ倒れそうだし」

 

「……宇月さんの番までは回すよ……絶対に」

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