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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第12話 ルールは守る前に疑え

 フリースロー対決が終わると、俺たちはバスケ部の練習を最後まで見届けた。

 熊キャプテン指導のもと、部員たちが熱心に練習している様子を見て、誠一郎が終始ウズウズしていたのが印象に残っている。

 


「誠一郎、やっぱりバスケ部入るの?」


 教室へ続く廊下を歩きながら、俺は誠一郎に質問した。

 

「おう。テレビでプロがプレーしてるのを見てから、ずっとバスケ部に憧れてたんだ。でも、俺がいた中学校ではバスケ部が無くてな」

 

「なるほど。それで高校生になって真っ先にバスケ部を選んだってわけね」

 

「まぁな!この歳になってやっとバスケができるって思うと、すげーワクワクするよ。実はバスケ部の見学も、もう5回目だし」

 

「5回目って……。どうりであのキャプテンにも名前を覚えられてたのか」

 

「ハハハッ。レギュラー争いはもう始まってるんじゃないかと思って、必死にアピールしてるからよ!」


 誠一郎は白い歯を見せながら爽やかな笑顔で答えた。さすがにレギュラー争いはまだ始まってないんじゃないか……?


「そういう蒼汰は部活決まったのか?」

 

「いや、まだ決まってないよ。なんとなく、運動部以外で考えてるけどね?」

 

「おいおい、先手を打つなよなー。俺がバスケ部誘おうとしてるの分かってて言ってるだろ?このやろー」


 誠一郎が肘でグリグリと小突いてくる。本音を言うとバスケ部も悪くなかったが、時間はあるのだし、まだ考えていてもいいだろう。


  

「ねぇ、二人共!」


 後ろから付いてきていた宇月さんが突然声をかけてきた。ずっと放っておいたからか、ぷくっと頬を膨らませている。


「ん?どうしたの?」

 

「どうしたの?じゃなくて!二人でじゃれ合ってないで私も会話に混ぜてよ!」

 

「悪い悪い。……宇月さんのこと忘れてたわ」

 

「なんだと〜??……ていうかペン見くん、私のことも呼び捨てしてくれていいよ」

 

「そうか、分かった。じゃあ、宇月も。今日は来てくれてありがとな」

 

「えっへへ。私も楽しませてもらったからいいんだよ。……でもごめんねペン見くん。私のシュートを見てバスケ部にスカウトしたいって思ってるかもしれないけど、入部するつもりはないんだよね」

 

「おう、女子は勧誘するつもりないから心配しないでくれ」

 

「ぬ!?!?」


 あっさり断られたな。……宇月さん、逆になんでそんな驚いた顔をしているんだ。



 

  

「じゃあ今日のところはこれで解散ってことで」


 1−B教室に着いたので、俺は二人に別れを告げて自分の荷物を担いだ。その様子を見て、宇月さんが慌てて声をかけてくる。


「あ、松村くん待って!ペン見くんに友梨乃のこと紹介しなくちゃだよ!」

 

「そうか、そうだね」

 

「ペン見くんも会っておきたいでしょ?」

 

「あぁ、もしかして、もう一人のグループメンバーのことか?」

 

「うん、とびきり可愛い私の親友がいるの」


 たしかに遠足で二人が初対面というわけにはいかないだろう。

 ……まぁ俺と違って、誠一郎のコミュニケーション力ならすぐに仲良くなりそうな気がするけど。


「天羽さんなら、たしか今日も書道部行ってるよね?もう教室には寄らずにそのまま帰っちゃったんじゃない?」

 

「うーむ。たしかにその可能性は高いね」

 

「今日はもう時間も遅いし、また天羽さんに声かけておいて、みんなで集まる時間でも作る?」

 

「そだねぇ……じゃあ、金曜日の放課後17時!私の席集合にしよう!遅刻厳禁だからね〜!」


 集合場所、すぐ近くで良かった。



 

 そして約束の金曜日が訪れる……。

 放課後になると、俺は誰よりも早く集合場所へ着いた。……と言っても宇月さんとは隣の席なので、移動などせずとも到着しているのだが。


「ねぇねぇ松村くん」

 

「ん?なに?」

 

「友梨乃とペン見くん、クラスメイトとはいえ今回が初めての顔合わせになるでしょ?」

 

「そうなるね」

 

「ドリンクでも出したほうがいいかなって思うんだけど、どうかな?」


 なんかお見合いみたいだな。

 でも飲み物ぐらいはあった方がいいか。

 

「宇月さん、気が利くじゃん」

 

「ふふん」


 彼女は自慢げな表情でサラリと髪をかき上げた。

 

 天羽さんと誠一郎は当番の仕事で教室にいないし……。用意するなら今のうちか。

 

「それじゃあジュースでも買いに行く?」

 

「うん!でもね、ジュースは一人で買いに行く事にして……。どっちが行くかをこれで決めたいと思うの」


 そう言うと、宇月さんは自分の制服のポケットに手を突っ込んだ……。

 そして、俺の顔面まで数cmという所まで手を伸ばし、例のアレを見せつけてきた。  


「これっ!」

 

「んん??……あ。あの時のスーパーボール……」

 

「そう、松村くんの大切なスーパーボール!」

 

「そういえばそんな設定あったっけ」


 書道部に行った時にあげたやつ、まだ持っていたとは。


「コレにね、私が今からマジックでお顔を描きます」

 

「ほう、お顔を」

 

「で、それがどんなお顔なのかを松村くんが当てるっていうゲーム」

 

「ほう、お顔を」

 

「当てたら松村くんの勝ち、外したら私の勝ちね!じゃあ今から描くよ!」


 ……あ、もう始まったの?


 宇月さんは自分の筆箱から黒のマジックを取り出し、こちらに見えない様に手の中でコソコソと、素早く描きあげた。


「できたっ!……松村くん、どんなお顔だと思う?」

 

「え、ええ?……じゃ、じゃあ……泣き顔とか?」

 

「ふふ、なるほどね〜。それでは〜、いきますっ」


 宇月さんはスーパーボールの何も書いてない面を表にして、デーデンッデーデンッと口ずさみながらゆっくりと回し始めた。

 

 俺はその小さなスーパーボールに顔を近づけた。じーっと見つめていると、回されていくボールの裏側から、少しずつ何かが見えてくる。

 ……そして、その顔は割と早めにこちら側に現れた。


「デデンッ。ざんねんっ、キス顔でした〜!」

 

「くそっ、外した!」


 なんだこのゲームは。


「じゃあ、友梨乃はオレンジジュース、私は炭酸で!」

 

「はいはい」

 

「ペン見くんの分は松村くんチョイスでよろしくねっ」

 

「わかったよ、行ってくる」


 俺は渋々立ち上がって教室後方の出入り口に向かう。そして、少し歩いたところで振り返って宇月さんに問いかけた。 

 

「今のゲーム、俺、不利じゃない?」

 

「えへへ、ごめんね、バレた?」


 宇月さんはペロッと舌を出した。


「ちゃんと後でお金は渡すから!よろしく頼みますっ」


 笑顔で敬礼する宇月さんに対し、俺は呆れ顔のまま教室を出たのだった。

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