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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第100話 懸賞金>バイト代

 ポッキーゲーム(仮)が終わると、いつの間にか新幹線は発車しており、車窓からは見慣れぬ景色が広がっていた。


 自分達の後ろの列は、誠一郎と委員長、それに福徳さんの席だ。

 福徳さんは2人に余計な事を言っていないだろうか。少しだけ心配になる。

 俺が最初に会った時も、宇月さんの彼氏だと勘違いしていたし……何よりノリが軽いからなぁ。


 しかし心配無用だったようで、後ろからはアハハと笑い声が聞こえてきた。仲良くやっていそうで何よりだ。

 たまに聞こえてくる「こはるん」や「せーちん」という単語も、たぶん福徳さんが考えたあだ名なのだろう。やはり少し分けてほしいぐらいに、彼女はコミュ力が高い。



 新幹線でしばらく移動した後は、福徳さんの案内で普通列車を乗り換え、乗り換え、乗り換え。

 俺たちは大きな荷物を引きずりながら、知らない駅や知らない街をいくつか跨いでいった。田舎の小さな街を抜け出して生まれた冒険心が、珍しい看板や植物を見るだけでグリグリとくすぐられる。


 

 そしてようやく到着したのは、港近くの駅。

 駅を出ると、目の前には青々とした瀬戸内海の海だ。優しく揺れる水面が、暑い日差しをこれでもかというぐらい反射させていた。



 

「……海!綺麗だね!」



 海の方に駆け出し、それを初めて見たかのように目をキラキラさせたのは天羽さんだ。

 


「でもゆりのんの瞳の方が、もっと綺麗だぜ?……って、そーたんが言ってるよ」


「えぇ?」


「いや、俺"ゆりのん"なんて呼び方してないから……。それより福徳さん、もしかして俺たちあのフェリーに乗るの?」


「そうだよ!いいでしょ! ちなみに1日3、4回しか出港しないから、この便に乗り遅れたら次は夕方になっちゃうからネ~。私はチケット受け取ってくるから、2人とも、みんなが乗り遅れないように見張っててね?」



 それを聞いた俺と天羽さんは、自然と駅の方に視線が向いた。

 視線の先では、まだ駅舎の辺りにいる宇月さんが、何やら誰かの顔写真が載った掲示板のポスターを眺めている。



「ふふっ。蒼汰君、一番心配な子は一緒みたいだね」


「あはは、ほんとだ。でもまぁ、誠一郎と委員長が近くにいるし、さすがに大丈夫だよ」


「そうだよね。ふふっ。……そういえばさ、夏休み入ってからどうだった?」


「どうだったって……うーん、宿題、あんまりやってないからヤバいかも」


「そーいう事聞いたんじゃないんだけどなぁ?」



 彼女はそう言ってつまらなさそうに海を眺めたが、天羽さんらしく、口元は優しくUの字になっている。

 


 そのまま蒼い景色を見ながら2人で少し話すと、チケット売場に行っていた福徳さんが全員分の券を受け取って戻ってきた。

 彼女の声掛けで、6人全員が無事に時間通りフェリーに乗船する。もちろん、俺たちが心配していた宇月さんも一緒だ。



 

「ふぅ。全員無事に乗船できたね~」


「福徳さん、何から何までありがとう」 


「そうだよね。ここまで香ちゃんに頼りっぱなしだったから、申し訳ないぐらいだよっ」

 


 フェリーの座席に着いた後、俺と天羽さんが福徳さんを労う。

 まんざらでもなさそうな福徳さんは、デヘデヘと頭の後ろを掻きながら答えた。

 


「いやいや、手伝いに来てもらってるのはこっちだし。何回も来てるから、これぐらい何でもないって~! ていうかさ、2人とも何か少し似てるよね? 考え方?空気感?……なんかよく分からないけど似てる気がする!」

 

「そ、そうかなー?そ、そんなことはないと思うけど?ねぇ?蒼汰君」


「う、うん。そんな事はないんじゃないかな」


「いやいや、似てるって~。……んじゃ、私トイレ行ってくるからさ、2人は海でも見に行ってきたら? このフェリー、デッキへの出入り自由だし、風が気持ちいいよん? ほら、行った行った!」



 謎に(そそのか)してくる福徳さんに言われるがまま、俺と天羽さんは一緒にデッキの方へ向かう。

 出るときに宇月さん、誠一郎、委員長の近くを横切ったが、3人は席で仲良くお喋りしているようだった。

 


 デッキに出た後、落下防止の柵に手を掛けた天羽さんは、俺の方を見て苦笑いする。



「なんかごめんね。香ちゃんの勢いに流されちゃって」


「いや、全然? 海が近くで見られるし、出られてよかったよ」



 俺も彼女の隣で、柵に肘を置いて水平線を眺める。



「それならよかった。ねぇ、そういえばさっきは聞きそびれちゃったけどさ、明澄とのデートはどうだったの?水族館行く予定だったよね?」


「いや、あれはデートっていうかただのお出掛けだけど……。まぁ、楽しかったよ」


「そかそか、よかった♪ でもそんな言い方するってことは、まだ付き合ったりはしてないってこと?」


「……ま、"まだ"ってのはちょっと気になるね」


「ふふっ。じゃあ進展とかあった?カップルになったとか!」


「天羽さん、聞いてることさっきと一緒じゃん。……でも、付き合ったりしてないよ。今も普通に友達」


「そっかぁ、そうだったんだ~」


 

 根掘り葉掘り聞いてくる天羽さんは、柵に捕まって体を揺らしながら楽しそうに笑っている。

 

 この反応、デート1回目でも告白したり付き合ったりするのが普通なのか?俺の恋愛バイブルでは、3回目のデートで告白するのが本気の証だったのだが。



「今となっては私の方が告白の先輩だからね~。アドバイスとか欲しかったら言ってね。 反省すべき所がいっぱいあったし、いい助言できるよきっと」


「う……そ、それは大丈夫、だよ」


「そう? まぁ冗談だよっ、ふふっ。……あの告白、私には大事な思い出になってるからね」



 天羽さんはそう言って揺れていた体をピタリと止め、俺の目を見つめた。

 


「まだ蒼汰君を想う気持ちはあるんだけど……それでもちゃんと、私は心の整理できてるよ!……だから、蒼汰君を応援するからっ! 絶対絶対、私の事なんて気にしちゃダメだからね! ガンガンいっちゃってね!」



 さすが天羽さんだ。

 言葉にすらできなかった俺の想いを察して、前向きになれるよう声をかけてくれる。


 彼女の気持ちを無下にしないよう、俺はきちんと自分の気持ちに向き合わないといけないな……。



 それから2人で少し水族館の話をして、デッキから一緒に中に戻った。

 中に入る時、外に出ようとした宇月さんとすれ違う……。


 

「……あ、あぁ、2人とも、外にいたんだねっ」



100話到達しました。ここまで読んでくださった方、本当に本当にありがとうございます!


自分ですごく寂しい気持ちになってしまっているのですが、物語はこの島での話で最後にする予定です。

最後まで駆け抜けますので、もう少しだけお付き合いいただけると嬉しいです……!!

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