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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第99話 天羽の1ミリ

「ね、ねぇ宇月さん。俺とする方が良くないと思うよ……。天羽さんとしてくれる分には……いや、それもあれか。と、とにかく、朝からポッキーゲームはやめよう。いや、夜ならいい訳ではないけど……」


「んん?松村くん、何ぶつぶつ言ってるの? ポッキーって朝から食べちゃダメなの? 太る?」



 それを聞いて呆れた天羽さんが身を乗り出し、俺を挟んで口を出した。


 

「明澄……ポッキーはいつでも太るよ。あと、ポッキーゲームってどんなの想像してる?」


「え? 指定された長さを残すようにポッキーを食べるアレじゃないの?」



 な、なんだ。宇月さんが言ってるポッキーゲームは、俺と天羽さんが想像していたものとは全く違ったようだ。2人で顔を合わせ、ホッと胸を撫で下ろす。

 逆に宇月さんの言う"アレ"は知らないけど。



「明澄、たぶん一般的にポッキーゲームっていうのはそれじゃなくて……。あ、後で自分で調べてみてね……。でも、明澄の言う長さ競うやつならいいよ。やっぱり私も参加する」


「やったー!松村くんもいい?」


「いいよ。また何か賭ける?」


「いいねっ。……じゃあ、3位の人は罰ゲームで好きなタイプ発表するって事にしよう」



 そう言いながらポッキーを配る宇月さん。

 既にそれを受け取ってしまった俺と天羽さんは、今さらNoと言うことができなかった。 

 まぁ、好きな人を発表しろと言われているわけではないし……そこまで身構える必要はないのだけれど。


 少し緊張し始めた俺たちには全く構わず、宇月さんは「じゃあ5センチになるように勝負ね~」とトントンと進行していっている。


 5㎝……。手のひら全体が20㎝ないぐらいだから、これぐらいだろうか……。

 食べる前に一度長さをシミュレーションしておく。


 何か横から「あっ、美味しくて全部食べちゃった!もう1本!」とかいう声が聞こえてくるが、こっちはそれどころではない。

 真剣にポッキーと向き合い、こんなもんかと思われる長さまで少しずつ食べ進めた。ポッキーをこんな真剣に観察したのは初めてだ。

 


「よし、俺はこれでいく」 


「なんかちょっと長いような気がするけど……私もこれにするっ。……でも明澄、これどうやって長さ測るの?」


「それはもちろん、これで!」

 


 いつの間にか自分の5㎝ポッキーを完成させていた宇月さんは、大きなリュックをガサゴソと漁り、よく学校で使っているマイ定規を取り出した。


 

「え、定規なんて持ってきてるの?」


「うん?何かに使うかもと思って。あとトランプとかも持ってきてるよ?」


「そ、そうなんだ……」


 

 今回に限ってはトランプの方が場に相応しいぞ……。というか宇月さんのこの荷物の量、絶対もっと要らないもの入ってるでしょ。



「よし、じゃあ早速測っちゃうね~。私のは……5.3センチ! いい感じかもっ」



 ワクワクした様子の宇月さんは、次は俺に定規を渡してきた。持っていたポッキーを近づけ、じっと目盛りを読み込む。



「お、俺も5.3㎝だ。結構いい線いってるじゃん。てことで、天羽さんが1位か3位だね」



 とりあえず悪くても引き分けなのでひと安心だ。

 緊張した面持ちになっている天羽さんへ、使い終わった定規を渡す。


 

「よしっ、じゃあ私は……」



 真剣な表情で定規を当てた天羽さんは、目盛りを見てすぐにしょぼくれた顔になった。


 

「ご、5.4センチ……」


 

 可哀想に。彼女の負けだ。

 

 

「はいっ、友梨乃が罰ゲームね~!」


「えっと、罰ゲームって……」


「好きなタイプ発表だよっ」


「ほ、ほんとに言うの??」


「もちろんっ」


「ええっ、そんなの明澄も蒼汰君も気にならないでしょ」


「そんなことないって~」


 

 天羽さんの気持ちは分かる。そんなのむやみやたらに言いたくはない。

 でも、実はこうして答えを引っ張っている方がどんどん言いづらくなるものだ。周りの注目とか期待も、そのためらった時間で段々膨れ上がってしまう。


 俺は彼女のために、できるだけ興味なさげなフリをして自分のポッキーを眺める。

 すると、突然宇月さんが両手で俺の頬を挟んできた。そして驚く暇もなく、自分の首は半強制的にグリンと天羽さんの方に捻られた。



「ほらっ、松村くんも興味あるって」


「へっ?……ふぁ、ふぁい……ありまふ」



 興味ないと言うわけにもいかず、宇月さんの誘導通りに答える。

 首を捻られた先にいた天羽さんは、チラッと俺の方を見たあと、すぐに視線をそらしてこう答えた。



「ま、まぁいっか……。好きなタイプぐらいなら、言っても減るもんじゃないし……」


「そうだよ、何も持ったいなぶる事ないって~。それでそれで?どんな人がタイプなの?」


「えっと……」



 その頃には俺の首は解放されていたのだが、なんとなく天羽さんの方を眺める。すると、彼女は再び一瞬だけこちらを見てから質問に答えた。



「や、優しい人……かな。一緒にいて落ち着くけど、話すのは楽しくて、たまにちょっとドキドキしちゃったり……。……あと、誰にも見えないところでも頑張ってる努力家の一面もあって。……そ、そんな感じの人かなっ」


「……な、なんか、友梨乃のこういう顔、初めてみたかもっ」



 フンフンと興奮気味の宇月さんと「ふ、普通の顔だよっ」と恥ずかしがっている天羽さん。2人の間に挟まれた俺は、少し体が熱くなっていた。


 ……分かっている。天羽さんはありきたりな答えで、ただ好きなタイプを言っただけだ。

 でも、つい考えてしまう。

 告白されたのだから、少しぐらい自分にも当てはまるのでは? もしかしたら自分の事を考えて言ってくれている部分もあるのでは?……と。

 

 しかしそんな自惚れた気持ちは、友達として関係を続けてくれている彼女に失礼だ。


 俺は5.3㎝になったポッキーを食べながら、2度と思い上がらないぞと心に誓った。

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