「俺、バカだからよくわからねぇけどよ……」で犯人当てる奴
※推理は適当です。
僕の名前は天馬壮一、高校生タンテイだ。
現在、修学旅行で泊まったホテルで殺人事件が起こってしまった。
みんなロビーに集まっている。
しかも、学校の人+従業員で、あまりにもヨウギシャが多すぎる!?
一体、どうすれば……!
悩んでいると、とぼけた声が聞こえてきた。
「俺、バカだからよくわからねぇけどよ、あみさ先生が犯人じゃねえのか?」
あみさ先生というのは、古文の先生である。
クラスの人たちからは『優しい先生』として認識されているような人間だ。
なので、こんなことを言うと……。
「てめえ、あみさ先生がそんなことするわけねえだろ!?」
「ふざけんなよ!冗談ってレベルじゃねえぞおまえ!?」
「あ、あみさ先生は、優しい先生ですよ……」
もちろん、外野からとんでもない非難が飛んで来る。
ちなみにあみさ先生自身も抗議。
「もう戸部君!人のことを犯人扱いしないでください!?」
……ははーん。
推理小説によくある仲間割れの展開か。
でもどうして彼はあみさ先生が犯人だと思ったのだろうか…?
僕はどうしても気になり、外野を押し除けて聞きに行った。
「ねえ、どうしてそう思ったんだい?」
「え?何がだ?……俺は犯人じゃねーぞ!?」
「あ、違う違う。どうしてあみさ先生が犯人だと思ったんだ?」
「ああ。だってまず被疑者からはタバコの匂いがするだろ?学生はもちろん吸わないし……ホテルの人と引率の先生の中でタバコを吸う人はあみさ先生だけだ。次に被疑者はタバコを吸わない。歯の黄ばみがないし、聞き込みでも吸っていたとこを見ていた人はいない。つまり誰かがヤった後にタバコを持たせたってことだ。最後に……」
そういうと、彼は複数の写真を胸ポケットからだす。
その中には、今回の被害者とあみさ先生が腕を組みながら歩いている瞬間。
キスしている瞬間にハグしている瞬間、などなど。
「あなたの知り合いで、ここに勤めている人にもらった……ここから見るに、あみさ先生は被疑者と何らかの接点がある!……ッと思うんだ。俺、バカだからよくわかんねぇけど」
「もうわかってるだろ!?」
探偵の僕より圧倒的に推理力あるぞ!?
最初に『高校生タンテイさ……』って言ってた僕がバカみたいじゃねえかよ!!
すると、推理を聞いたあみさ先生が徐に立ち上がった。
「……あの人が渡した、か。はぁーあ」
そして、残念そうに血のついたナイフを取り出した。
……じゃねえよ!?
やばいやばいやばぁい!
「助けて俺バカ君!このままじゃやべえよ!!」
「………」
俺バカくんは黙ったままあみさ先生を見つめている。
瞬間、俺バカ君の体がぶれて見えて……。
「俺バカだからよくわかんねぇけどよ……こういうキャラは大体強いって相場が決まっているだろ?」
瞬きをする暇もなく、あみさ先生は取り押さえられた。
めっちゃ強い……。
もうあいつ一人でいいんじゃないか?
なんて考えているとピーポーピーポー、と音が近づいてくる。
どうやら誰かの通報が届いたみたいだ。
「終わったか……」
こうして僕らは、事件から解放された。
戸部蒼は男子高校生である。
昭和のヤンキーのような格好をしていて、顔の圧がとても強い。
だが、その正体は……“察しのいいバカ”である。
しかし、そんな彼でも困惑していた……!
(何で、天馬はあみさ先生の足を舐めてるんだ……?)
さっきまで協力していた男が四つん這いになりながら、足を舐めている。
その代わりようが、理解できなかったのだ。
「何してんだよおめえ!」
「え?俺バカ君やだなー。推理だよ」
「どう見ても違うが!?」
「え、だって僕『タンテイ』ですよ?舌でテイストして推理するんです」
はぁ。
まあ、そういうのもあるのか……。
戸部は考えるのをやめた。
というよりかは、理解ができなかった。
こればっかりは性癖の問題なので、バカとかは関係ないだろう。
警察が到着し、あみさ先生と天馬が連れて行かれることになった。
すると、あみさ先生が話に来る。
「……戸部君」
「何すか?」
「私は、裏切られてこんなことを起こした……あなたは気をつけて」
そう言って、涙を浮かべる先生。
顔とふくらはぎがべちょべちょになっている。
結局、被害者との間に何があったのかは話してくれなかった……。
そうして連れて行かれるあみさ先生を見送った後、後ろから連行されている天馬。
「ふっ……俺バカ君」
「何すか?」
「……僕が伝えたいのは一つ、真実はいつも」
「言わせねーよ!!!」
有名な探偵の決め台詞を言えずに、連行されてゆく天馬。
かくして、事件は解決されたのだった。