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稀人の暴君~居場所を奪われた俺はチートスキル『斧』で嫌なやつみんな処刑するよ!~  作者: 万和彁了


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第1話 迫害の日々

何処にも居場所がない人間はどうすればいい?


 何かを決めつけられる人間はどうしたらいい?



 俺は決めつけられる人間で。

 俺は奪われる事しか知らず。

 俺は愛を知らなかった。



 そして騎士にも。

 王子にもなれず。







 暴君に堕ちていったのだ。


















【Vanderley The Tyrant】













「でもブラジルって微妙じゃね?」


 俺が教室に入ろうとしたとき、そんな女子たちの声が聞こえた。


「わかるー。アメリカとかヨーロッパならいいけどねぇ」


「あんたの幼馴染の祚賀(そが)もさ。ハーフって言っても外れだよね。親は白人じゃないんでしょ?」


「てかブラジル人って何色?」


「さあ?」


 話題は俺のことらしい。俺は母親がブラジル人だ。足が震える。その会話の内容に感じる無邪気さに特大の暴力性を感じた。


「ラテン系なのになんか暗いし。キャラ薄いよね。サッカーとか得意ならまだわかるけど。あはは!」


 ブラジル人だって別にみんながみんなサッカーをやるわけでもないだろう。そんなことを言われたって俺にはどうしようもない。


恋和緒(れなお)もさぁ。そう思わない?」


 絃梯(いとはし)恋和緒は俺の幼馴染だ。小中高とずっと一緒だった。


「私は…」


「目の色も微妙じゃん。緑なのか金色なのか茶色なのかよくわかんない変な色してるし」


「混ぜる色間違ったんじゃね?ハーフなのに青とかじゃないのなんかだっさ!!きゃはは」


 胸が痛い。俺は自分の瞳の色がコンプレックスだった。光の加減で色味が変化する。小さいころから揶揄われ続けたし、今でもそうだ。


「おっす!何話してんの?」


 クラスのリーダーでサッカー部の浅見(あさみ)春馬(しゅんま)の声がする。


「祚賀の話!ハーフだけど外れだよねって」


「ああ!あいつね!この間英語の授業で発音下手って先生に言われてた!ハーフなのにな!」


 英語は得意じゃない。ポルトガル語は出来るけど。そもそも母の祖国のブラジルはポルトガル語だ。浅見のその認識自体が意味わからない。


「レナオちゃんもハズレなんかといっしょにいると青春の浪費になるぞ!あんな奴と話すのなんかやめなよ!」


 俺と過ごす時間は浪費でしかない。そう断じられた。教室に俺の居場所はない。レナオも庇ってはくれない。俺は静かにその場を後にして家に帰ることにした。



















令勅(はるとき)。あなたって本当に綺麗な顔ね…もっとよく見せて…」


 ラブホのベットの上で叔母が俺の上に跨りながらキスをしてくる。俺はそれを拒めない。俺は両親を小学生の頃にブラジルの犯罪で失った後、叔父夫婦に引き取られた。そしてすぐに叔母は俺に手を出して来た。男なんだから拒もうと思えば拒めたはずと言われるかもしれない。だけど子供だった俺は家から追い出されるのが怖くて従うしかなかった。


「ほんと素敵!ああ。あなたみたいなかわいいハーフの子が欲しいわ!あん!うぅん!」


 叔母の祚賀真亜理(まあり)は児童虐待の加害者だ。だけど俺がそれを警察なんかにタレこんでも信じてもらえないだろう。叔母は国会議員で美人で実家もお金持ちだ。揉み消されるに決まってる。


「やっぱり子供は可愛い方が良いわよね。下の子もあなたに似てきてとても綺麗になったわ。夫似の上の子が可哀そうになるくらいにね」


 叔父夫婦には女の子の子供が二人いる。だけどその下の子は俺の子供だ。運よく目の色は遺伝しなかったからまだバレてないけど、いつかはきっと叔父にバレるだろう。そのとき俺はどんな罰を受けるのだろう。そもそも今この時点で俺は父親なのに何の責も果たしていない。罪ばかりが重くなる。


「きのう夫とセックスしたの。だけどやっぱりあなたを知ってしまうとぜんぜん感じないわ。演技するのもつかれるの」


「そうですか」


「あっ。んっ。実はね。ピル飲み忘れたの」


「ちょっと。まさかまた…?!」


「危ない日だからいっぱいよろしくね」


 そして俺は果てる。怖い。セックスなんて嫌いだ。気軽にこんなことを出来る連中の気が知れない。それを求める連中も。

















 そしてその日はやってきた。学校が突然光に包まれて俺たちは異世界に召喚された。魔王を倒すためだという。そしてステータスをチェックされてランク分けされた。みんな色々なチートを与えられた。レナオは聖女。浅見は勇者だった。俺は兵士という最弱職だった。その上標準ステであり、チートスキルもなし。ただ斧だけは召喚できた。切れ味はいいけどビームが出たりとかはなかった。その日以降学生たちはランクに応じた待遇がなされた。俺はFランクとして最低限の衣食住しか保証されなかった。帰りたくもなければここいたくもない。そんな生活を強いられた。浅見とレナオは勇者パーティーて活躍している。俺は兵士として魔王軍の雑魚を相手に必死に命がけで戦った。


「ハル君。大丈夫?」


 雑魚相手にボロボロになった俺をレナオが見舞いに来た。その時レナオの再生魔法で俺のけがは一瞬で治った。


「なにかよう?」


「ようがなきゃきちゃだめなの?」


 高校に入ったあたりから俺たちの距離は遠くなった。美しく成長したレナオのことを狙う男子は多かった。彼らは俺に敵意を持った。それで一瞬で学校では孤立した。何をやっても馬鹿にされる日々。その元凶はこの子にある。


「俺は言ったよ。よほどのことがない限り話しかけるなって」


「でもぉ」


「お前が悪いわけじゃない。だけどお前が傍にいると傷つくことばかりなんだ。放っておいてくれ」


 レナオは押し黙る。俺は背中を向ける。もう帰って欲しい。だけどレナオは俺の布団の中に入ってきた。服を脱ぐ音が聞こえた。


「やめろ」


「ハル君ならいいんだよ。おっぱいもおしりもあそこも全部…」


「気持ち悪いんだよ!」


 俺はレナオをベットから落とす。半裸のレナオはショックを受けたようで悲しそうな顔で俺を見ている。


「俺はセックスが嫌いなんだよ!」


「嫌い…?え?ハルくん…したことあるの…?」


 思わず激高して口がすべった。気まずくて目を反らす。


「だれ?だれとしたの?ねぇだれなの?!なんで私じゃないの?!」


「お前には関係ない!」


 知られたくなかった。俺の身体は叔母に汚された。それをこの子には知られたくなかった。レナオは泣き出す。そして服を来て、部屋から去っていった。


「女の身体はみんな柔らかいんだな。反吐が出る」


 その柔らかさが俺には憎くて気持ち悪かった。







 俺はFランクだが、召喚された勇者一味の一人ではある。俺たちを召喚した王国にそれなりの要望を出すことが出来た。


「兵士を5人?まあ構わないが」


 担当の役人は俺のことを胡散臭そうにみていたけど、スルーする。俺は王国から兵士を5人与えられた。直属の部下である。そして次に生産チートの連中に銃を作ってもらった。モンスターにも攻撃力が発揮される魔力によるエンチャントがかかったやつだ。俺は兵士たちにチート銃を持たせてひたすら訓練を行った。彼らと一緒に建物へと突入する訓練、対モンスター戦闘、対人戦訓練、様々な技能を身に着けた。そして俺は自分だけの特殊部隊を作り上げたのだ。特別強襲偵察隊と俺は名付けた。










 そしてその日はやってきた。魔王四天王の一人が巣くう居城。そのはるか上空を俺たち特別強襲偵察部隊を乗せたドラゴンが飛んでいる。俺たちはそこから何の魔力も帯びていないパラシュートで白に向かって降下した。降り立った場所は白の中にはパラシュートをすぐに片づけて安全を確保し、城の内部へと突入した。俺たちの狙いは魔王四天王の一人。ではない。城の地下にある魔導リアクターだ。これは龍脈からエネルギーを吸って魔王城へとエネルギーを送信しているらしい。


「ついた。リアクター室の前だ。全員。狙え」


 部下たちは物陰から銃をゴブリンの歩哨たちに向ける。


「撃て」


 サイレンサーのついた銃はぱしゅっという鈍い音だけを出して弾を放った。ゴブリンたちはこの銃撃で全員が即死した。そして俺は頑丈に閉じられているリアクター室の鍵を斧で破壊して中に静かに突入する。そして中で働いている人型のモンスターたちを静かに暗殺していき、リアクターの目の前に辿り着いた。


「すげぇ。俺たちマジでここまで来れたんだ!」


 部下たちは静かにだが喜んでいた。彼らも下っ端兵士として退屈で無気力な日々を生きていた。この達成感は並大抵のものではないだろう。


「このまま持ってきた爆薬をセットする。時間は一時間」


「「「「「了解!」」」」」


 俺たちはリアクターにてきぱきと爆薬をセットする。そしてタイマーを起動させて、部屋から出る。忍び足で城の中を移動し、モンスターを適時処理しつつ城を脱出することに成功した。そして腕時計を見る。


「5・4・3・2・1」


 どぅおおおううんと轟音が響き渡る。城は地下のリアクターが吹っ飛ばされて木っ端みじんに砕けて焼け落ちた。これで魔王四天王も一緒に死んだだろう。迎えのドラゴンがやってきて俺たちはそれに乗り、作戦は完了した。俺たちは互いに手を叩き合い作戦の成功を祝った。











 魔王四天王撃破の報に世間は大騒ぎになった。魔王との戦争に一歩リードしたのだ。人々は希望を見出していた。そして作戦を計画立案し遂行した特別強襲偵察隊は国王より直々に勲章をもらった。


「隊長のお陰ですよ!これで一生の自慢が出来た!」


 貰った報奨金で俺たちは繁華街に遊びに来ていた。部下は口々に俺への感謝を述べる。だがここまでこれたのもこいつらが俺についてきてくれたからだ。俺はそれに感謝している。





 こうして俺は確固たる功績を上げてこの世界に居場所を作った。



 だがそれが悪意を呼び込むなんて思わなかったのだ。




筆者はブラジル系日本人です。

序盤の会話の言葉の一部は筆者がリアルに言われたことだったりします。

なんというか書いてて辛かった。

でも読んでくれたら嬉しいです。


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