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フォルテューナ・パンタシア魔道具店 ~店主の私が守護天使に連行されるまでの顛末~  作者: ゆうひかんな
三章 天国への階段

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第二話


 もう無理だわ。このまま消えてしまいたい。


「リリス、今聞いたことはお父様達には内緒にしてちょうだい」

「で、ですが、これはいくらなんでも!」

「いいの、行くわよ」


 ジュリエッタは踵を返した。自分の情けなさに涙が出そうだ。ここまでバカにされたのなら文句の一つも言って許されるだろうに……それでも強気になれないなんて、どうかしている。

 ジュリエッタは婚約者から心底で嫌われるような人間だと両親には知られたくなかった。特に父親はリカルドを気に入っているから彼のいうことならば信じてしまうだろう。上手いこと丸め込まれたら、口下手なジュリエッタには太刀打ちができない。そして調子に乗ったリカルドによって、ジュリエッタの扱いはもっと酷くなっていくのだ。

 

 限界だ、それだけは間違いない。


「ごめんなさい、少し一人にさせて」

「ジュリエッタ様⁉︎」


 リリスを置いて、小走りに路地裏へと飛び込んだ。


「……ジュリエッタ?」

 

 訝しむようなリカルドの声がした気がするけれど、振り向く勇気はなかった。そのまま走って壁に突き当たったところで、はたと気がつく。


「どうしよう、道に迷ったみたい」


 周囲を見回してみると、全く見覚えのない場所だ。目の前には荒屋があってその奥に教会が見えた。ジュリエッタは吸い寄せられるように教会へと近づいていく。赤茶色の煉瓦を積み上げた壁には青々とした蔦が這って目の覚めるような緑が覆っている。ずいぶんと昔から建っている教会なのね。建物自体は古びているけれど掃除が行き届いているようで汚れている感じはしなかった。なんだか不思議と落ち着く場所だ。

 ジュリエッタは大きく息を吸って、吐いた。清浄な空気が肺を満たして、ささくれた心が次第に落ち着いていく。どこからともなく柔らかな花の香りがして、まるで大自然に包まれているみたいだ。


「素敵な場所だわ」

「ありがとうございます」


 突然、ジュリエッタの背後から声がして振り向くと掃除道具を片手に持った女性が微笑んでいた。彼女の動きに合わせて焦茶色の髪がふわりと揺れる。独特の織目をした紺色のローブが風になびいた。


「いきなりお声がけいたしまして申し訳ありません。もしかして道に迷われたのでしょうか?」

「そうなのです。こちらの教会の方ですか?」

「いいえ。私は近所の者でして、掃除の手伝いをしております。こちらの教会は敷地が広いものですから、修道女様一人では隅々まで掃除が行き届かないのです」

「たしかにそうですわね」


 この広さを一人で掃除するのはたしかに大変だろう。手に持つ掃除道具も教会同様に年季が入っているものだし、彼女の言動にも不審な点はなかった。悪い人ではなさそうだとジュリエッタは胸をなでおろす。こちらを気遣う顔をした彼女は手に持つ掃除道具を端に寄せると、隣の敷地を指した。


「私はフォルテューナと申します。あちらで魔道具店を営んでおりますの。よろしければお茶でもいかがでしょうか?」

「あ、いえ……私は」

「ここまで走ってこられたようですし、お疲れでしょう。それに正直なところ顔色が悪いです。何かつらいことがあったようにお見受けしましたが、違いますか?」

「……っ、それは」

「私のような他人には関係ないことと遠慮なさっているようですが、体調がつらいときに遠慮はいりません。ちょうどお店のお客様もいませんし、お話くらいなら聞けますわ」


 ジュリエッタは警戒心が強いから、いつもの精神状態ならきっぱりと断っていただろう。でも今の混乱した状態ではそれが最善なのか判断がつきかねた。それにこの女性には不思議な魅力があって、何となく話したい気にさせる。……お茶には口をつけないで、話すだけならいいか。迷った末に、ジュリエッタはうなずいた。


「では、あの外にあるベンチでもいいですか?」


 店の前にある大きな木の下には、可愛らしい装飾のついた白いベンチが置かれている。きれいに掃除されているようだし、座り心地も良さそうだ。


「実は侍女を連れていたのですが、はぐれてしまって。店に入ってしまうと探せないと思うのです」

「それはいけませんね。周囲を捜索させましょう」


 従業員がいるのかしら? やがてバサリと羽音がして何かが飛び立った。あれは鳥かしら、ずいぶんと影が大きいように見えたけれど? フォルテューナはベンチにハンカチを敷き、お礼を言ってジュリエッタはハンカチの上に腰を下ろした。その隣にフォルテューナは適度な間隔を保ちつつ並んで腰を下ろす。


「それで、何がありましたの?」

「実は……」


 話し始めたのはいいが、ジュリエッタが気がついたときにはリカルドとセーラと、自分自身を取り巻く歪な関係を全て洗いざらい話していた。会話が途切れたところでそれに気がついたジュリエッタは目を丸くする。


「嘘でしょう、全部話してしまったわ」

「それはようございました。ね、話すとスッキリなさいましたでしょう?」

「たしかにそうね」


 彼女はリリスのように話の途中で憤ったりしなかった。ただ淡々と聞くだけなのだが逆にそれがよかったのだろう。一気に心の澱が拭い去られて、気分まで明るくなる。


「ありがとうございます、フォルテューナ様」

「私は平民です。フォルテューナと呼び捨てにしてかまいません」

「では私もジュリエッタと」

「まあ、ですが伯爵家のお嬢様を呼び捨てては侍女の方に怒られてしまいますわ!」

「私が許すならいいのです。それにお友達でもなければ、こんなつまらない話を聞いてもらうのは申し訳ないわ」

「つまらなくはありませんよ、とても大事な話です――――ジュリエッタの将来に関わる、大切な選択ですもの」


 フォルテューナは柔らかな微笑みを浮かべて、首をかしげた。


「ジュリエッタ、あなたにその愛は必要ですか?」

「え?」

「以前のあなたは友人と婚約者を愛していました。ですがその愛はもう、あなたにとって愛とは呼ぶことのできない何かに変わってしまったのです。何かのきっかけがあって、ある日突然好きが嫌いに変わるのは珍しいことではありませんわ」

 

 無神経なセーラへの苛立ち、誠実とは程遠いリカルドへの嫌悪。たしかにジュリエッタが二人に感じる気持ちは愛とは全く別のものだ。二人との関係を疎ましく思うなんて、いつの間に自分はこんな狭量な人間に変わってしまったのか。


「あなたは常々、腹立たしく思っているのではありませんか? 自分は悪くない、なのになぜ自分が折れなくてはならないのかと」


 ハッとしたジュリエッタは視線を下げた。そうだ、だって私は悪くない。悪くないのに、なんで私がこんなに神経をすり減らさなければならないのか意味がわからないの。


「ジュリエッタ、あなたの人生にセーラ様とリカルド様は必要ですか?」

「……ど、どういう意味?」

「あなたの未来を賭けてまで、関係を続ける価値が二人にはあるのでしょうか?」


 自分を曲げてまで二人に歩み寄る必要はない。

 フォルテューナの言葉は、すとんとジュリエッタの心に落ちた。

 

「どうしてもわかり合えない相手は存在します。理解しようと努めるから混乱する。そういう相手とは戦うだけ時間の無駄というものです。それなら関係を断つか、関係が断てないのなら、程よい立ち位置で静観するくらいがちょうどいいでしょう」

「でも……婚約者だから」

「そうですね、婚約(契約)ばかりは私にも如何ともしがたいものです。ですが、もし一歩を踏み出すために勇気が必要なら、きっかけのひとつとして、愛を買い取りましょう」


 愛を買い取る?


「私の店では不用となった商品の買い取りもしております。先日、とある伯爵家が手放した唯一無二の魔道具を手に入れましたの。薬師の適性をはかるというもので、現在では失われた技術が使われているとても希少な品なのです!」


 本当に魔道具が好きなんだな。そう思わせるほどに、フォルテューナはうっとりとした表情を浮かべる。


「使わなくなった魔道具、読まなくなった魔法書、効果のわからない魔法薬、そして……不要となった愛。お客様にとってはいらない物でも、私にとっては宝の山なのです。もちろん、なんでもいいわけではなく買い取る商品は選ばせていただきますが」


 愛を買い取る……そんなことができるのか。全く想像がつかなくて、ジュリエッタは言葉を失った。


「ジュリエッタのいらなくなった愛でも私には価値がある。よければ買い取りましょう」

「そんなことができるの?」

「できると信じていただけるのなら」


 謎めいた微笑みを浮かべたフォルテューナは、次の瞬間、あっと声をあげて立ちあがった。


「どなたか、こちらに手を振っていらっしゃいますわ」

「えっ、あ、リリス!」

「ジュリエッタ様ー!」


 焦った顔をしたリリスが走りながら手を振っている。手を振り返しながら、ジュリエッタの心は揺れていた。それを見透かしたように、背後からフォルテューナの声が響く。


「時間切れですわね。ここでの話は誰にも明かされませんように。話せば二度とこの店にはたどり着けなくなります。その代わりジュリエッタ様のことも誰にも言いませんわ」

「……」

「それとこれは忠告です。視線は下げて、表情は読ませないように。不実な婚約者やご友人からの差し入れの食べ物は口になさらないほうがいいでしょう。それでは」


 ――――またのお越しをお待ちしております。


 ハッとして振り向いたときに、そこにはフォルテューナの姿はなかった。


「あ、あれ?」

「ジュリエッタ様、ああ、よかった探したのですよ!」

「ごめんなさい、心配かけたわ」

「誰かとご一緒でした? なんとなく、そばに人影が見えたような気が……」


 一瞬言おうかと思ったけれど、ジュリエッタは首を振った。


「いいえ、気のせいよ。それよりここがよくわかったわね!」

「それが見失ってしばらく探したのですが、行き先がわからなくて。伯爵家に連絡を入れようとしたところで、後ろのほうで羽音がしたのです。振り向いたら目の前に気味の悪いガーゴイルのまとわりついた噴水があって……そうしたら偶然、視界の端にジュリエッタ様の姿が見えたのですよ!」


 運がよかったと、安心したように笑うリリスに微笑みながらジュリエッタは首をかしげた。飛び立つ羽音に、鳥のような大きな影、ガーゴイル。そういえば伝説によればガーゴイルには翼があったような。まさか……気のせいよね。


「そういえばジュリエッタ様、ずいぶんとスッキリとした顔をしていらっしゃいますね。あんなことがあったのに笑っていらっしゃるなんて……」

「運よく素敵な教会にたどり着いたからかしら」

「まあ、あちらの教会に? ずいぶんと寂れた場所ですが……素敵な出会いでもありましたか?」

「ふふ、それはナイショよ。それよりも無駄に走り回ったから疲れたわ、帰りましょう」

「私もです。それにしてもジュリエッタ様があんなに足が早いなんて知りませんでしたわ!」


 こんなに走り回ったのはいつぶりだろう。リリスと顔を見合わせて、ふふっと笑う。昔のジュリエッタは結構なお転婆だったのに、リカルドが嫌がるから慎ましい女性らしく振る舞うようになっただけ。結局、買い物はできなかったけれど、むしろジュリエッタはお金では買えないものを取り戻したようで得した気分だった。


 家に帰ると、執事からリカルドが来ていると聞いて驚いた。あわてて居間に向かうと、彼が不機嫌丸出しという顔でソファーに座っている。どの面下げて……というドスの効いた呟きが背後から聞こえた気がするけれど、淑女の嗜みとしてジュリエッタは聞こえなかったふりをした。


「お待たせしました」

「忙しい私をさんざん待たせて。これだから君のような時間にだらしない人間は管理する側が大変なんだよ」


 困ったものだとばかりに、彼は深々とため息をついた。最近の彼はジュリエッタを見下すような言動が増えて、人前でも堂々と口にする。しつけが行き届いているはずの使用人達もわずかに眉を顰めていた。もはや婚約者として以前に、人として言っていいことと悪いことの区別すらつかなくなっているのではないかしら?


「で、どこを遊び歩いていたんだ?」


 不機嫌なのは来るつもりはなかったのにジュリエッタの名前を呼ぶ声が聞こえて、不安で様子を探りにきたから。別に、二人の会話を私に聞かれたとしてもいいじゃない。二人は運命の恋人なのでしょう? むしろ堂々と付き合っているのなら別の意味で賞賛に値するのに。彼のどっちつかずな態度に呆れて、なんだか一気に冷めた。


「申し訳ありません。ですが今日はお会いする約束はなかったと思いますけれど?」

「婚約者なのに会いにきてはいけないのか? セーラならいつでも笑って迎えてくれるのに」


 顔は笑っているけれど口調は刺々しい。婚約者ですって、どの口が言うのかしら。それに事前の調整もなく訪問すれば待たされても文句は言えないというのが常識だ。次々と漏れ出そうになる不満を飲み込んで、ジュリエッタは微笑んだ。今はまだ時期じゃない、とにかく上手くやり過ごさなければ。


「それで、どこに行っていたんだ?」

「はい、買い物に街まで行っていました」

「セーラは体が弱くて滅多に買い物にも出られないというのに……呑気なことだな。それで何を買った?」

「買い物はできませんでしたわ。散策するうちに道に迷ってしまったのです。仕方なく近所の方に庭先をお借りして休ませていただきましたのよ」


 なぜこんな根掘り葉掘り聞かれなければならないのか。するとリカルドはさらに不機嫌という顔でとんでもないことを言い放った。


「相手は男じゃないだろうな。浮気だぞ?」

「ち、違います!」

「君のように思慮の浅い女性は場の雰囲気に流されやすい。婚約者としては油断できないんだ」


 リカルドは不機嫌な表情で、どこまでも自分本位な言動を繰り返す。私が浮気ですって。自分のことは棚に上げて、どの口が言うのか。呆れ果てたジュリエッタは思わず言葉を失った。


「まあ相手が女性だろうと、セーラ以外で君に優しくできる寛容な人物がいるなんて信じられない。たぶん下心のある人間が偶然を装って接触しているだけじゃないか?」

「それは私に無条件で優しくしてくれる人なんていない、という意味ですか?」


 少なくとも、今のジュリエッタにとって意義ある助言をくれたフォルテューナのほうがセーラよりも好きだし信用できる。反射的に言い返すと、リカルドは探るように目を細めた。


「ずいぶんと強気だな、何があった?」

「いいえ、何も」


 いけない、思わず。すると脳裏にフォルテューナの言葉が浮かんだ。視線は下げて、表情を読ませないように。ジュリエッタは視線を下げた。そんなふうにすると彼女の表情はひどく落ち込んでいるようにも見える。さすがに周囲の使用人達の目が厳しくなった。これ以上の追求は無理だと悟ったリカルドは、心配するような表情をしてジュリエッタの耳元に顔を近づける。


「余計なことはするなよ? おとなしくして、全部私に任せておけばいい」

「……」

「そうすれば多少はかわいがってやる」

 

 リカルドは見下すように笑って振り向きもせずに部屋を出て行った。ジュリエッタは冷めた表情で彼の背中を見送る。今までの彼女ならば何かしてしまったのかとオロオロしただろう。でもリカルドの本音を知ってしまった今は、彼の行動を腹立たしく思うだけだ。


 ―――― あなたの未来を賭けてまで、関係を続ける価値が二人にはあるのでしょうか?


「ないわね」


 彼の台詞は安っぽい悪役みたいだ。演じているのか、演じるように誘導されているのか。どちらにしても格好悪い。やっぱりもういらないわ。意地悪くジュリエッタは笑った。


 そして二日後……。


「早速きたわ!」

「ようこそ、フォルテューナ・パンタシア魔道具店へ。心より歓迎します」


 今日のフォルテューナは白地の簡素なドレスを着て上にローブを羽織っている。蔦バラの十字を模した小さなアクセサリーが胸元を飾って聖職者のような雰囲気を漂わせていた。


「フォルテューナは顔立ちもきれいだけれど、雰囲気が飛び抜けて美しいわね」

「まあ! 褒めてもハーブティーとチョコレートしか出せませんよ?」

「ふふ、むしろ十分よ。いただくわ」


 テーブルを挟み向かい合って座る。よい香りのするお茶を一杯堪能したところで、ジュリエッタは切り出した。


「不要になった愛の買い取りをお願いしたいの」

「承知しました」

「代金はどうするのかしら?」

「当店の仕組みでは、不要となった愛そのものが対価となります。双方共に金銭等のやり取りは一切発生しません。この仕組みにご納得いただける方にのみ、買い取りをさせていただいております」

「それもあって相手を選ぶのね」

「そういうことです」


 フォルテューナは文机の引き出しから鍵を取り出すと、ジャラリと音を立てて机の上に置いた。


「不愉快と思いますが確認させてください。ジュリエッタはリカルド様の婚約者です。このままいけば名目上だけでも奥様にはなれます。彼は違うかもしれませんが、あなたは彼を愛している。それでも愛を捨てる覚悟はありますか?」

「あるわ。だってリッツォーレ伯爵位を継ぐのは私よ。なぜ継承者がお飾りの妻でいなくてはならないのか、はなはだ疑問だわ」

「おっしゃるとおり。でしたら不要となった愛を跡形もなく消し去ってしまいましょう」


 ジュリエッタはフォルテューナに導かれながら螺旋階段を降りていく。なんとなく楽しくなって、ジュリエッタはクスッと笑った。この緊張感……なんだか子供のころに戻ったみたいだ。


「今の私達、子供みたいね。怒られるってわかっているのに悪戯(いたずら)してしまうのよ」

「わかるわ! でもね、このことは誰も知らない。怒られることもないから安心して」


 フォルテューナはジュリエッタを真似て子供じみた口調で笑った。そして階下に到着すると、彼女は唇に指を当てる。


「いい、この先で見たことは二人だけの秘密よ?」


 友達同士の秘密。それもまた、甘美な背徳の香りがして子供達が愛してやまないものだ。フォルテューナの問うような視線にジュリエッタが小さくうなずいた。そして彼女が指し示す先には形状の違う三つの扉がある。


「ジュリエッタはどれがいい?」

「そうね、一番端にある丸っこい扉がいいわ。妖精や小人が飛び出してきそう!」

「ふふ、好奇心旺盛なあなたらしい選択ね!」


 ジュリエッタはコロンとした形の丸い扉を選んだ。フォルテューナは鍵を彼女の手のひらに置く。終わったら、鍵をかけること。これだけは守ってねと言い置いて、ジュリエッタを残したままフォルテューナは立ち去った。


 この先にあるのは天国か、地獄か。フォルテューナが騙すとは思えないけれど、もしかしたらジュリエッタの思い描くような天国ではないかもしれない。それでもリカルドとセーラに権利を奪われて生きる地獄よりは選択の余地があるだけマシだ。


「どうか天国に繋がっていますように!」


 祈るような気持ちで扉を開けて、ジュリエッタは一気に飛び込んだ。


 

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