あらすじ
もっとやさしくしてあげなきゃいけないわね…
「わたし、あらすじを書きたいと思ってるの」
「またいきなり何よ」
「あらすじってかっこよくない?なんかこう、事件の始まりみたいな、冒険の始まりみたいな感じが」
「まあ、たしかにかっこいいわね」
「そうでしょ?だからわたし、あらすじを考えることにしたの」
「あらすじって言ったって、そもそもあんたあらすじを考える物語なんてあるの?」
「ないわ」
「ないのね」
「だからわたし自身のあらすじを考えることにしたの。わたしがこの世に生を受けてから今までをあらすじで語ってあげるわ」
「壮大ね」
「じゃあいくわ」
”時は2006年!わたしは産まれた!何にも分からないわたしはどうなってしまうのか!?”
「どおっ?」
「どうと言われましても…」
「何かが始まりそうじゃない?」
「いやまあ始まったばかりだったけど…」
「おもしろそうでしょ!?」
「ぜんぜんおもしろそうじゃないわ」
「なんで!?」
「そりゃストーリーもなにもないからじゃない。よく思い出してみなさいよ。生まれて始まったで終わってるわよ」
「たしかにそうね…それなら次はどうしたらいいのかしら?」
「次ねぇ…親のことでも入れたらいいんじゃない?」
「そうね…それでいってみるわ…!」
"時は2006年!遊び人の父と自由奔放な母から産まれたわたし!子が産まれても遊び続ける父とずっと家にいない母!何もわからないわたしはただひとり家に残されてしまう…!いったいどうなってしまうのか…!"
「いったいどうなってしまうの…!?というかどうやって生き残ったの…?」
「さあ?」
「さあ?って…人生が一気にハードモードになってるわよ…」
「あのときは一生懸命に泣いた気がするわ」
「それはそうね」
「そしたら…!」
「そしたら…?」
「おばあちゃんが来たみたい」
「よかったわね」
「この子たちちょっと抜けてるところあるから大丈夫かしら?って思ってたら案の定だったらしいわ」
「ちょっとじゃないわね」
「おかげで授業参観日は毎回おばあちゃんが来てくれたわ」
「そういえばそうだったわね…」
「もうそろそろ時間ね」
「もう終わりなのね」
「あんまりずっとしゃべってると飽きてくるもの」
「それもそうね」
「じゃあ最後にもうひとつあらすじを言うわ」
「もうひとつ出すのね」
「じゃあいくわね…!」
”はたしてこの物語は続くのだろうか…!”
「次回が待ち遠しいわね」
ありがとうございましたーー!