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2065年
ある男が政府の機関から脱獄を計った
その人物は国の管理下に置かれている重要人物であり、「計画」の被験者である。
サイレンが鳴り響き、警察や政府の関係者が広大な敷地のある建物で「彼ら」を探している
だけど見つかるはずはない
「彼ら」は「世界一の窃盗犯」なのだから
2020年
日本は期待していた
AIの登場によって、今抱えている問題がすべてがうまくいくと
少子化、地球温暖化、年金問題、成長産業の消失、原発etc
AIの技術の発展によって、機械が問題の解決策やこれから向かうべき方向を示してくれると
期待していた。
期待にすがるように多くの人々が労働意欲を削がれ、すべてが中途半端な国になった。
もう少し辛抱すればAIによって日本はまた幸せな国になるのだと。
みんながやらないのだから自分も努力をする必要がないのだと
2045年
期待は現実にはならなかった
発展し続けるAIは恐れられ、各国から規制されるようになった。
日本もAIを禁止する条約を結ばされた。
また、一部の国ではAIを使い続けていたが、結局AIは人間の知能を越えることができなかった。
解決されなかった問題はそのまま山積みになり、弱者を保護する日本の法律のもとではバブル期のように、世界のトップに舞い戻ることもできず、日本のGDPはみるみる減少していった。
流石にまずいと思い始めた人々も今更何もできなかった。何かをする気もなかった。
このままでは落ち続けてしまう日本をなんとかしようと政府が立ち上がった。
政府だけでも立ち上がれたのが幸いだ。
数々の計画を考えたが、「ある優秀な実業家」の提案した「計画」を行うこととした。
日本政府は弱者の保護をやめた
生活保護や年金を食い潰すだけのような存在は不要で、エリートだけを成長させることにしたのだ。
今までの日本は遅れてくるものを支え共に進む社会だった。
政府は、それが日本が衰退した原因だと考えたのだった。
日本の全体を底上げするのではなく、一握りのトップの存在をさらに成長させることにし、多くの人を切り捨てる政策
それが、「世界一分の一計画」
早速「計画」という名の「実験」が開始された。
幼少期に才能が認められた子供たちは政府の機関に強制的に預けられ、その才能をあらゆる方法で伸ばしていった。
親から引き離されて過酷なトレーニングもしただろう、親からの反発もあっただろう。
それでも強い日本を取り戻すために政府はこの計画を進めた。
超一流へと成長したものは、政府の管理下に置かれ、日本政府がコントロールすることで日本という国際的地位を守ろうとした。
2060年
あらゆる分野での日本発世界一が誕生し出した。
オリンピックでは金メダルを独占し、音楽分野でも、料理、建築、さまざまな分野で突出した才能が芽生え始めた。
人々は沸き、かつてのような活気を取り戻しつつ、ある ように見えた
これによって日本は再び復権すると多くの人が 思っていた。
エリートを作る上で、選ばれなかったものは弾かれ、 何もできない人になった。
いいではないか、これだけ日本から世界一が排出され、日本という国は力を取り戻したのだから。
しかし、実際に待っていたのは政府の厳しい管理下に置かれた日本だった。
世界一の医者は政府が必要とする人間しか助けない
世界一の画家は政府のためにしか絵を描かない
世界一の探検家は政府のために財宝を探し
世界一の宇宙飛行士は、持ち帰ったデータをすべて政府に渡した、
エリートのための国となった日本にとってもはや、エリート以外はゴミだった。
エリート以外はこの政策に疑問を抱くものも多くいた。
が、行動できるようないわゆるエリートはいなかった。
また、これらのエリートは政府から多額のお金を受け取り、何不自由のない暮らしをしていた。
一般庶民は全託な暮らしなどできず、税金で搾り取られるだけの毎日を送った。
そんな生活がしばらく続いていた。
冒頭に戻って2065年
この男は「世界一の窃盗犯」として、エリート教育を施されていた。
そして、その過程である国の秘密を知ってしまった。
その秘密によって世界のあり方に疑問を抱いた「彼ら」は今までの教育された知識を使いいともたやすく、政府の管理下から抜け出すことに成功した。