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カワおじ

「…ひめ…織姫!」


ハッと目を覚ました。


(…え)

「ここは、どこ?」


目を覚ました先には、私の身長よりも大きそうな鏡が置かれていた。


こんな大きな鏡、家にはなかった。


まさか父親がいきなりこんな大きな鏡、置くとは思えない。


(…それなら、どうして)


「何を言われておられるのでしょうか。ここは全ての十二星座が集まる場所。ミルキーウェイではないですか」


「~ッ!」


突然視界にニョロッと蛇のように現れたおじさん。


声にならない叫びをあげた。


(声にならないって、こういうことですか)


「実の父の顔を見て、何をそんなに驚いているのやら」


「パ、パパ?」


目の前にいるおじさ、お父さんに訪ねると、ムッとこめかみにシワを寄せた。


「聖なる場所『ミルキーウェイ』で結婚式を挙げるために、ここに来たのではないですか」


「け、けけけけ結婚?!」


(私、まだ十六歳ですよ?!)


ボンッと頭から湯気が飛び出た。


情報が多すぎて、頭が整理できない。


「さ、行きますぞ。獅子嬢が部屋を破壊しにくる前に」


部屋を、破壊?


お父さんに背中を押されて、真っ白な大きな部屋から出た。


部屋から出ると、長い廊下がどこまでも続いていた。


…先が見えない。


「ささ、進みますぞ」


後ろから押されながら、フヨフヨと前に進む。


(ちょっと待ってください。さっき確か、結婚式挙げるためにここに来たと言っていましたよね)


まさかとは思うが、状況からしてこの予想が当たっている確率は高い。


「あのー」


「何でしょうか?」


「これは一体、誰と誰の結婚式で…」


「もちろん、織姫と彦星様の結婚式ではないですか」


やっぱだ!この豪華な衣装、もしかしてとは思ったが、そのもしかしてが残念なことに当たっていた!


「ごめんなさい!私、織姫じゃなくて」


「思い出します。あの日、わしとカナはこの聖なる場所『ミルキーウェイ』で初めてのキッスを…きゃっ」


「あ、あのー」


(キッス?)


え、お父さんこんなキャラだったの?え?


頬を赤く染めながらキャッキャッと騒ぐお父さん。


全く私の話を聞いていない。


けれど。


(ちょっと可愛いかも)


これが世に言う『カワおじ』。


ピコンッと閃いた。


今、お父さんは一人でその場をぐるぐる回っている。


今ならこの場所から逃げれるかもしれない。


ごめんなさい、たぶん実のお父さんであろうおじいさん。


(私、知らない人と結婚したくありません!)


それに、この場所も全く身に覚えがない。


よし、逃げよう。


それにしても、どうやって進むのかな。コレ。


身体がフヨフヨと前後左右に動くだけ。


この感覚はまるで、泳いでいるみたい。


現実では泳げないけれど。


またもやピコンと閃いた。


もしかしてだが、それで進めちゃう感じなのでは?


ウエディングドレスという乙女の夢の塊である姿であの態勢をするのはきっと、人類史上初に違いない。


けれど、やるしかない!


両腕を耳の上で真っ直ぐ伸ばし、足を爪先までしっかりと伸ばす。


(行きます!)


「カナの初めて作った朝御飯は形容しがたがったが、とても気持ちがこもっていたぞよ!」


さようなら、一度っきりのお父さん。


平泳ぎをしながら見えない出口へと向かった。


やっぱり、ウエディングドレスでは泳ぎにくいですね。


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