やたらとチェックメイトという千枝須くんはチェスの試合では負けばかり
僕の学校には千枝須くんというとてもユニークな人がいる。
「チェックメイト!」
体育の授業でサッカーをやっている時に、彼がボールをゴールへ押し込んだ時だ。
「チェックメイト!」
彼の所属する囲碁将棋チェス部で将棋の対戦をしている時に王手を掛ける時にも。
「チェックメイト!」
休み時間に皆でウノをやっている時に最後の一枚になった彼も発した。
「はい千枝須、ウノって言ってないから負けな」
「しまった」
高校一年生の初め頃はこんな感じで、皆はちょっと変わっている人位の認識だった。
所が、彼に対する態度が変わって行った。
「おい、チェス野郎! チェックメートチェックメートうっせえんだよ!」
体育のサッカーでサッカー部の札下くんを中心とするグループに怒鳴られていた。
「あの。これは将棋なので、王手と言って貰っても良いですか」
同じ部活の庄木くんにも窘められるようになっていた。
「ドロフォーからのウノ!」
最早、千枝須くんはウノには混ぜて貰えなくなってしまっていた。
きっかけはクラスメートがした一つのSNSの投稿だった。そこには千枝須くんがチェスの試合で少年に負けた記事が張り付けられていた。
それでも、最初の内は変わりがなかったのだが、千枝須くんは数か月後にまた同じ少年に負けた試合の記事がアップされた。それも悪い事に目立つ所に『13 YEARS OLD』と書かれていたいた事で英語の読めないクラスメート達にも千枝須くんの対戦相手が13歳であると分かってしまったのだった。
「ぷっ、チェックメイトマン、中坊に負けるなんて才能無いんじゃね」
「うける。試合で言えないから普段から言っているんじゃないの」
この頃から千枝須くんに対する風当たりは強くなっていった。
そして、高校二年生になった現在は。
「いよいよ、明日だな」
「千枝須、頑張れよ! 今度こそあの少年を倒すんだぞ!」
クラスの雰囲気は一変していたのだった。
それは、僕が怒りに燃えたからだ。最初は見逃していたのだが、千枝須くんへの誹謗中傷が目に余るものになって来た時に僕は一喝した。
と言っても、英語の得意な僕がアップされている記事を訳しただけだが。
『他を寄せ付けない圧倒的な強さで挑戦者決定戦を勝ち上がってきた千枝須、13歳の天才世界王者カーセンの前に惜敗』
そう、記事にされているのは王者戦のみであったのだ。
「チェックメイト」
千枝須くんの声が聞こえた気がした。きっと明日学校は歓喜に包まれる事だろう。




