晦日のカフェ・オ・レ
師走の晦日、大晦日を殊更特別に感じてしまうのは、八百万の神の国に住んでいる民族だから?
平日ならば月末など普通に過ぎていく。だが、師走の終わりは特別となる。やるべきことがエベレスト級にそびえ立つ。
しかしソレをしなくても、新年は滞りなく来ると頭の隅をチラリと過る。だけどそれは怠惰な、一年の始まりと感じ自身に叱咤激励するのは何故だろう。
晦、午前5時。
明けやらぬ中、目が覚めた。昨日まで仕事だったので、今日位ゆっくりしようとしていたのに。新聞配達の音が聴こえる。毛布に包まる。隣から相方のイビキ。目を閉じて二度寝をしようとするけど。
起きることにする。朝寝の癖はすぐに身につく。年末年始の休暇が終わり、日常が始まった時に困ってしまう。
潔く起きて着替えてリビングで過ごす方がいい。
シャッ、リビングのカーテンを開ける。薄墨色の空がある。ファンヒーターのスイッチを入れる。
フリースの上着を着、足元には少し先と思いつつ、新調したダークブラウンのボアのスリッパ。バレッタで髪をゆるく纏めている。湯沸かしポットに水を入れテレビをつける。
レンジにカップ半分の牛乳を入れてチン。 何時もと同じリズム。
違うのはソファに座りゆっくり飲む。という事。
甘い物が欲しくなった。
何時もなら出勤前の家事をこなしなしつつ、座る事無く小刻みに飲んでいる、インスタントコーヒーを使ってカフェ・オ・レ。
時間が有るとは恐ろしいと思いつつ、欲望に従う私。朝から何だけど、冷蔵庫から甘い物を取り出した。お裾分けで頂いた、カップに入った安納芋の羊羹。水羊羹みたいな外見。
ぺりり、蓋をめくると芋の名に恥じない濃い山吹色。スプーンでケーキの様に縦横斜め、4回切れ目を入れると欠片をすくう。
芋の味を引き立たされる為なのか、お砂糖は少なめ、あっさり甘い。合間にマグカップのカフェ・オ・レ。おかしな取り合わせかもしれないけど、美味しい。
「数年に一度の寒波が来ます」
天気予報の彼が話している。
窓に目を向ける。ほのぼのと明けの空には、まだ気配はない。穏やかで静かな色。風も吹いていない。ベランダの植木鉢を取り込まないといけない、雪が降る前は強風が吹くという。
やる事を取り敢えず考え、タイムラグを組む。午後からは買い物に行く予定。玄関に飾るしめ飾り、仕事が忙しかったのでまだ買ってない。今日中に買わないといけない。
大晦日に飾るのは良くないと聞く。今日がタイムリミット。
夕方にはお節料理の配達も来る。とっちらかった玄関も片付けないと。昨日の神聖なるあみだくじで、トイレとお風呂、ベランダは相方の担当になり、私はリビング、キッチン、寝室、玄関となった大掃除。2日で終わるかな。
シーツにカバーリングも洗濯したいところ。どうしようか、夕方迄に乾くと良いけど。
飲み終えたら先に洗濯機を回そう、相方が起きてくる前にリビングの掃除機をかけて……、予定を組む。
薄ら寒いのでカップを片手に、リビングのこたつに移動をした。カチ、スイッチを入れる。冷たい中でじっといていると。
もんわり温かいこたつに育つ。まだ早いし、ほんの数分。
ごろんと横になって、ニュースを見ていたら。
覚めたら午前8時を回っていた。見上げる先には明るい光の色。窓ふきしなくちゃと、ぼんやり頭に浮かぶ。
しっかり二度寝をしてしまった大晦日の前、晦日の朝の事。こたつのテープの上には、少しばかり残っている冷めたカフェ・オ・レ。




