戦闘 【月夜譚No.69】
このカードを切るには、まだ早過ぎる。少年は肩で息をしながら、脳内で考えを巡らせていた。
相手は少年の三倍はあろうかという大柄の男だ。細身の少年が勝つ術は、ほぼ無いに等しい。
だが、あの技を使えば活路を見いだせるかもしれない。少年は決して勝てないだろうと高を括っている観客達にも、目に物を見せてやれるかもしれない。
しかし、まだ大会も序盤だ。ここであの奥の手を出したら、今後勝ち上がれたとしても、技を見抜いた相手にはもう通用しない。――さて、どうするか。
男の蹴りを跳ねて避け、続け様に突き出された拳の下を潜り抜ける。とにかく今は、その身体の小ささと俊敏さを利用して相手の攻撃を避け続けるしかない。その間にも、どうにか他の方法で勝つことを考える。
薙がれた腕を屈んで避けた時、男の口角が不気味に上がるのが見えた。