エピローグ 後編
畑作りをレムとしていると、赤ん坊を抱いたアリス、キリリが姿を現す。
オレは急ぎ足で2人に歩み寄った。
「どうしたんだ2人とも、問題でも起きたのか?」
「……違う。お昼が出来たからあなたとレムを呼びに来たの」
「わざわざ呼びに来てくれたのか? 誰かに言付けを頼めばよかったのに」
「姫様が、『坊や達との散歩のついでに呼びに行こう』と提案してくださったんですよ」
キリリの言葉通り、2人の腕の中には坊や達――オレと2人の間に出来た赤ん坊が抱かれている。
アリスとの間には女の子が、キリリとの間には男の子が産まれた。
明るい話とはオレとアリス、キリリが結婚して、子供も産まれたことだ。
一通り異形兵士、改造された子供達の治療が終わった後、指輪を贈りプロポーズした。
稀少金属、宝石、素材を使った指輪だ。
事前に練習していたお陰で、オレ自身が納得できる指輪を作ることが出来た。
オレのプロポーズは2人に笑顔で了承を貰い、引き続きこの村で開拓を続けたのだ。
アリス、キリリと結婚してからは『賢者シュート様』から『あなた』へ。キリリは人前以外では『シュート様』から『シュートさん』と呼び方が変わった。
子供が産まれたのは約1年前になる。
レムに会うため3日に1度は村に通っていたミーリスが、『妹アリス達の子供の面倒を見るため、あたいも村に住むわ。村に住めば毎日レムちゃんにも会えるし一石二鳥だ。領主の仕事? あたいは元々お飾りだから他の奴らに任せればいいでしょ』と暴言を連発。
どうもミーリスはオレ達の間に子供が産まれたことで、頭がハッピー状態、舞い上がってしまったようだ。
初めてダンジョン都市『ノーゼル』に向かう際、『ここまで舞い上がるとは、ミーリスはどんな過去を過ごしてきたのか?』という質問にキリリが答えてくれた。
彼女曰く『ミーリス様は魔物に多大な興味を抱く研究者なんです。ただ帝国次女としてそれなりのお立場に付かなければならず、言葉は悪いですが飾りとしてノーゼルを治めていることになっているのです。それで抑圧されていたのかもしれません』と説明してくれた。
お飾りとはいえ、ミーリス自身真っ当に領主の仕事をしていたのも事実だ。
にもかかわらず姪っ子達の可愛さに目が眩み、領主の仕事を投げ出そうとしたのだ。
この話を聞いたアリスが、釘を刺す。
「……仕事を投げ出す人を側に置いたら子供達の教育に悪い。姉様が仕事を投げ出して村に来るなら、二度と赤ん坊達に会わせない」
『知力ゼロ』、『白銀の怪力姫』などと言われてきたアリスが正論で姉ミーリスを正す。
正論の上、アリスの従者であるキリリも彼女の意見に賛同した。
この発言にミーリスは、
「けっぷぅ……ッ」と死んだ目で異音を漏らし、納得せざるをえなかった。
まさかあの知的で、研究者然としたミーリスをアリスがやりこめるとは……。
オレに対してアピール方法が分からず、場末の娼婦のような誘惑をして姉ミーリスにお説教を受けた彼女がだ。
これも『母は強し』というのだろうか?
お陰でミーリスの舞い上がりを叩き潰し、以前通り『3日に1度通う』に落ち着かせた。
ちなみにアイスバーグ帝国皇帝陛下も、ミーリスと似た台詞を叫んだが、アリスの正論によって叩き潰された。
オレ達の中でも特に問題を起こしたり、『力こそ全て』と言いたげになんでも戦闘で解決しようとしていたアリスがこれほど成長するなんて……!
そんな彼女を前に、長年仕えていたキリリは、顔を押さえて泣いたほどだ。
「姫様……姫様がその常識力をもっと前から持って頂いていたら……私の苦労は十分の一、百分の一で済みましたのに……ッ」
その涙はアリスの成長ではなく、主に自身の苦労、嘆き部分が大半を占めていたようだが……。
「……? どうかしたのあなた。ぼんやりして?」
「いや、何でもないよ。ただここまで来るのに色々あったなと思ってさ」
素直に考えたことを口に出すほど、若くない。
オレは適当な笑みを浮かべつつ正妻であるアリスへ返答した。
この話題にキリリが、赤ん坊をあやしつつ同意する。
「確かに色々ありましたよね。私達が最初に出会った『中央大森林』から、剣聖との決闘、レム様が誕生したり、ダンジョン都市『ノーゼル』でのLV上げ、『ドラゴンの牙』や水精霊の暴走、最後は戦争にも巻き込まれましたからね」
「……振り返ると、本当にオレ達色々大変な目に遭ってきたよな」
「得難い経験」
レムが今までの苦労、苦難をふんわり良い事のように纏める。
確かに色々得難い経験も多いが、正直に言って面倒事の方が多い気がするのはオレの気のせいだろうか?
オレは内心で首を捻っていると、アリスが心底幸せそうに笑う。
「……大変なことも多かったけど、今はあなたやレム、キリリ、子供達が側にいて幸せ。あなた――賢者シュート様、自分と出会ってくれてありがとう」
「――こちらこそ、オレと出会ってくれてありがとうアリス」
久しぶりの『あなた』から、『賢者シュート様』と呼ばれて一瞬フリーズしてしまう。
意識を取り戻し、オレも心底幸せを感じる笑顔で返答した。
オレやアリスだけではない。
一緒に居るレム、キリリも釣られて幸せそうな笑みを浮かべる。
確かに色々面倒なこと、大変なことは多かった。
しかし、アリス、レム、キリリ、赤ん坊達、他大勢の人々と出会えて、現在幸せを感じている気持ちは本物だ。
オレはアリス達に感謝の気持ちを抱きつつ、村にある自宅へと戻る。
(オレは本当に幸せ者だな……)
何度目か分からない幸せを噛みしめながら――。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
最後まで読んで頂きありがとうございました!!!
無事、スキルマスターを最後まで書けて、明鏡自身めちゃくちゃ嬉しいです!
正直な話、毎日連載はやはり大変でその内『数日に1回ペースでアップします』という感じになるかもと思っていました(プロットでつまるとそうなりがちなので……)。
しかし休まず最後まで書けてよかったです。これも皆様が読んで下さって応援して下さったお陰です、本当にありがとうございます!
とりあえず感想返答をこの後書く予定ですが(感想ありがとうございます!)、少し時間がかかるかもなので長い目でのんびりまって頂ければと思います。
最後に本当に読んでくださってありがとうございました!
スキルマスター以外にも明鏡シスイは作品を書いているので、ご興味があればチェックして頂ければ幸いです。
また『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!
本日も2話連続でアップする予定です。
詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。
これからも頑張って書いていきたいと思いますので、是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!